部局ニュース

10月よりグローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」始動

 グローバルCOE(Global Center of Excellence; GCOE)とは,我が国の大学院の教育・研究機能の強化を目的とした文部科学省の補助金事業です。平成21年6月,岩下明裕・スラブ研究センター長をリーダーに据えた北大の人文・社会系グループが組織するGCOEプログラム「境界研究の拠点形成:スラブ・ユーラシアの世界」が採択され,3ヶ月間の準備期間を経て10月に正式スタートとなりました。
  本プログラムは,今日,ユーラシア各地で生じている境界をめぐる対立・紛争を国境問題に限らず,文化摩擦といった表象からも考察し,境界問題を読み解くための新しい研究領域・拠点を確立すること,さらにこの地域に境界研究ネットワークを立ち上げて,世界の境界研究コミュニティの一角を占めることを目的としています。12月19日(土)に予定される第1回GCOEシンポジウムでは,「世界のボーダースタディーズとの邂逅」と題し,代表的コミュニティであるIBRU(The International Boundaries Research Unit),ABS(the Association for Borderlands Studies),BRIT(Border Regions In Transition)から代表者を招く予定です。

 
10月5日(月)に行われた拠点開設記念セレモニーで挨拶する佐伯総長
10月5日(月)に行われた
拠点開設記念セレモニーで挨拶する佐伯総長
 
 また,本GCOEプログラムは,社会還元を一つの柱としており,セミナー主催・共催に加え,博物館展示とWebページも新たな還元の場としています。博物館展示では,北海道大学総合博物館の2階には展示スペースが設けられ,第1期展示「ユーラシア国境の旅」が開催中です。スラブ研究センターがこれまで蓄積してきたユーラシアの国境地域にかかわる歴史と現況がパネルおよびPCディスプレイを通じて展示されています。国境線が描き込まれていない地球儀(直径1m)は,山脈の高さのみならず,海溝の深さも再現されており,新聞各紙,テレビ各局から取り上げられ,GCOEのシンボルとして多くの観覧者を引きつけています。
 なお,第2期展示は,根室市歴史と自然の資料館からお借りする国境標注と海底ケーブルの実物展示をメインに据え,「知られざる北の国境」をテーマに本年12月19日(土)から公開予定です。
 
国境線が描き込まれていない地球儀
国境線が描き込まれていない地球儀
 
 博物館展示と連動した土曜市民セミナー「知られざる北の国境」(全5回)も開催しており,10月3日(土)には満席の聴衆のもと,第1回講演「ボーダースタディーズと『北の国境』」(岩下明裕)が行われました。国境に関する市民の関心度は高く,GCOEセミナー「北朝鮮をとりまく境界線」(10月15日(木)開催)では,センター内大会議室のフルハウスを記録しました。しかし,展示への反応やセミナー会場の人数から判断する限り,市民の関心は専ら「国境線」「北方領土問題」といったハードな境界問題にとどまっており,移民,文化,といった境界線がはっきりしない問題に対する事象への反応は鈍いきらいがあります。より広い境界問題へ如何にして興味を喚起できるかが,社会還元を行う場合の課題と思われます。
 なお,これら博物館展示やセミナー情報は,境界研究HP(URL www.borderstudies.jp)で逐次告知していきます。皆様方のアクセスと同時に,博物館展示,ホームページ用のコンテンツ提供も広くお待ちしております。著作権の「壁」は,東西ドイツの境界をなしていた「ベルリンの壁」の如くコンテンツ制作者の前に立ちはだかっているため,担当者は日々苦悩しており,皆様の協力をつとにお願いする次第です。
 
ホームページのスクリーンショット
ホームページのスクリーンショット
 
(スラブ研究センター)

前のページへ 目次へ 次のページへ