サステナビリティ・ウィーク2014の開催
サステナビリティ・ウィーク2014を振り返って
サステナビリティ・ウィーク2014 実行委員長
国際担当理事・副学長 上田 一郎 |
G8北海道洞爺湖サミット2008の開催を見据え2007年に開始した「北海道大学サステナビリティ・ウィーク」は今年で第8回を迎えました。今年は10月25日(土)から11月9日(日)の16日間に19企画,この前後数週間に開催された13企画を合わせて合計32企画を実施しました。
本学のこれまでの歩み
本学は2005年に北海道大学「持続可能な開発」国際戦略を策定し,「持続可能な開発(Sustainable Development: SD)」をテーマに掲げて各種の取り組みを行ってきました。2005年は「国連持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development: ESD)の10年」が開始された年です。国際的な動きに呼応する形で本学では各学問分野において,または分野横断的にSDもしくはESDが取り組まれてきました。その歩みの中で,G8北海道洞爺湖サミットが開催されるのと並行して,本学が中心的な役割を果たしてG8大学サミットを開催し,世界の主要な大学と共に「札幌サステイナビリティ宣言」を2008年に採択しました。その宣言をひとつずつ具現化させながら本学は今日に至っています。
開催テーマ「持続可能な開発のための教育」
「国連ESDの10年」が最終年を迎える本年には,名古屋市で「ESDユネスコ世界会議」が11月10〜12日に開催されたのをはじめ,世界の各地で数多くの教育機関がこれまでのESDの取り組みを振り返り,将来計画について議論をしました。本学においても,サステナビリティ・ウィーク2014のテーマをESDと定め,様々な観点からESDについて,学生,市民,教育者,地域,大学,民間団体が議論をしました。
教育の未来を考える多角的な議論の実施
テーマに即して開催された16の企画は実に多様です。
「ESD国際シンポジウム−次世代のESD戦略」「専門家国際ネットワークを用いたサニテーション教育」「協定校企画 フィンランド―日本 ジョイントシンポジウム」「日露共同で行う教育プログラム開発プロジェクト」では,中国,韓国,タイ,アフリカ,北欧,ロシアの大学との協働教育の在り方について議論しました。
「サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2014」では,大学と地域の連携について議論が行われ,「第5回サステナブル・キャンパス・コンテスト」では学生の視点から教育を提供する/受ける大学という環境に対し,改善アイデアが提案されました。
また,障害を持つ人が大学で学び,社会で働くためには教育や大学がどうあるべきかを議論した「障害をもつ大学生の就労を目指して」,環境倫理の観点から教育のあり方を議論した「第9回応用倫理国際会議:安全,サステイナビリティ,人性の涵養」,文化的景観を守り継承するための教育プログラムを検討した「先住民文化遺産とツーリズム」など,持続可能な社会の創造に向けた教育のあり方を考える機会が提供されました。
ウェブ・メディアを通じた世界同時議論
サステナビリティ・ウィーク事務局は毎年,新しいことにチャレンジしてきました。今年はインターネット・フォーラム「GiFT: Global issues Forum for Tomorrow」においてUstreamやYoutubeによる動画配信のみならず,ソーシャル・ネットワーク・システム(SNS)の一つであるFacebookを活用して,世界中の若者が動画を見ながらFacebook上で議論する機会を提供したところ,世界各地から253名もの参加を得ました。
世界から人が集まるまたは集めることを考えたときに北海道は決して地理的に優位な場所ではありません。だからこそ,ウェブ・メディアを活用して議論の場を世界へ提供することは,遠隔地に住む10代の学生や仕事に忙しい社会人が議論に加わることを可能にし,サステナビリティ・ウィークを一層「世界に開かれた議論のプラットフォーム」へと機能させることに繋がります。今後,他の企画でも積極的にウェブ・メディアを活用していくことが期待されます。
2015年に向けて
第9回のサステナビリティ・ウィークは,2015年10月24日(土)から11月8日(日)を中心に開催します。
「国連ESDの10年」は本年で終了しますが,来年9月の国連総会で「持続可能な開発目標(Sustainability Development Goals:SDGs)」が採択される予定であり,本目標の達成に向けて世界中が取り組んでいくことになります。
本学も引き続きサステナビリティ・ウィークを開催することを通じて,SDGsへ貢献してゆく所存です。皆様のご理解とご参加をお願い申し上げます。
