役員便り

理事・副学長 上田 一郎

スーパーグローバル大学創成支援

理事・副学長 上田 一郎 (うえだ いちろう)

 北海道大学は,平成26年度スーパーグローバル大学創成支援でタイプAに採択されました。
 本事業の公募目的と背景には,次のように書かれています。「我が国の大学が国の成長を牽引する知的拠点として社会の期待に応え,世界中から優秀な研究者や学生を集め,グローバルに活躍する人材を輩出するとともに,世界の高等教育マーケットにおける存在感を発揮し世界に伍していくためには,大学個々の特性を伸張させつつ,一つひとつの大学の体制や組織文化そのものの国際通用性を高め,国際競争力を向上させなくてはなりません。(中略)徹底した「大学改革」と「国際化」を断行し,世界的に魅力的なトップレベルの教育研究を行う大学(タイプA)を重点支援します。」
 つまり,本事業費によって,単体のシステム改革や教育事業をどう行うかを提案するのではなく,国際化するにあたって,大学としてどのような教育とガバナンスを行うか示す必要がありました。従って,申請書には,これから本学がどのような教育改革やガバナンス改革を行っていくのかを書き込みました。申請書の全文は,次のURLからダウンロードできます。
http://www.hokudai.ac.jp/jimuk/gakunai/pdf/HUCI_proposal.pdf(学内限定)

1−4−4改革プラン

 本学は,平成26年3月に「北海道大学近未来戦略150」を創基150周年たる平成38年に向けた目標として作りました。今回の申請は,これに基づいたものです。具体的には,総長のガバナンスのもとで4つの教育改革と,これを可能にする4つのシステム改革を柱として提案しました。これを1−4−4改革プランと呼びます。4つの教育改革とは,1)NITOBE教育システムによる先進的教育の実施,2)異分野連携による「国際大学院群」の新設,3)ラーニング・サテライトの機動的開設,4)サマー・インスティテュートの展開,です。これを支える4つのシステム改革とは,1)全学的な教学マネジメント体制の整備,2)人事制度の国際化,3)国際対応力の高度化,4)国際広報力の強化,です。

サマー・インスティテュートとラーニング・サテライト

 本事業では,主にNITOBE教育システムと,サマー・インスティテュートやラーニング・サテライト及び国際広報力の強化を重点的に支援します。NITOBE教育システムについては別に譲ることとして,ここではサマー・インスティテュート(SI)とラーニング・サテライト(LS)について説明します。
 SIは本学キャンパスで,4学期制の2学期目(主に6・7月)に英語による様々な科目を開講するものです。科目は既存のものでも新たに作っても結構です。集中講義であれば,3週間が標準でしょう。LSは海外で臨機応変に講義を開講します。北大のSIとLSには2つの目的があります。一つは,日本人学生が本学キャンパスで,国際化した教育環境を得られること(SI),また海外で本学の講義や実習が開講されること(LS)。もう一つは,教員がSIやLSを通じて,海外の研究者と共同で教育内容を作り上げたり,研究を行うことです。こうしてSIやLSを,学生のための教育環境としてはもちろんのこと,教員や事務職員が教育・研究の国際化の現場としても利用することが目的です。

 本学として,単純に留学生を増やしたり,本学の学生を海外に派遣するだけでは,本当の意味での国際化とは言えません。本学キャンパスで,世界に通用する教育と研究が行われ,海外の学生や研究者・教育者が本学キャンパスに来たいと感じるようになってこそ,初めて国際化したと言えるのではないでしょうか。このためには,グローバルに通用する英語による教育や,外国人の研究者が本学で教育研究に関われるような運営体制・サポート体制が必要です。ただし,国や地域によってディプロマ・ポリシーや講義の単位の考え方が違うわけですから,教育の国際化はケースバイケースでこれから一つひとつ作り上げていく必要があります。
 こうした国際化の実験場として,SIとLSを全学の構成員に利用していただきたいと思っています。

 スーパーグローバル大学創成支援は,中間評価を経て10年間続きます。この10年で北海道大学が本当の意味で国際化することを願っています。
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