大学文書館では,3月24日(月)に松本純爾旧蔵日記17点を,ご令孫の山口二郎氏よりご寄贈いただきました。
松本純爾は,1895(明治28)年岡山県に生まれ,1905年岡山県立中学校を卒業後,札幌農学校林学科に入学しました。1908年7月林学科を第6期生として卒業した後,北海道庁立空知農業学校教諭となり,1914(大正3)年4月には郷里の岡山県に戻り,岡山県立農学校(後の岡山県高松農学校),山陽女子高等学校にて教鞭を執りました。
このたび受贈した日記は,1904年,1906〜1918年に綴られた17冊です。日記には,日露戦争後の札幌農学校における学生生活のほか,就職先の農業学校でどのような教諭生活を送っていたのかが記されています。
林学科在学中,松本純爾は札幌独立基督教会に通い,青年寄宿舎に暮らしながら,学科・学年の垣根をこえた友情をはぐくんでいました。昆虫学者や歴史家となる夢も抱いていました。ワーズワースの詩集など英文学のほか,トルストイ・ツルゲーネフといったロシア文学なども耽読し,予科教授であった有島武郎(札幌農学校第19期生)を慕っては有島主催の読書会に参加して思索を深めていたことも日記からうかがわれます。また,空知農業学校から転任する際には,後任者に蠣崎知二郎(札幌農学校第19期生)を校長に推薦し,先輩で貸本業を営んでいた足助素一(森林科1904年卒業)や青年寄宿舎で私淑した宮部金吾教授を訪問するなど,札幌農学校関係者の人的つながりを日記から読み取ることができます。
今後,大学文書館では,受贈日記を大切に保存すると共に,有島武郎・足助素一の日記類や青年寄宿舎日誌と照合しながら翻刻を進め,展示・資料見学会などでも活用していきます。