9月28日(日) 会場:情報教育館3階
日中記者交換協定50年 日本報道,中国報道の半世紀
主催:メディア・コミュニケーション研究院附属東アジアメディア研究センター/共催:法学研究科附属高等法政教育研究センター/
実施責任者:メディア・コミュニケーション研究院附属東アジアメディア研究センター センター長・教授 渡邉浩平
今から50年前,日本と中国の間に記者交換協定が締結され,日中双方の記者が互いの国に常駐するようになりました。1964年は東京オリンピックが開催された年であり,その期間中に中国が初の原爆実験を行っています。それから半世紀の月日が経ちました。本事業は,報道という視点から日本と中国の関係を振り返り,未来への示唆を得るために企画され,本学法学研究科附属高等法政教育研究センターと同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科の協力を得て実現しました。
なお,シンポジウムを開催した9月28日(日)は,50年前,日本の記者が香港から中国に入国した日です。
シンポジウムでは午前に,東アジアメディア研究センターの渡邉浩平教授が1964年の日本メディアの中国報道を,西 茹准教授が,同年の中国メディアの日本報道の分析を発表し,桜美林大学の高井潔司教授(本学名誉教授)より,「中国報道50年の変化」が報告されました。そして,同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の加藤千洋教授から,以上の報告に対しコメントがなされました。
午後には,1964年の第一期特派員として北京に赴任された東京放送の大越幸夫氏と国交回復前に北京日報記者として東京に滞在された王 泰平氏の特別講演がありました。最後に,法学研究科附属高等法政教育研究センター長の鈴木 賢教授の司会のもと,加藤教授,高井教授,日本僑報社編集長の段躍中氏,メディア・コミュニケーション研究院の藤野 彰教授が加わり,ディスカッションが行われました。
 渡邉教授による発表 |
 ディスカッションの様子 |
9月30日(火) 会場:創成科学研究棟4FセミナールームB,C
CRC国際シンポジウム 生体分子をモチーフとした機能性分子の創製と応用
主催:触媒化学研究センター/共催:公益社団法人日本化学会北海道支部,公益社団法人高分子学会北海道支部,
公益社団法人有機合成化学協会北海道支部,フロンティア化学教育研究センター/実施責任者:触媒化学研究センター 准教授 小山靖人
生体分子をキーワードとして各分野の6人のエキスパートを世界から招き,研究分野の持続的な発展と,分野間での意見交換を目的とした国際シンポジウムを開催しました。本シンポジウムは触媒化学研究センターが主催し,5団体(公益社団法人日本化学会北海道支部,公益社団法人高分子学会北海道支部,公益社団法人有機合成化学協会北海道支部,本学フロンティア化学教育研究センター,北海道大学サステナビリティ・ウィーク2014)による共催支援で行いました。
シンポジウムでは,口頭発表6件(招待講演4件,特別講演2件)と学生によるポスター発表27件を行いました。招待講演者には,「生体高分子を用いる機能性材料の創製」,「生体分子の分子認識機構の解明」,「生体分子からの有用物質創製」,「生理活性天然物の全合成」,「天然の微量成分の新しい構造決定法」,「生体分子をモチーフとした新しい触媒系の開発」という多岐にわたる分野の講演をしていただき,生体分子をめぐる研究開発の未来を議論しました。
参加者は学生88名,教職員28名で,合計116名でした。
フロンティア化学教育研究センター事務局に,授業の一貫として登録してもらったことで,予想を超える多数の学生が参加しました。イベント終了後に行ったアンケートでは,英語の授業を受けることができる貴重な体験だった,多分野の講演が刺激的だった,というような回答が多く見られました。
 学生によるポスター発表 |
 口頭発表時の様子 |
10月8日(水) 会場:フロンティア応用科学研究棟セミナールーム
専門家国際ネットワークを用いたサニテーション教育
主催:次世代都市代謝教育研究センター/共催:国際水環境学院(2iE),ザンビア大学(UNZA)水資源管理センター/
実施責任者:次世代都市代謝教育研究センター センター長 船水尚行
専門家の国際ネットワークを有効に利用してサニテーションに関する教育プログラムを作る取組の一環として開催しました。今年度はサニテーションに関わる社会的・文化的な面を取り上げ,3人の講師に講演をお願いしました。また,ザンビア大学の教員と学生,ブルキナファソの国際水環境学院(2iE)の教員と学生,インドネシア科学技術院の研究者を交えて,講演についての議論を行いました。加えて,サニテーションに関する教育プログラムのカリキュラムやコンテンツについても意見交換を行いました。講演に参加した学生からは講義の内容に関するコメントや,教育プログラムに対する意見がありました。
