本センター森林圏ステーション助教 夏目俊二氏は6月22日午前7時8分,肺炎からくる多臓器不全のため北大病院にて逝去されました。ここに,同氏の生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
夏目先生は昭和49年3月北海道大学農学部林学科を卒業され,民間企業に勤務の後,同大学大学院農学研究科林学専攻博士課程に進まれ,同59年3月同課程を修了,農学博士号を取得されました。昭和60年3月16日付けで北海道大学農学部附属演習林に着任され,平成3年より檜山地方演習林長(現檜山研究林)を務められ,研究と学生の教育に従事されていました。
先生は,25年以上にわたり地方研究林を舞台にフィールドを利活用した教育研究に一貫して携わってこられました。檜山研究林長として道南の上ノ国町へ赴任されてからは,檜山研究林のフィールドを拠点に,「自然と人間との共生系の確立」をテーマに,地域資源循環型生産システムの再構築,すなわち森林を多様な生産活動の場として再生させるための実践的な研究を,農林水産業従事者や行政関係者ばかりではなく,広く一般住民の方々とも連帯して進められ,地域振興にもひとかたならぬ貢献をされました。
また,北大水泳部で培われた,温厚で誠実かつ,真面目で知性豊かな人柄は,農学部林学・林産学科(現森林科学科)を含む多数の学生から慕われ,研究林を中心に数多くの卒業論文の作成に携わってきました。また,北海道新聞「朝の食卓」欄には夏目先生のエッセイが2年間掲載され,研究で得られた成果の発信にも積極的に関わってきました。
しかし,平成10年に癌が見つかり,以後,癌との戦いのため,札幌医大,北大病院において骨髄移植を含む治療を継続されてきました。治療による副作用にも耐え抜き,免疫力低下による間質性肺炎も患っているにもかかわらず,移植後5年目の今年に入っても元気に職場へ出勤され,常に前向きに御自身の教育研究を継続されていました。
先生は再来年定年を迎える予定で,これまでの檜山研究林でのお仕事を在職中に取りまとめるつもりだとおっしゃり,病魔により痩躯(そうく)となっても先生の眼からは強い意志を感じ取ることができました。しかし,その思いも叶わず,体調の急激な悪化により,わずか8日間の入院生活で突然旅立ってしまわれました。その,志半ばでの先生の無念さはいかほどであったか,癌との戦いが順調に推移していただけに誠に惜しまれてなりません。ここにこれまでのご功績を偲び,心から先生のご冥福をお祈り申し上げます。
(北方生物圏フィールド科学センター)
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