訃報

教授 奥原おくはら 敏夫としお 氏(享年58歳)

教授 奥原 敏夫(おくはら としお) 氏(享年58歳)

 地球環境科学研究院物質機能科学部門機能材料化学分野 教授奥原敏夫氏は平成20年2月12日午後5時18分,胃癌のため58歳で逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和24年9月27日,北海道芦別市に生まれ,同48年3月北海道大学理学部化学科を卒業,同50年3月同大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了,同53年3月同大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了,同年4月日本学術振興会奨励研究員に採用されました。同年12月東京大学工学部合成化学科助手となり,同59年4月同学部講師,同61年9月同学部助教授,平成7年4月北海道大学大学院地球環境科学研究科教授,同17年4月同大学大学院地球環境科学研究院教授に配置換となり,触媒化学の教育・研究に従事されました。
 同氏の研究活動は,触媒化学の分野において基礎・応用両面から広く研究され,特に固体触媒の作用機構の解明及び新規な固体触媒の開発に関して,多くの先進的な成果を上げられました。北海道大学大学院理学研究科化学専攻博士課程においては,規定された硫化モリブデン表面上での不飽和炭化水素の触媒反応における反応機構を研究し,同触媒上の活性点の種類,反応中間体の同定と吸着様式を明らかにし,論文「MoS2の触媒作用に関する研究」により,昭和53年に理学博士(北海道大学)の学位を授与されました。東京大学工学部においては,当時は触媒材料としてほとんど研究されていなかったヘテロポリ酸の触媒作用の基礎と応用に関する研究に取り組み,その後,触媒化学分野で世界的に広く認知されるセシウム・ツーアンドハーフと呼ばれる固体触媒の先駆的な研究を行い,多くの成果を上げられました。また,担持ルテニウム触媒による一酸化炭素の水素化反応の研究において,触媒構造と触媒活性との関連を明確に示すとともに,触媒調製法の改良,助触媒添加,反応中間体の同定など,担持金属触媒研究の基礎と応用の両面を大きく前進させられました。平成7年5月北海道大学に着任してからは,環境保全と環境改善のための触媒化学の研究に精力的に取り組み,その成果として,硝酸汚染地下水を浄化する触媒,水中での有機合成を実現する固体酸触媒,分子をそのサイズにより識別する形状選択触媒,クリーンガソリン製造のための二元機能触媒,炭化水素資源有効利用のための選択酸化触媒を開発するなど,世界的に触媒化学研究の進展に貢献されました。特に,水中でも機能する固体酸触媒を見出した意義は大きく,これにより水中での有機合成反応の分野を大きく前進させるとともに,水中固体酸と呼ばれる新しい研究分野を切り開かれました。原著論文は247報を数え,総説57編,著書17冊(共著)を発表しており,中には引用回数が650回を超える論文もあり,触媒化学の分野に多大な影響を与えられました。これらの研究成果により,平成19年3月経済産業大臣賞(第6回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞)を受賞されました。また,本年3月には,触媒学会学会賞を受賞する予定であります。
 教育活動は,平成7年以降の本学在職中,全学教育においては,化学及び基礎化学の講義,総合科目(地球環境改善のための触媒化学,地球環境と石油エネルギー)並びに自然科学基礎実験及び自然科学実験を通じて多数の学生の指導に携わり,本学の一般教養課程の教育に大きく貢献されました。また,大学院地球環境科学研究科及び大学院環境科学院においては,環境触媒学特論,物質環境科学基礎論,分子環境学特論などの講義を担当し,修士課程(博士前期課程)及び博士後期課程の学生の教育及び研究の指導を通じて,多くの技術者や研究者を育成されるとともに,多くの博士論文及び修士論文審査の主査を務められました。また,学外では,東北大学反応化学研究所を始め,東京工業大学,岡山理科大学,広島大学工学部,横浜国立大学,長岡技術科学大学の非常勤講師として,広く触媒化学に関する教育に尽力されました。
 また,本学においては,一般教養課程の企画責任者(化学)を務められ,触媒化学研究センター協議員会委員,触媒化学研究センター運営委員会委員として,長年にわたり同センターの運営に大きく関わられました。
 学会活動としては,触媒学会国際交流委員会委員,理事及び監事を務められ,触媒学会北海道地区において,「触媒塾」と呼ばれる触媒化学初学者向けのセミナーの立ち上げに尽力され,同地区の学生教育に大いに貢献されました。また,社団法人石油学会理事を歴任されました。国際的学術雑誌Catalysis Survey from Asiaの編集委員を長年にわたり務められ,アジア地区における触媒化学の発展に貢献されました。
 以上のように同氏は,北海道大学において触媒化学,特に環境触媒化学の教育と研究に尽力され,多くの優れた人材を育成されるとともに,学術研究の発展に多大な貢献をされ,そのご功績は誠に顕著でありました。
 今後ますますのご活躍が期待される中でのご逝去であり,誠に残念であります。ここに謹んで同氏の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

(環境科学院・地球環境科学研究院)


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