今回は,サニテーションの政治学的側面,文化人類学的側面,並びに経営学的側面に関するの3つの講義のe-Learnig教材を作ることができ,各国の学生からの意見を聞くこともできました。
今後は,e-Learnig教材の充実に一層努力し,サニテーションの教育プログラムの完成を目指していきます。
 参加者の集合写真 |
 船水教授による講演 |
10月8日(水) 会場:附属図書館本館メディアコート
STAND UP TAKE ACTION in Hokudai
主催:附属図書館(国連寄託図書館)/共催:北大マルシェ/実施責任者:附属図書館利用支援課 課長 豊田裕昭
附属図書館は,10月8日(水)午後6時30分から,本館メディアコートにおいて「STAND UP TAKE ACTION in Hokudai」を開催しました。
「STAND UP TAKE ACTION」とは,国連の「ミレニアム開発目標」達成のために「立ち上がる」世界的なキャンペーンです。附属図書館は,道内で唯一の国連寄託図書館に指定されており,国連及び関係機関の資料の所蔵・提供のみならず,国連の広報活動にも貢献してきました。当イベントは,その広報活動の一環として行ったものです。
当日は学生,教職員,市民の方を合わせて36名の参加がありました。まず,イベントの冒頭に図書館職員が本イベントの背景や趣旨を説明しました。
続いて,農産物生産者と消費者の交流を通して北海道の「食」や「農」について考えるイベント「北大マルシェ」の関係者として,小林国之助教(農学研究院)と若林 諒さん(農学院修士1年)から講演がありました。
小林助教からは,北大マルシェを取りまとめる立場から,マルシェの意義や位置付けの講話,マルシェに参加している農産物生産者についてのエピソードの紹介がありました。
若林さんからは,北大マルシェ2014実行委員長としての活動を通して学んだこと,北大生をはじめ多くの大学生を取りまとめることでやりがいを得たことの発表がありました。
最後に新田孝彦附属図書館長の「スタンド・アップ!」の掛け声のもと,参加者全員で立ち上がり,国連の「ミレニアム開発目標」達成に対する意志をアピールしました。
「STAND UP TAKE ACTION」の趣旨のひとつは,国際的な課題について身近にできることから実践する点にあります。参加者に実施したアンケートの中には,「行動」や「経験」が重要であるとのご意見があり,イベントの趣旨が参加者に浸透した様子がうかがわれました。
 小林助教の発表 |
 参加者全員でスタンド・アップ |
10月15日(水)〜19日(日) 会場:クラーク会館
CLARK THEATER 2014
主催:CLARK THEATER 2014 実行委員会/実施責任者:教育学部2年 川端宣志
CLARK THEATER 2014では,クラーク会館の講堂・大集会室を使用し,学生や市民に開放した期間限定の映画館を運営しました。全期間を通じて全11プログラム,20作品を上映しました。シネマコンプレックスでは公開していない短編作品や,名作と言われる白黒映画など幅広いコンテンツを提供することができました。様々なジャンルの作品を楽しんでいただくことで,商業映画館では提供することのない楽しさを実感していただけました。また監督をお招きしたトークショーをご覧いただくことで,制作現場の話や,制作者の思いを知っていただく機会を設けることができました。北大カフェプロジェクトや,本学映画研究会とも協力し,足を運んだお客様だけではなく,協力いただいた他団体の学生スタッフにも映像の世界に興味を持つ一助としての場を提供することができました。
今後も私たち映画館プロジェクトは映像文化を今以上に発展させるべく,本学での常設映画館の創設に向けて活動を続けていきます。その中で現代社会が内包する問題を様々な切り口で訴えていき,また教育機関としての大学に常設映画館が存在することの可能性を私たちの活動を通して訴えていければと思います。
 第2会場の様子 |
 トークショーの様子 |
 メンバーの集合写真 |
10月25日(土) 会場:学術交流会館
第5回ESD国際シンポジウム
主催:北海道大学/共催:ソウル国立大学校,高麗大学校,北京師範大学,チュラロンコン大学,
環境省北海道環境パートナーシップオフィス,酪農学園大学/実施責任者:教育学研究院 教授 水野眞佐夫
10月25日(土)に,「第5回 ESDシンポジウム 次世代のESD戦略」を開催しました。シンポジウムの全体会はインターネットで世界へ生配信され,参加者数は165名(学内49名,学外48名,オンライン参加68名)と,多くの参加を得ることができました。
