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工学系教育研究センター「海外インターンシップ体験報告会」を開催

 10月5日(月)及び12月15日(火)の2回にわたり工学系教育研究センター(CEED)の主催で「海外インターンシップ体験報告会」を開催しました。
 CEED工学系教育研究センターにおける,創造的・実践的人材育成を支援する教育プログラムの内,海外長期インターンシップ派遣は,基礎学術と産業社会の関係,広範囲な技術分野への対応性,国際的な場での活動能力,リーダーシップやコミュニケーション能力の重要性を学ばせる中核となる教育事業に位置付けております。平成21年度の海外インターンシップ研修生の派遣先(1月末現在)は,36名中7名が企業,26名が大学,3名がその他の公的機関であり,平均研修期間は2.7カ月(平成20年度実績)になっております。各派遣学生の研究テーマは,実験,解析・計算,ソフト作成,調査,試作・評価など多岐にわたっています。
 5年間の世界各地域とのインターンシップ交流実績を派遣と受入れの双方について図−1に示します。その結果,平成17年4月のCEED発足以来,海外へ派遣した学生総数は5年間で30カ国125名,受入れ学生数は32カ国120名に達しています。

 
図−1 海外インターンシップ派遣及び受入実績(平成17年度〜平成21年度)

図−1 海外インターンシップ派遣及び受入実績(平成17年度〜平成21年度)

 
 以上の状況において,以下に平成21年度の成果報告から幾つかの事例の紹介と,教育効果に関する成果の一端について報告します。
 
(1) 事例1:システム情報科学専攻修士課程2年,男子,派遣国:カナダ,派遣期間:約2ヶ月,トロント大学
 与えられた研究テーマは,画像の平滑化,鮮鋭化,エッジ処理など,顔の認識に関する2次元画像処理技術に関する研究でした。海外で生活することは苦労が多いが達成感もあり,海外生活の現実を知ることができる,日本も世界180カ国のうちの1カ国であり価値観や考え方に多様性を知ることができる,外国の友人を通して生きた英語を学べる,ことなどを体験した。それらの体験から,積極的に物事に挑戦していく力,自分の意見を主張する力を養うことができ,日本の良さがわかるので是非海外へ出ることを勧めています。
 
 
 
(2) 事例2:環境フィールド工学専攻修士課程1年,男子,派遣国:アメリカ,派遣期間:約2ヶ月,オハイオ州立大学
 研究テーマは,コレラ,マラリア,デング熱,ウェストナイル熱などの症状や対策について調べるとともに,伝染病の伝染経路において水の役割を解明するための調査研究でした。体験で得られた成果として,自分の学力や,日本の文化・習慣を第三者的な立場から見ることができたことです。そのような視点から自分を見直すことで,帰国後にいろいろな意欲が湧き,学力を含めて個人のスキルを高めていきたいという意欲が湧いたとのことです。在学期間中に一度学外で勉強をしてみることを勧めています。
 
 
 
(3) 事例3:エネルギー環境システム専攻修士2年,男子,派遣国:イギリス,派遣期間約2ヶ月,マンチェスター大学
 参加プロジェクトのテーマは,水と油のように互いに混ざらず二層になった流体を透明な箱に入れ,水平方向に振動させた時に生じる波の界面現象について粒子画像流速測定解析法を活用して解析する研究でした。受入れ指導教員と共著で論文投稿するまでに大きな成果が得られたとのことです。海外生活で,様々な国の人々との会話による異文化交流体験が貴重であっただけではなく,英語力向上にもつながったそうです。インターンシップ体験で得たものは「何事にもあわてない心=生命力」,「日本についてもっと考えるきっかけ」であり,必要だと思うものは「熱意」などでした。
 
 
 
(4) 事例4:環境循環システム専攻修士1年,男子,派遣国:ポーランド,派遣期間:2ヶ月,シレジアン工科大学
 研究テーマは,岩盤を微粒子の集合体として取扱い,粒度分布,粒子間の結合力,空隙などをパラメータとしたコンピュータシュミレーションを活用し,岩盤の圧縮試験における試料の変形・破壊挙動を予測する研究でした。海外インターンシップ体験で得た最も貴重なものは,「国際化社会において,英語は自分の意思を伝えるための貴重なツールであるが,本当に重要なことは英語を話せることではなく相手を知ることであり,相手を知ることは自分を知ること,自分を知ることは生きる目標を知ることであることを認識できたことである!」と報告しています。
 
 
 
 最後に,海外でのプロジェクト型インターンシップを体験した2008年度と2009年度の派遣学生22名の調査によれば,異文化理解,問題把握発見能力,チャレンジ精神など,多くの能力資質について著しい向上効果がありました。その具体例として,インターンシップ派遣前と派遣後の参加学生の12項目の資質向上について集計した結果を図−2に示しますが,派遣前では82%の学生が「平均的」以下であったのが,派遣後には73%が「やや優れている」,「かなり優れている」に向上致しました。これら海外インターンシップ派遣の教育効果が極めて高い成果を踏まえ,CEEDは2010年度から海外インターンシップ学生派遣と受入れを大幅に増やす事業に着手します。
 
図−2海外インターンシップ派遣の教育効果(平成20年度と平成21年度の派遣学生22名)
 
(工学研究科・情報科学研究科・工学部)
 

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