訃報

名誉教授 恩村 雄太 (おんむら ゆうた) 氏 (享年92歳)

恩村 雄太 氏  名誉教授 恩村雄太先生は平成25年1月3日にご逝去されました。先生は大正11年3月4日に夕張に生まれ,昭和21年に北海道帝国大学医学部卒業後,直ちに同大学医学部病理学第2講座の副手になられ,同27年には北海道大学医学部助教授に,同40年には教授に就任されました。昭和50年には医学部附属病院に病理部を立ち上げられ,同57年からは医療技術短大主事を兼務されました。昭和52年からは北海道大学評議員を8年間,また同年から医学部長を4年間務められました。現在医学部の正面にある「北海道大学医学部」と記されている門標は,当時の恩村医学部長の書によるものです。
 先生の研究活動は肝疾患,中枢神経系疾患を中心に多岐にわたり,特に肝脳疾患の病理と重金属代謝異常との関係については先駆的な実験を行い,肝循環異常の重要性を明らかにし,肝硬変症,肝癌,胆汁うっ滞の病態を解明されました。また,中枢神経系ウイルス感染症やエキノコックス症の病理解剖を数多く手掛け臨床病理学に貢献されました。これらの先生の数々のお仕事は,特に正確無比な病理解剖の技術,抜群の記憶力と膨大な医学知識に基づく深い病態解析に基盤をおくものです。これらの業績により昭和51年には北海道医師会賞(実験的肝脳疾患の研究)を受賞され,また在職中の大きな功績に対しては平成8年に勲二等瑞宝章を叙勲されています。
 先生は教育者としては学生一人一人を大切にされており,名前と卒業期の記憶の正確さは有名でした。学生にとっても先生のドイツ語による詳細な講義は,記憶に鮮明に残る講義であり退官後も語り継がれています。また大学の教官としては,常に公私の区別の重要性を説かれておりました。
 退官後は,学生時代から嗜まれた茶道を学生に指導するともに,「社団法人茶道裏千家淡交会」の活動に精力的に取り組まれ理事を務められた後,平成15年からは顧問に就任されていました。昨年秋まではご自宅にてご趣味の草花の手入れに汗かく日々を送られていましたが,昨年11月上旬に体調を崩され本年1月3日享年92歳の人生に幕を閉じられました。ここに謹んで哀悼の意を捧げるとともに,先生のご冥福をお祈り致します。

(医学研究科・医学部)

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