本シンポジウムは教育学研究院が過去4回にわたり開催してきた「ESD国際シンポジウム」を拡大して開催しました。北海道・アジアにおけるESD推進の10年間を総括し,次代の教育の在り方について展望を得ることを目的に,日中韓タイの海外協定校教員,道内ユネスコスクールの教員・研究者,環境省機関,また学生による分科会を開催し,北海道とアジアの次世代ESDについて多角的かつ総合的な情報提供と議論を行う場を設けました。
シンポジウムは上田一郎理事・副学長による開催挨拶,教育学研究院の小内 透院長による趣旨説明によって開始しました。
基調講演には,国際連合大学高等研究所(UNU-IAS)において指導的立場におられるESD研究者で,国際的なESD情勢について熟知される世界的な第一人者のマリオ・タブカノン客員教授をお招きし,「ESD10年の総括」と題してご講演いただきました。また,高麗大学校師範大学の韓 龍震学長から「ESDの将来展望」,本学教育学研究院の河口明人教授から「ESDの再構築」と題した講演が行われました。
その後,4つの分科会「ESD Campus Asiaの成果と展望」,「北海道ユネスコ・スクールコロキウム」,「ESD学生フォーラム」,「大学と地域社会が協力するESD」が行われました。
最後に,再び大講堂に全参加者が集まり,総括を行い,各分科会の代表者が登壇し,それぞれが行った議論について報告しました。
シンポジウム終了後に実施したアンケートでは,「様々な角度からESDについて知ることができて良かった」「国際的な視野を持つことの重要さがわかった」「北海道のRCE(Regional Center of Expertise:ESD推進の地域拠点)設立の動向が興味深かった」との回答が多くみられました。開会から閉会まで通しての参加者も多く,全体で議論への認識を深めていけたことに,関係者一同,大きな満足感を得ました。様々な立場でESDの発展に携わる参加者が一堂に会し今後の展望を議論できた,大変貴重な機会となりました。
 基調講演後の質疑応答の様子 |
10月25日(土)〜11月9日(日) 会場:学術交流会館,共用レクリエーションエリア
雑紙削減プロジェクトPAPERSPACE〜身近なところから見つめなおそう〜
主催:PAPERSPACE/実施責任者:工学院 修士課程2年 尾門あいり
私たちの活動の目的は,サステイナブルキャンパス実現に向けて先進的な取り組みを行っている本学と,短い期間しかキャンパスで過ごさない学生,本学を訪れる市民・観光客といった大学利用者との乖離を埋め,両者の理解や認識を高めるきっかけづくりです。
本行事は,企画・準備・本番まで,すべて学生(本学で建築を学ぶ学部2年生から修士2年生の学生を中心に33人)で行い,本学のサステイナブルキャンパス推進を知るきっかけとして,構内から大量に排出される雑紙を活用し,私たちが普段どれだけ無意識に雑紙を排出しているかを実際に体感できる“空間作品”として再構成・提示しました。また,作品に活用した雑紙は,北大農場で牛の敷料・バイオマス原料として再活用・処理し,構内で排出されたゴミを構内で処理する,というサステイナブルなシステムモデルの構築・提案も行いました。
期間中,800人程度の来場者があり,うち,7割程度が学生でした。来場者からは作品に対する意見とともに,「こういうアート展示を大学でやってほしいと思っていた!(学生)」「学生と触れ合えて面白い!(観光客)」「こんなに楽しい公園は初めて!(幼稚園児)」との意見もいただきました。また,企画側の学生からも,「普段の授業で実際の空間を作ることができないので楽しい」「色々な人の捉え方を知ることができて面白い」「これからもやりたい」との意欲的な感想も得ることができ,自分たちの作品を外部の人々に見てもらい反応を体感できたことに達成感を感じることができたようです。新聞社1社,テレビ局2局から取材を受け,その反響から,実際に足を運んでいない人たちにも私たちの活動を認識してもらえたことを実感しています。
今後も学生の活動がキャンパス内の様々な場所で行われることにより,より魅力的で付加価値の高いサステイナブルキャンパス空間の形成,豊かな自然環境の積極的な活用や保全,活動を行う人々の人間関係の醸成などにつながっていくことと思います。私たちの活動がそのようなキャンパスの創造に貢献できるよう,次年度以降も継続していきたいと考えています。
 紅葉を見に来た市民と学生の交流 |
 説明に耳を傾ける市民の方と製作中の学生 |
10月26日(日) 会場:学術交流会館
障害をもつ大学生の就労をめざして
主催:特別修学支援室/実施責任者:教育学研究院 准教授 松田康子
5名のシンポジストを招いて,特別修学支援室主催シンポジウム「障害をもつ大学生の就労をめざして」を開催しました。
