環境健康科学研究教育センターでは,様々な疫学研究を行ってきました。当センターが研究によって得た科学的なエビデンスは,市民の方々へ積極的にフィードバックしていくことが求められています。
こうした背景から,10月11日(金),市民講演会「環境と子どもの健康」を開催しました。
折しも,熊本県で開催されていた「水銀に関する水俣条約」の外交会議で基調講演を行ったフィリップ・グランジャン教授(南デンマーク大学教授・ハーバード大学兼務教授)が当センターを訪問されました。そこで,本講演会で招待講演をいただくこととなりました。
当日はあいにくの雨の中,当センターが実施している疫学研究である「環境と子どもの健康に関する北海道研究」や環境省「子どもの環境と健康に関する全国調査(エコチル調査)」に参加している市民などの多数の参加がありました。
グランジャン教授から,デンマーク・フェロー諸島における島民の出生コーホート研究から,胎児期に母親を介して水銀や有機フッ素化合物等の環境化学物質にさらされることで,出生後の子どもの発達の遅れや免疫機能の低下など,健康に対して様々な悪影響があることが明らかになったと発表されました。「化学物質に対する子どもの脆弱性は出生前に始まる,したがって予防も出生前から開始すべきだ」という重要なメッセージが伝えられました。
次に,当センターで進めている疫学研究について,池野多美子特任講師より「北海道スタディ,エコチル調査でわかったこと」として,受動喫煙でも赤ちゃんの出生体重が低下していること,その理由として喫煙をしない妊婦でも家族や職場の受動喫煙で血液中のコチニン濃度(ニコチンの代謝物)が高くなっていることが報告されました。
続いて荒木敦子特任講師より「室内空気質と健康研究:プラスチック由来の化学物質」として,住宅の床の材質が,可塑剤でありアレルギーを引き起こす懸念があるフタル酸エステル類のハウスダスト中濃度と関係することが報告されました。
調査参加者からの活発な質疑応答を交えた,大変実り多き講演会となりました。実施後のアンケート調査結果では,9割の来場者が「満足」「とても満足」と回答しました。また,今後の企画については「講演会」「研究報告会」を望む声が全体の約5割と多かったことから,こうした講演会への関心及びニーズの高いことが浮き彫りになりました。
環境健康科学研究教育センターでは,環境と健康に関する様々な課題に取り組むと共に,今後調査参加者の要望に応え,こうした市民講演会や,研究成果の発表をできるだけ多く実施していく予定です。

