名誉教授喜多富美治氏は,平成22年7月16日蘇生後脳症のため逝去されました。ここに,同氏の生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
同氏は,大正14年4月16日,北海道に生まれ,昭和24年3月北海道大学農学部農学科を卒業後,直ちに果樹園自営及び採種業の実務の経験を経て,同27年10月北海道大学助手として採用され,農学部附属農場に勤務されました。同32年9月から2年間アメリカ合衆国に留学,マメ科牧草の新知見を習得されました。同38年8月助教授,同47年1月教授に昇任し,平成元年3月停年により退職し,同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。
同氏はこの間,昭和60年8月から同62年8月まで農学部附属農場長を務められ,農場改革の困難な時期にその管理・運営及び研究の指導者的な立場から貢献されました。
研究面においては同氏の研究は多岐にわたっており,植物育種学と細胞遺伝学を基礎的手法としたマメ科牧草に関する研究,また寒地型牧草についての研究においては,草地開発事業における粗飼料生産技術の向上に先駆的な役割を果たされ,多大なる功績を残されました。
教育面においては,昭和38年8月助教授昇任後停年退官まで一貫して,農場において農学理論に基づく農業の実践的教育すなわち農場実習を情熱を込めて行われ,農学部の学科の枠を超えた学生が履修し,数多くの学生に感銘を与えました。これは,同氏が自営等多くの実務経験を積み,農業に対する総合的な知見を身につけていたことにより初めて可能で,他の追随を許さぬ特徴ある貢献といえます。また,同氏は留学中に得た知識を基に27年間の長きにわたって飼料作物学を担当し,同氏の薫陶を受けた学生は現在各界でめざましい活動を続けています。
学外においては昭和58年1月から同62年12月まで北海道草地研究会副会長を務められました。
以上のように同氏は草地学および農業教育の発展に大きく貢献されたことにより,平成17年4月に瑞宝中綬章が授与されています。
ここに,謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申しあげます。
(北方生物圏フィールド科学センター)
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