肢体不自由のあるシンポジスト,ろうのシンポジスト,自閉症をもつシンポジストからは,大学で学び社会で働く経験を語っていただきました。就労支援事業所のシンポジストからは地域の社会資源について,発表していただきました。障害をもつ人を積極的に雇用している企業のシンポジストからは,企業での支援体制を中心にお話しいただきました。参加者は約160名で,アンケートの集計(回収率60%)によると,参加内訳は学生が30%を占め,次いで教育関係者とその他(福祉関係者等)がそれぞれ21.7%,市民14.1%となりました。参加者からは「当事者の話を聴くことができて勉強になった」「今後も続けてほしい」「他の障害への理解を深めたいので,次の企画に期待する」等の感想がありました。
特別修学支援室は,障害のある学生に対して合理的配慮に基づいた学びの環境整備を行う組織です。平成28年度より障害者差別解消法施行が決定している中,本シンポジウムにおいて「働く」という普遍的なテーマを共有できたことは非常に意義深いものでした。
 講演の様子 |
10月28日(火) 会場:国際本部大会議室
北大×JICA連携企画 青年海外協力隊トークイベント
〜持続可能な社会をつくる日本のボランティア〜
主催:独立行政法人国際協力機構 北海道国際センター/共催:国際本部/実施責任者:国際本部国際連携課 国際協力マネージャー 榎本 宏
本イベントは,JICA青年海外協力隊経験者による体験談と,教育関係者による「持続可能な開発のための教育」をテーマとしたパネルトークという2部構成で行いました。
前半の体験談は本学OGで,青年海外協力隊としてアフリカのマラウイ共和国で理数科教師として現地の中高等学校で活動された,新江梨佳氏にお話しいただきました。
同国は水道普及率8%,電気普及率9%,平均寿命47歳という国である反面,そこで新氏が見たものはアフリカのステレオタイプとなっている「貧しさ・悲惨さ・苦しみ」ではなく,現地の人々の「笑顔・エネルギー・可能性」だったと言います。新氏は,普段の授業に加え,サイエンスクラブの設立,マラウイ共和国の科学コンテストへの参加,同僚教員の授業・研修のサポートを通し,生徒や子どもたちが可能性を伸ばせる機会を作ること,同僚の先生が力を生かせる場を作ることを目標に活動しました。「自分たちでできる!」と目覚めた生徒の中には,卒業後,自分の村で風力発電を作る人も出たそうです。
後半のパネルトークには,新氏に加え北広島市西部中学校の渡邉 圭先生をお招きし,「これからの教育」と「海外の経験をそこにどう生かすことができるか」についてお話しいただきました。
お2人がこれからの教育に必要なこととして共に言及されたのは「受け身からの脱却」と「周囲の人と積極的に関わっていく力」でした。そのための具体的な方法として,地域に目を向け,地域の課題を大人と共に考え行動できるような教育という提案がありました。
アンケートでは,「日本で過ごしていて,日本の常識は世界の常識だと思っていましたが,今回のお話で視野を広げることができました」「今の日本は何もなくても生きていける時代です。途上国は不便ですが,逆に生きる方法を考える人間になる気がしました」「本当の内なる力を引き出すにはどんな教育が必要なのか考えさせられます」などのコメントが寄せられ,これからの教育について考える機会を提供できたと感じました。
今回は講義形式で終わってしまいましたが,次回は参加者と自由に意見を交換できる参加型のイベントにできるように工夫を凝らしたいと思います。
 現地で行った実験を披露する新氏 |
 マラウイでの経験を伝える新氏 |
10月30日(木) 会場:学術交流会館講堂
北海道/防災・減災リレーシンポジウム―冬の防災・危機管理を考える―
主催:公共政策大学院/共催:一般社団法人国立大学協会,株式会社北海道新聞社/実施責任者:公共政策大学院 特任教授 高松 泰
10月30日(木)午後1時30分より,学術交流会館講堂にて「北海道/防災・減災リレーシンポジウム―冬の防災・危機管理を考える―」を行いました。このシンポジウムは,「防災・日本再生シンポジウム」行事の一環として国立大学協会の助成を得て企画したもので,北見工業大学(10月17日),室蘭工業大学(10月23日)での会議に続く,包括的な議論の場として開催しました。
シンポジウム前半では,理学研究院の谷岡勇市郎教授,工学研究院の岡田成幸教授,前気象庁長官の羽鳥光彦氏による基調講演がありました。北海道において注意すべき地震発生のメカニズムや,積雪寒冷な気候に配慮した住宅が防災の面でも優れた特性を持っていること,また近年の地球温暖化・異常気象の傾向を受け,気象庁が取り組んでいる防災気象情報発信の改善・活用等について,各分野最前線の専門的知見が報告されました。
