役員便り

教育・入試等担当副学長 山口 佳三

サステイナブルキャンパス
実現に向けて

施設・環境担当理事 三上  隆 (みかみ たかし)

 20世紀は,産業・経済ともに大量生産,大量消費という消費型の社会でした。他方で,この百年に人口は2倍以上に増加し,今や71億余人が地球上に住んでいます。これまでの生活を続けていれば,エネルギーや資源は急速に枯渇し,生命線となる水や食料も確実に不足すると考えられます。そうした事態に至らぬためにも,21世紀の今日,これまでの消費中心の社会構造から持続可能な社会への転換が大きな課題となっています。大学は,この問題の解決,すなわち持続可能な社会の形成に向けて水先案内人となる重要な役割を担っており,キャンパスをひとつの持続可能なモデル社会と見立て,様々な試みをしています。サステイナブルキャンパスとは,このように持続可能な社会のモデルとなるものです。以下に,本学のサステイナブルキャンパスに対する取組みについて紹介します。
 なお,サステイナブルキャンパスの実現は本学の中心課題のひとつであることから,本学の第2期中期目標では,世界水準の教育・研究を支える高度なキャンパス整備及び環境配慮型キャンパス整備を推進することを掲げています。

サステイナブルキャンパス推進本部

 札幌で2008年に開催されたG8大学サミットにおいて,「札幌サステイナビリティ宣言」が採択され,「大学は持続可能な社会実現のための原動力になる」という決意が示されました。本学では,この決意を現実のものとすべく,「サステイナブルキャンパス推進本部」を平成22年11月に設立し,教育・研究を含めた総合的な取組みを行っています。
 当推進本部は,サステイナブルキャンパスを実現するための計画立案,アセスメントの実施などの業務を担う「キャンパスアセスメント部門」,環境負荷低減に関する実行計画の立案,省エネルギー対策の推進などの業務を担う「環境負荷低減対策推進部門」,及び省資源,資源の循環利用の業務を担う「環境保全センター」から構成されています。また環境負荷低減対策を実施するには全学的な連携体制が必要なことから,各部局には「環境負荷低減推進員」を置いています。

サステイナブルキャンパス構築のためのアクションプラン
及びサステイナブルキャンパス評価システム

 本学では全国の大学に先駆け,平成24年3月にアクションプランを策定しました。サステイナブルキャンパスを実現するため,平成17年9月に策定された本学の環境に関する基本方針を実行に移す指針となるものです。
 基本方針は,(1)教育研究を通した地球環境及び地域環境への配慮,(2)環境情報の発信による社会への貢献,及び(3)大学運営に伴う環境負荷の低減,という3つとなります。
 方針(1)については「教育と研究」の2方策,方針(2)については「学内外への周知・啓発,地域社会との協働,国内外のネットワーク構築」の3方策,方針(3)については「生態環境,北の森林プロジェクト,建物の省エネ対策,エネルギー,3R(reduce, reuse, recycle)対策,水,食糧,交通計画,省スペース,購入」の10方策が挙げられています。
 また,平成25年3月に導入した評価システムは,アクションプランの実践状況の進捗について,運営,教育研究,環境,地域社会の4部門で評価するもので,これら諸部門における本学の目標達成度を明らかにすることで,次のアクションへの明確な指針を与えることを目的としています。

キャンパス環境保全と
サステイナブルキャンパス推進事業の取組状況

 以下に平成24年度の主な取組みを列挙します。
(1)札幌キャンパス構内の生物多様性の保全,及びキャンパス計画におけるアセスメントへの利用を目的とする生態環境調査を実施し,データベースを構築しました。また,一般向けに,「札幌キャンパス生きものマップ」としてWeb上で公開しました。
(2)環境負荷低減パイロット事業では,電力メーターを新たに88ヶ所に設置して使用電力の「見える化」を部局単位まで進めた結果,使用最大電力は平成22年度比で夏5.6%減,冬1.4%減,電力使用量では夏5.1%減,冬1.7%減の省エネルギーを達成しました。
(3)サステイナブルキャンパス実現のための戦略及び評価手法の確立を目的として,EU3大学(トリノ工科大学,アムステルダム自由大学,ケンブリッジ大学)との共同研究を推進し,10月には本学において,国際シンポジウムを開催しました。

 サステイナブルキャンパス構築は,本学を取り巻く地域社会,市民の理解と協力があってこそ成り立つものです。その構築のためには,5月13日(月)に実施した「キャンパス・クリーン・デー」などの行事を通じて,教職員,学生とともにサステイナブルキャンパスへの意識を高め,地域社会との協働を一層進めていく必要があります。
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