名誉教授 木村道也氏は,病気療養中のところ平成21年12月18日,満87歳でご逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
同氏は,大正11年1月8日島根県松江市に生まれ,昭和18年9月東京帝国大学医学部薬学科を卒業後,東京帝国大学大学院特別研究生,東京大学医学部薬学科研究生として研究に従事し,同26年4月千葉大学薬学部講師に就任されました。その後,昭和30年8月北海道大学医学部薬学科助教授,同31年4月同教授に昇任し薬品分析化学講座を担当,この間,同37年9月から1年間は英国に出張し,チェスター・ビティー研究所において在外研究に従事されました。昭和40年4月北海道大学薬学部創設に伴い同学部教授に就任,同60年3月停年により退職され,同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。退職後は,島根県立島根女子短期大学長を務められ,地域高等教育の振興に尽力されました。
北海道大学在職中は,医学部薬学科の創設及び薬学部の創設に多大な貢献をするとともに,学部学生及び大学院学生の教育と研究指導に情熱を注ぎ多くの研究者等を養成し,大学等研究機関をはじめ各界に優秀な人材を送り出しました。この間,医学部附属病院薬剤部長を併任,医学部薬学科及び薬学部では評議員,学生部委員,薬学部長として大学運営の枢機に参画するとともに学部運営にも尽力されました。
同氏は研究面において,生体成分の分析化学,特に,ステロイドの化学分析における反応機構研究では,アニオン性シグマ錯体の分離やステロイドカルボカチオンの証明を行い,鈴蘭成分研究では,サポニン構造解析の方法論確立に先導的役割を果し,これらの研究成果に対し,昭和48年に日本分析化学会学会賞を受賞されました。
学会活動においては,日本薬学会北海道支部長,同理事,同評議員などを歴任,また,日本分析化学会においては,同北海道支部長,同常議員,同副会長を務められ,学会の運営に寄与されました。また,同人は臨床化学の振興にも熱意を傾け,臨床分析化学談話会北海道支部を設立し,同会の支部長を長年務め,同会の全国組織として発展した日本臨床化学会の専門誌「臨床化学」の編集委員を務められました。さらに,薬剤師国家試験薬剤師試験委員及び札幌市公害対策審議会委員を歴任するなど,薬事行政や地域の保健衛生行政にも貢献されました。
以上のように同氏は,我国におけるステロイド化学分析の領域で数多くの業績を挙げ,学部,大学院において数多くの人材を養成し,我が国の学術の進歩と産業の発展に貢献されました。
ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(薬学研究院・薬学部)
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