ProSPER.Net Young Researcher’s School 2012参加報告
まず初めに,このような機会を頂けたことを感謝いたします。私の体験談から少しでも多くの日本人学生がProSPER.Net YRSに応募してみようかなと思って頂ければ幸いです。私は現在,医学研究科 微生物学講座 病原微生物学分野にて人獣共通感染症に関する研究を行っています。この人獣共通感染症は世界中に分布していますが,特に熱帯地域における住民への脅威は大きく,致死的な感染症も少なくありません。その反面,これらの多くは予防可能であり,診断・治療の流れさえスムーズであれば救命の可能性があるのも事実です。また,古今さらに活発化する国際的な物流及び人口流動は感染症の移動に対するリスクを常に伴っているため,発生地での感染症制御,感染症の越境に対する制御の必要性は年々高まっています。しかしながら一つの学術分野だけでは対処が困難を極める問題でもあるため,総合学際的な対応,またサステナビリティサイエンスと呼ばれる学問に興味を持ち始めました。その折に今回の若手研究者向けセミナーに参加することができ,貴重な経験ができましたのでご報告いたします。
2012年度Summer schoolのテーマは“Building a Resilient Society in Asia”,『アジアにおける災害に負けない地域社会づくり』を掲げてインドネシア,ジョグジャカルタのガジャマダ大学にて開催されました。10日間しか日程が許されない中,非常に綿密なプログラムが組まれておりましたが,幸いにも私達は全課程を修了することができ,現地のコーディネーターの尽力に感謝が尽きる事はありませんでした。具体的には座学1日,見学1日のセットを繰り返し,事前に学んだ内容がどのように現場で生かされているのか,繋がりよく学べる構成になっていました。インドネシアという国は数千の島からなる国で,非常に多文化多民族国家であり,中央政府がひとまとめに統制を取るのは難しいということから,州による自治が進められています。反面,災害によって大きな被害がある地域に発生した場合,速やかに国からの援助を受けられないという点も指摘されています。そのような統制バランスの中で,地域住民が主体となって,火山の噴火被害にあった地域での復興活動,貧困から立ち上がるための地域活性化及び職機会の創出,そして環境と調和した生活を目指した循環型農業,有機廃棄物の再利用などがどのように行われているのかを知識として吸収し,実際に目にする事で体験しました。それらを踏まえて,参加者には自分の研究に関する5分間の発表が課され,最終日にはコンペティションが行われました。発表以外にも課外活動のレポートや,各講義のファシリテーター,また担当講義のレポートと概要発表,またYRS終了後のレポートなど数々の課題が出されます。
さらに,レクリエーションもしっかりと予定に組まれており,ジョグジャカルタの観光地巡りや,伝統芸能を楽しむ機会も与えられました。参加者のマネージャー役を担ってくださった現地の担当者の方々に感謝の言葉が尽きることはありません。またこれらは個人で回るのではなく,他の参加者と一緒に行動します。講義中とはまた違って,リラックスした中で弾む会話ほど楽しいものはありません。これらのオフィシャルなレクリエーション以外にも,毎日の講義後は自由時間のため,課題さえ終わらせればホテルの外へ現地の空気を感じに出かけるもよし,ホテル内の施設を利用して楽しむもよし,他の参加者と何時間も話し込むもよし,自己責任の範囲内でアフターファイブを楽しむ事は可能です。勉強しに来たのだからと部屋に閉じこもって机にかじり付くのではなく,このような自由時間を上手く活用して現地の人々の生活に触れ,彼らの文化を理解しようと務めることの方がよほどこのYRSの目的に適うのではないかと個人的には思うところです。また同時に他の国からの参加者と議論をかわし,談笑することも非常に有意義な時間を過ごせたと感じています。
サステナビリティサイエンスは総合学際的な学問であると初めに述べましたが,この総合的な学問であるからこそ,非常に複雑で個々の学問のようにはっきりとしたものが私には見えませんでした。また,このサステナビリティサイエンスを一人の学者が専門として極めるという事は,独りで全学問を極めるということであり,人間一人の人生内で成し遂げるには限りなく不可能に近いと感じておりました。
しかし,独りで立ち向かうには大きすぎる壁でも,他の人と協力すれば打ち破ることができるように,この総合学際的な学問はどうやって他の専門家と協力して行くか,協力できるのかを明確化していくもの,さらには協力体制を展開させるためのファシリテーターを養成するものだということを今回のYRSで気づかされました。全く異なる分野,他国の研究者と密な時間で集中的な交流を行う事で,相手の研究分野と自分の研究分野の係わり合い,共通点,新しい視点の提案など,同じ分野の仲間同士では気づく事のないような事を多く発見できたのです。
毎年異なるテーマを掲げてYRSは開催されますが,基本はこのサステナビリティサイエンスに基づくものです。来年度のテーマが自身の研究には直接関係無いと思っても,参加したいと思う気持ちがあれば是非,まず応募してみて下さい。一見関係無いことも,とんでも無いところで繋がっていくのがこの学問です。むしろ全く関係の無いように見える分野の研究者が参加し,新しい視点を加えて議論を重ねることにより,思いも寄らない可能性が浮かび上がる,その方がYRSにとっては有意義な参加者になると思います。
YRSで出会った仲間とは今でも交流が続いています。研究者同士として,友人として,2週間にも満たない期間でも,苦楽寝食を共にした仲間として。
決して英語が話せなくとも大丈夫とは言いません。上手く話せなくとも,自分の考え,自分の意見を伝える努力を惜しまないこと,また怖じけず,変に構えず,素直に分からないことは聞く好奇心の塊を持っていれば必ず相手の方も耳を傾け,より多くの情報を与えようと応えてくれます。偶然も必然も機会は機会ですから,是非この記事を目にした,または私のように,たまたまProSPER.Netのホームページを見たなど,機会を得たなら是非生かしてみて下さい。Give it a shot to get the show on the road!
最後に,参加前から参加後までサポートしてくださった国際本部の方々,現地コーディネーターの皆様,国連大学のコーディネーターの皆様,講師の皆様,それからYRS 2012への参加者の皆様,全員のお名前をここに挙げられないことは残念ですが,言葉では言い表せないほど誠にお世話になりました。関係者の皆様に心から深い感謝の意を表します。
塩川 愛絵(医学研究科博士後期課程3年)

