平成20年度日本留学フェア(ベトナム)及び現地教育機関訪問・意見交換会に参加して
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学務部入試課 佐 藤 多 恵 |
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このたび, 11月13日(木)から11月18日(火)の期間,平成20年度日本留学フェア(ベトナム)及び現地教育機関訪問・意見交換会に参加させていただきました。ベトナムでの留学フェアは今年で8回目であり,今までは留学生交流室の方が中心となって参加しておりましたが,本年7月に,文部科学省ほか関係省庁により「留学生30万人計画」が策定され,本学として留学生向けの入試広報活動の一環として,今回入試課から初めて参加させていただきました。日本留学フェアはハノイとホーチミンで行われ,現地教育機関訪問・意見交換会はハノイにある「ベトナム日本人材協力センター(VJCC)」及び「ハノイ貿易大学」で行われました。
○現地教育機関訪問・意見交換会
現地に到着してから2日目に,ベトナム日本人材協力センターにて,VJCCの主な活動の紹介と,ベトナムの教育事情について講演が行われました。
VJCCは日越友好のシンボルとなることを目指して設立され,ビジネスコース,日本語コース,相互理解促進コースを柱として活動を実施しているJICAプロジェクトの一つです。日本留学支援コーナーも設置されており,日本留学に関しての情報提供や日本の大学への留学促進支援等も行っております。今回施設内を見学したところ,図書館があり,たくさんの日本の蔵書・DVDが整然と並べられており,その傍らで辞書を片手に日本語を勉強している学生がたくさん見られました。
ベトナムの教育事情についての講演に入る前に,ベトナムの国事情についての説明がなされました。ベトナムは,例えて言うならば「昭和の日本」といった雰囲気で,経済成長率は8.48%(2007年度速報)であり,今まさに成長している国の一つです。バイクが主な乗り物であり,道路を車とバイクと自転車と人が入り混じっている様は,現在の日本では想像しがたい風景でした。人口の平均年齢は約26歳で,若くて活気がありますが,生活は豊かとは言えず,都市部の平均賃金は日本円で約5万〜10万円,農村部では3万〜5万円で,賃金だけではなく物価も安く,日本で米を1kg買うお金で,ベトナムでは20kg買うことができるとのことです。
教育事情の説明の中で驚いたのは,ベトナムの公用語はベトナム語なのですが,中学校から日本語教育を行っており,中には夜間コースに通ってまで勉強している学生もいることです。教育熱心な保護者が多く,自分達の財産(牛や豚,不動産等)を手放し,親戚一同お金を出し合ってまで子供を留学させるケースも多々ある一方で,大学への進学率は低く,国全体で1割に満たないと言われております。大学へ進学したくてもすることができず,なおかつ仕事に就くこともできない若者が多いとのことです。
講演及び意見交換会終了後,ハノイ貿易大学を視察いたしましたが,北大の何分の一かと思われる小さな敷地内に,若干古びた校舎とその中に小さな教室がいくつもあり,お世辞にも快適な環境であるとは思えませんでしたが,講義を傍聴している学生は皆熱心で,私達日本人の姿を見ると片言の日本語で「こんにちは,さようなら」と挨拶する姿がとても印象的でした。
○日本留学フェア(ハノイとホーチミンにて)
日本留学フェア(日本への留学を希望しているベトナムの学生向けの進学相談会のようなもの)は最初にハノイで行われ,次の日にホーチミンで行われました。両会場とも日本から参加した大学等は約40校にのぼり,全体の参加者数はハノイで806名,ホーチミンで1,027名であり,本学のブースへの参加者はハノイで76名,ホーチミンで117名と,大変盛況のうちに終えることができました。
質問内容としては,授業料,奨学金,学生寮及び日本での生活費等の経済的な質問が最も多く,日本語や日本文化について学びたいという質問もありました。また,高校生だけでなく現役大学生も多く訪れ,大学院から日本へ留学を考えている学生からも質問が寄せられました。日本国内の地理関係に疎い学生もおり,「北海道と札幌はどのくらい離れていますか。船で行くことはできますか。」といった質問には,苦笑してただ地図を指差すことしかできませんでした。
多くの学生の対応をしていて感じたのは,まだ高校生なのにもかかわらず,日本語を聞き取り,話すことができる学生が多いこと,そして大学生になるとそれに加えて英語も話すことができ,語学力に関しては日本の学生よりも高いのではないかということです。また,「将来,日本で勉強するために今日本語の勉強を頑張っている」「日本では○○学部に進学してこういったことを学びたい」といった,進学に対する目的意識がしっかりしており,真面目で勤勉なベトナムの学生の一面を知ることができました。
○日本国外から北大をみて
私自身,海外へ渡航したことがほとんどなかったので,今回,客観的に日本,札幌,そして北大を見つめ直すことができたのは,とてもよい機会となりました。
語学力に関して,私は中学から大学を卒業するまで,一応10年間は英語を勉強してきたはずなのに,今回ほとんど対応することができず,今まで自分は何をやってきたのだろうと思いました。また,まだ一度もベトナムを出たことがない学生達が流暢に日本語や英語を話しているのを見て,「留学しないと英語は話すことができない。やはり現地に行かないと…」と言い訳をして何もしていなかったことにも気づかされました。どこにいても自分次第で様々な勉強ができることを逆に学ばせてもらいました。
そして,最近,「日本の景気が悪くなってきた」,といったことが報道されていますが,それでも日本はまだまだ豊かな国であり,秩序が整っている国であることを感じました。ベトナムでは,家に台所がない住居が多いそうで,そういった人達は,路上で火を起こし,鳥や魚を調理し,何と呼んでいいかわからない料理を口に運んでいました。市場では,中学生くらいの子供達が懸命に品物を売っており,「普通」に生活することの難しさを考えさせられました。
ずっと日本にいて,そして北大の中で働いていると見失いがちになってしまうのですが,今自分がいる状況は,実はすごく幸せで恵まれていることなのではないか,このような存在でいられることに感謝しなければいけないのではないかということを,日本の外から客観的に見ることで,心から感じることができたように思います。
今回,同行させていただいた工学研究科の小林教授,留学生交流室の高口さんには大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。
最後になりますが,このような貴重な機会を与えていただいた佐伯総長,脇田副学長,嶋貫事務局長をはじめ,長澤学務部長,その他関係者の方々に心より感謝申し上げます。そして,このような機会が,私だけではなく,たくさんの方々に与えられることを切に願い,終わりとさせていただきます。 |
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留学フェアにて通訳の方々と |
視察したハノイ貿易大学 |
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