訃報

名誉教授 やぶ 重夫しげお 氏(享年82歳)

名誉教授  藪  重夫(やぶ しげお) 氏(享年82歳)

 名誉教授 藪重夫氏は平成20年2月17日,82歳で逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 先生は,大正14年6月30日京都市に生まれ,昭和20年北海道帝国大学医学部に進学,学徒出陣により樺太・カムシスカ(上敷香)で終戦を迎えました。しかし,シベリヤに抑留され,昭和21年12月復員されました。昭和22年6月北海道帝国大学法文学部法律学科に転入学し,昭和25年3月北海道大学法経学部法律学科を卒業,同年11月司法試験第2次試験に合格後,昭和30年北海道大学法学部助手に任ぜられ,昭和32年10月同学部助教授に任命されました。昭和37年6月同学部教授に昇任し,昭和44年5月から46年12月まで北海道大学評議員,昭和44年12月から昭和46年12月まで同大学法学部長および同大学法学研究科長を務められました。また,昭和56年1月から昭和59年12月まで北海道大学教養部長および同大学評議員を務め,平成元年3月定年により退官されました。引続き,平成元年4月より学校法人北海学園理事に就任し,その後平成3年2月同大学教授となり研究教育活動を継続されました。
 先生は,北海道大学法学部においては民法講座の担当として学部,大学院の教育に当たり,数多くの人材を育成されました。また,教養専任者として北海道大学教養部における法学教育にも尽力されました。研究者の養成をはじめ,各界の優れた人材を送り出され,その功績により,平成元年北海道大学名誉教授の称号を授与されました。
 先生の研究は,専門である民法財産法を中心として,行政法との接点に及ぶものも多くあります。財産法分野における,「封建的土地所有の公権力的性格――Gewereに関する一試論」は,中世における物支配との対比をすることによって所有権の特殊近代的性格を明らかにしようとしたものです。また「親族扶養の法的性格に関する一試論」は戦後における生活貧困という社会的背景と親族扶養の重要問題を民法学から検討したものです。「現代刑法理論(目的的行為論)と民法における違法・責任理論」は,刑法における目的的行為論を民法にも導入することを試みたニッパーダイの所説を検討したものです。このほかに「民法一七七条の第三者―時効・相続との関係」「相続放棄と登記」「入会権」や「明認方法」などの論稿がなどがあり,「日照の私法的保護に関する諸問題」および「工事請負契約約款における仲裁条項の拘束力」などは,社会的問題に対してたえず実際的な解決が企図されています。
 先生は,学部専門教育においては民法の講義と演習を担当されましたが,その教育方針は多様で複雑な民法解釈上の問題を分かりやすく簡明に解き明かすことにありました。また,昭和56年から平成元年までは教養部専任として,多くの学生が社会の仕組を理解し,教養を高めることに助力されました。
 先生は,昭和44年5月から46年12月まで北海道大学評議員,同大学協議員として大学管理運営に関わりその重責を果たされました。また,昭和44年12月から同46年12月までは同大学法学部長と同大学大学院研究科長を務められました。当時のいわゆる大学紛争の只中という大学運営の困難な時期にありながら学部運営の責任者としてその解決と収束に努められまた。教養教育にも専念し,ことに昭和56年1月から昭和59年12月まで2期にわたって同大学教養部長を務め,教養部の改革に尽力されました。
 先生は,学識経験者として地域社会の多方面にわたる分野で活躍されました。地方労働委員会公益委員,北海道収用委員会委員,札幌市住居環境審議会委員,北海道消費者苦情処理委員会委員,北海道建設工事紛争審査会委員,札幌地裁民事調停委員,札幌市長期総合計画審議会委員,北海道総合開発委員会委員,札幌市日照関係調整委員,札幌市行政改革懇談会委員,札幌市情報公開懇談会会長,札幌市中高層建築物等紛争調整委員などの各委員や会長を歴任し,その専門的知識と深い教養を生かして,北海道ならびに札幌市など地域に生じる多様な紛争の具体的な解決を図り,これをよく統括されました。民法と行政などの結合した領域において,社会的課題の実際的な解決方法を開拓・実践して,地域の社会,経済,教育,文化および政治の発展に多大の貢献をなし,平成15年4月29日には勲二等瑞宝章が授与されました。
 ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

(法学研究科・法学部)


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