後半は,農学研究院の南 哲行特任教授,北海道開発局の高橋公浩部長,北海道庁の加藤 聡危機管理監,札幌市役所の相原重則危機管理対策室長にも加わっていただき,パネルディスカッションを行いました。異常気象時における情報提供や避難勧告発令のあり方,「帰宅困難者対策」など行政面からの話題提供,それに基づくディスカッションに続き,会場からの発言も得て,地域住民の意識向上や北海道の防災教育に関する優れた取組みが紹介されました。
リレーシンポジウム全体では,基調講演8件,延べ時間10時間を超え,産業界・自治体関係者,一般市民の方々等,500人以上の方に参加いただくことができました。ご協力くださった関係諸機関の皆様にお礼を申し上げるとともに,参加者からいただいた意見や要望を参考に,今後も継続した取組みとできるよう努めていきます。
 パネルディスカッションにおける意見交換 |
 パネルディスカッション全景 |
11月1日(土) 会場:学術交流会館
サステナビリティウィーク北大・地球研合同ワークショップ
「地域や人びとに寄り添う研究の在り方とは?」
主催:工学研究院/共催:総合地球環境学研究所/実施責任者:工学研究院 教授 船水尚行
地球規模での環境問題については,いまだに具体的な解決に向けた活動は実行されているとは言い難い状況です。この背景には,研究と社会の乖離があるとされています。では,社会と科学の連携とは何でしょうか?この議論を深めることが今後の環境研究のあり方を決めるうえで極めて重要なカギと考えました。本ワークショップは,農学,水産学,工学,政治学,地域研究などの専門家が集い,私たちの研究と社会とがどのように連携できるのかについて,これまで進められてきている研究を基に意見交換を行いました。そして,「社会に寄り添う研究」とは何か,どうすれば研究と社会の乖離を防ぐことができるかについて意見交換を行いました。
ワークショップでは6件の発表を行い,その後,総合討論を約1時間30分にわたって行いました。これらの発表・討論から結論が出るようなテーマではありませんが,「人びとの暮らしを中心に据える」,「資源の利用者が守ろうとしないと自然は守れない」,「人々の目線による地道なフィールド調査」,「人々の価値の連鎖を中心にする」等の意見が出されました。
 発表の様子 |
 総合討論の様子 |
11月1日(土)・2日(日) 会場:人文・社会科学総合教育研究棟 W409室
第9回応用倫理国際会議
「安全,サステイナビリティ,人性の涵養〜気候変動に対する道徳義務〜」
主催:文学研究科応用倫理研究教育センター/実施責任者:文学研究科 准教授 眞嶋俊造
第9回応用倫理国際会議では,ニューヨーク大学のデール・ジェイミソン教授を含む3名の全体講演と50件の一般発表を行いました。応用倫理国際会議は2007年に始まり,以降毎年行っています。今回の会議のテーマは「安全,サステイナビリティ,人性の涵養」でした。
ジェイミソン教授は環境倫理における世界的な権威であり,サステイナビリティの倫理についての研究の第一人者です。ジェイミソン教授の講演は,“Moral Responsibility for Climate Change”と題し,気候変動に対する私たち市民の道徳義務を倫理学的に問うという内容でした。本講演は,気候変動の問題が私たちの倫理的な行動にかかっていることを指摘し,倫理的判断と倫理的行動をとる重要性を私たちに突きつける内容でした。講演は特に予備知識を必要としない平易な語り口で進められ,なぜ私たちが気候変動に対して道徳的義務を負うのかという理由がわかり易く説明されました。また,その責任というものが私たちに実際の行動を求めるということが説明されました。この点において,本講演はまさにサステナビリティ・ウィークの行事としてふさわしいものであったと考えられます。
次年度以降においても,サステイナビリティの倫理を応用倫理国際会議の主要なテーマのひとつとしていく基盤を作ることができました。
 全体講演の様子 |
 一般発表での質疑応答 |
11月2日(日) 会場:人文・社会科学総合教育研究棟 W409室
特別講演会「サステイナビリティの倫理」
主催:文学研究科応用倫理研究教育センター/実施責任者:文学研究科 准教授 眞嶋俊造
本講演会は,ニューヨーク大学教授のデール・ジェイミソン教授をお招きし,サステイナビリティの倫理についてお話しいただきました。講演の題目は,“Sustainability and Beyond”でした。講演の趣旨は以下のとおりです。
