保健科学研究院では,12月5日(日),高校生を対象とした日本学術振興会主催実体験プログラム「ようこそ不思議な細菌の世界へ!−身の周りの細菌を見てふやして感じてみよう−」(実施代表者 山口博之教授)を開催しました。
科学に興味を持ちその研究領域に足を踏み入れる学生数が極めて少なくなってきています。これは科学の将来にとって由々しき事態であり,抜本的な解決策を速急に見いださねばなりません。そこで,細菌学を通して科学への興味を次の世代を担う若者にぜひ持ってもらいたいという強い願いから本研究院ではこのプログラムを継続的に実施しており今回で3回目の開催となりました。
当日のプログラムには高校生22名,引率者4名の参加があり大変賑やかな実習となりました。プログラムは参加者の掌や口の中に常在する細菌を培養しグラム染色を通して見てみるという極めて単純なものです。その一方で,参加者の口の中や掌の細菌を見るためには少なくとも1日以上の培養時間が必要であり,半日のプログラムに納めるための工夫が必要です。そこで本プログラムでは細菌培養用の平板培地と掌型培地を参加者に送りサンプリングしてもらったものを送り返してもらい,実施日には参加者自身が培地上に自分の体から培養された細菌を実際に観察できるようにしました。また参加者の疑問点や質問に対して誠意を持って対応できるように参加者4〜5名ごとに大学院生や学部生(TA)を1名配置したことで,TAを通して実験内容の細部に渡りフォローするとともに研究室での具体的な研究活動等の話題を通して相方向型のやり取りが可能なリラックスした環境を作り,参加者と実施者との円滑なコミュニケーションが実現しました。
東京など大都市とは異なり,地方都市でこの様なプログラムへの大勢の高校生の動員は困難を極めます(新聞折り込み広告やホームページへの掲載さらに高校訪問による宣伝活動をした初年度の本プログラムへの参加者は4名でした)。そこで昨年度より北海道大学周辺の高校の先生との連携をとるようにし,本年度はさらにそれを強化しました。その甲斐あって本年度の参加者数は定員20名を上回り22名に達しました。
本プログラムに対する参加者の反応は大変良く,自分自身の掌や口の中の細菌を直接顕微鏡で眺めて驚く参加者の姿を見て嬉しく思うとともに,更に感動を与えられるプログラムに進化させるための強い意欲が湧いてきたのも事実です。またOHPを用いて実験結果をグループごとに発表してもらい,本プログラムで見たことや感じたことを整理し,疑問点について自ら踏み込んで紐解くための時間も設けました。最後に,高校生の参加者に小林清一保健科学研究院長より「未来博士号」が授与され,プログラムを無事終了しました。
大変地道な活動ですが,「継続は力なり」。今後も本研究院では,さまざまな科学ジャンルが交差する保健科学だからこそ可能なオリジナリティーの高い若い世代の知的好奇心を存分に惹起しうる魅力的な科学融合プログラムを継続して実施していきます。 |