訃報

名誉教授 田中 英二 (たなか えいじ) 氏 (享年79歳)

田中 英二 氏  名誉教授 田中英二先生は平成24年1月17日に御逝去されました。ここに生前の功績を偲んで哀悼の意を表します。
 田中先生は,昭和33年北海道大学医学部医学科を卒業後,内科学第三講座(高杉年雄教授)に入局,同37年同講座助手,同43年同講師,同51年同助教授に就任されました。昭和58年からは北海道大学医療技術短期大学部衛生技術学科教授となり北大病院で診療を続けながら,平成8年の退官までおよそ45年間北海道大学に在籍し,内科学,臨床検査医学を中心に,医師・メディカルスタッフの育成に尽力されました。
 田中先生は内科学の中でも血液学を専門とし,白血病の診断と治療を中心とした臨床血液学の分野で優れた業績を残され,日本内科学会(認定医),日本血液学会(認定医・指導医・評議員),日本臨床血液学会(評議員・幹事)等において活発な研究活動を続けられ,日本血液学会,臨床免疫学会などではシンポジストとして活躍されました。
 先生の研究テーマの中では特に「リンパ増殖性疾患におけるリンパ球の細胞表面マーカーについての研究」において,独自の抗体を作成してT細胞とB細胞を分離・解析することに成功し,当時北大第3内科が国内で最先端と評されていました。田中先生の研究における基本的姿勢は人まねではない独創性の高い研究を遂行することであり,若手研究者には自らの失敗談を積極的に伝え,「失敗したときこそチャンスである」が口癖で,オリジナリティの高い研究の重要性を教授し続けました。
 教育では内科学,臨床講義,臨床血液学,臨床病態学等を担当し,豊富な臨床経験に加えて講義の準備には多大な時間をかけて常に最新の医学知識を教授することをモットーとされていました。また講義の中で提示される美しい血液細胞の写真に多くの学生が感銘を受けていました。診療では北大病院医師として200名を超える白血病患者さんに最新の診療を行う一方,多くの患者さんに笑顔でユーモアあふれる診療で大変人気の高い先生でした。MRIがわからないお年寄りに「エム・アール・アイ」は難しいから「イモアライ」に行きなさい,などとよく言っておられました。
 また先生は写真を趣味として北大病院写真友の会に所属し,北大病院の展覧会に毎年出品して患者さんの憩いの場の環境作りにも積極的に貢献されていました。先生の目指した医学研究・医療への志は現在先生の教え子が北大医学部はもとより全道,全国各地で活躍することで生かされています。
 先生の長年のご功績に敬意を表するとともに,ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(保健科学院・保健科学研究院・医学部保健学科)

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