私たちの多くはサステイナビリティが大事であり,重要であるということを信じています。しかし,私たちは「なぜ,どうしてサステイナビリティが大事であり,重要なのか?」という問いについて考える機会はあまりないのではないでしょうか。「なぜ,どうしてサステイナビリティが大事であり,重要であるか」を考えることがまずもって重要です。そして,「サステイナビリティが大事であり,重要であることの理由」を理解して初めて,私たちはサステイナビリティを実現していくことの価値,またサステイナブルな社会を構築していくことの重要性について現実の重みをもって認識することができます。そして,そのような認識は,サステイナビリティの実現,サステイナブルな社会の構築に向けて実践していく動機づけとなるのです。勿論,サステイナビリティには問題が伴わないわけではありません。その一例として,世代間の正義と世代内の正義との間のトレードオフを挙げることができます。つまり,希少資源の分配を私たち現在世代の人々の間の地球規模での正義(グローバルな正義)と,私たち現在世代と私たちの子孫にあたる未来世代との間の正義(世代間の正義)はトレードオフ関係にあるということです。とはいえ,まずはサステイナビリティの道徳的重要性を理解し,さらに議論を発展させていくことに意義があるのです。
本講演会は「第9回応用倫理国際会議」のポスト・カンファレンス・セミナーという位置づけでもあり,有機的に連動した行事として行うことができました。次年度以降においても,サステイナビリティの倫理の講演会を継続的に開催していきたいと考えています。
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ジェイミソン教授の講演 |
11月3日(月・祝) 会場:保健科学研究院
保健科学研究院公開講座「ようこそ!ヘルスサイエンスの世界へ」
主催:保健科学研究院/実施責任者:保健科学研究院 教授 浅賀忠義
保健科学研究院の公開講座は「ようこそ!ヘルスサイエンスの世界へ」というテーマのもと,3名の講師が専門分野の紹介を行い,63名の参加がありました。
第1限目は「環境と健康−次世代への影響を考える」と題して,齋藤 健教授が環境変化の健康影響,特に世代を超えた影響について解説しました。
第2限目は「“光”を通して今見えること,そして将来出来ること 〜医療へ,そして日常へ〜」と題して,尾崎倫孝教授が現代のストレス社会を強くしなやかに生きるために,体に優しい“光”が私達の生活にどのように貢献できるかについて解説しました。
第3限目は「パーキンソン病のリハビリテーションについて」と題して,橋光彦准教授がパーキンソン病のリハビリテーションについて,最新の知見も含め平易に解説し,デモンストレーションを行いました。
講演者はサステナビリティ・ウィーク2014のテーマである「持続可能な開発のための教育」をキーワードとして,保健科学の視点から詳しくかつわかりやすく解説しました。
参加者からは概ね好評を博し,様々な質問があり,3人の各講師はわかりやすく丁寧に答えていました。
今後も毎年,その時の時代を反映するようなテーマを設定して,公開講座を開催していく予定です。
 挨拶をする伊達広行研究院長 |
 尾崎教授の話に聞き入る参加者 |
11月4日(火) 会場:学術交流会館小講堂
RECCA北海道 北海道における気候変動とその適応ワークショップ
主催:工学研究院/後援:公益社団法人日本気象学会北海道支部/実施責任者:工学研究院 准教授 山田朋人
平成22年度から文部科学省気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)の一環で「北海道を対象とする総合的ダウンスケール手法の開発と適用(通称RECCA北海道,代表:工学研究院 山田朋人)」を実施しています。気候変動への対策は温室効果ガスの排出量の抑制を目的とする緩和策と気候変動下における持続可能な発展を目的とする適応策に大別されます。緩和策は国もしくは地球規模で取り組むものであるのに対して,適応策は各地域の特徴や状況を考慮しなければなりません。欧米各国では適応策の更新を数年に1度の頻度で義務づけるようになりつつありますが,我が国では環境省が中心となり来年度の閣議決定を目指している段階です。本ワークショップは,今後,北海道が取るべき適応策について,近年の豪雨災害や気候変動が農業分野に与える影響を併せて議論することを目的に開催しました。
RECCA北海道の研究成果として,複数の全球気候モデルと領域気象モデルによる世界の気温が2℃上昇した際の北海道の気温,降雨,積雪深等の特徴を紹介しました。その後,気候モデル,将来予測手法,さらにはRECCA北海道によって予測された将来データをウェブ上で公開する「近未来ビューワ」についての説明を行いました。
基調講演では,札幌管区気象台長の高野清治氏から本年9月に道央を襲った線状降水帯による豪雨の気象特性及び豪雨発生前後の各行政機関の取り組みを含めた内容のお話があり,室蘭工業大学大学院教授の中津川誠氏からは水文現象の変化が積雪地域に及ぼす影響について,水資源の観点から最新の研究成果をご紹介いただきました。北海道農業研究センター上席研究員の廣田知良氏からは気候変動が北海道の農業活動に与える影響の正負両面について主要品目ごとに興味深い研究成果をご説明いただきました。最後に以上の講演者とRECCA北海道の参画者である理学研究院の稲津 將准教授と地球環境科学研究院の佐藤友徳准教授を含めた6名によるパネルディスカッションが実施され,豪雨,豪雪,水資源,農業の観点から北海道が取り組むべき適応策について活発な議論が行われました。
本ワークショップの参加者は161人であり,大学関係者,学生,関係分野の実務者に加え,多くの一般市民の方々にもご参加いただきました。イベント終了後に実施したアンケートでは,「今後の北海道における気候や各分野の適応策を考えるのに役立った」との回答が多くみられました。
 パネルディスカッションの様子 |
 多くの参加者で埋まった会場 |
11月5日(水)〜7日(金) 会場:ラップランド大学(フィンランド)
協定校企画 フィンランド−日本 ジョイントシンポジウム
主催:ラップランド大学,オウル大学,北海道大学,札幌市立大学/実施責任者:国際本部国際支援課 課長 島竜一郎
11月5日(水)から7日(金)までの3日間の日程で,ラップランド大学(フィンランド)において,「フィンランド−日本 ジョイントシンポジウム−Innovation and Well-being through Multidisciplinary Dialogue−」を開催し,ラップランド大学,オウル大学,札幌市立大学,本学を中心に,約80名の参加がありました。
初日のオープニングセレモニーでは,ラップランド大学のマウリ・ユラコトラ学長の歓迎挨拶の後,オウル大学のラウリ・ラユネン学長,及び本学の上田一郎理事・副学長から,来賓挨拶がありました。
その後,観光・ヘルスケア・都市デザイン等,テーマごとに5つの分科会に分かれて,2日間の議論や事例発表等が行われました。今回すべての分科会で「サービス・デザイン形式」という統一した手法が取り入れられました。サービス・デザイン形式とは,サービス・デザイン※1の過程で開発された,多様なステークホルダーから意見を効率的に聴取するための対話方式です。サービス・デザインが,ホスト校であるラップランド大学の研究を特徴づける学際融合分野のひとつであることから,分科会運営の共通手法として採用されました。参加者は,慣れない手法に最初は戸惑いつつも,普段はあまり接点がない異分野の研究者とも交流する等,良い感触を得ている様子でした。
最終日には,各参加大学からの基調講演が行われました。続いて行われたパネルディスカッションでも,参加者同士の活発な意見交換が進められ,本シンポジウムは成功裡に終了することができました。
今後は,本シンポジウムをきっかけとして,本学とフィンランドの協定大学,及び北極圏大学※2との間での研究者交流,共同研究の実施等,さらなる連携強化が期待されています。なお,来年の本シンポジウムは札幌で開催する予定です。
※1 サービス・デザイン(Service Design)
サービス・デザインとは,あるサービスが供給者から需要者へ最も効果的に提供される仕組みの設計のこと。情報ネットワークシステムの構築,行政サービスの向上等にも応用されている。
※2 北極圏大学(University of the Arctic)
カナダ,デンマーク,フィンランド,アイスランド,ノルウェー,ロシア,スウェーデン,及びアメリカ(Arctic8)を中心とした北方圏における課題(環境問題,先住民,サステナビリティなど)にかかる教育・研究を推進するための教育機関ネットワーク。
 シンポジウム関係者と意見交換する 上田理事・副学長(右から3人目) |
 基調講演の様子 |
 パネルディスカッションの様子 |
11月6日(木) 会場:学術交流会館
経済学研究科 REBN シンポジウム
−北海道における新時代の「ものづくり」:IT×農業の試み−
主催:経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター/共催:一般社団法人日本生産管理学会・北海道東北支部/
実施責任者:経済学研究科 教授 平本健太
11月6日(木),学術交流会館大講堂において,経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター,一般社団法人日本生産管理学会・北海道東北支部共催,札幌コワーキングサポーターズ後援によるシンポジウム「北海道における新時代のものづくり:IT×農業の試み」を開催しました。
本シンポジウムでは,慶應義塾大学の田中浩也准教授,株式会社イーラボ・エクスペリエンスの島村 博氏,株式会社SUSUBOX・FabLabつくばの相部範之氏の3名を講師にお迎えし,それぞれご専門の立場から講演いただきました。具体的には,「ウェブ社会からファブ社会へ」「Fab社会の到来:食と農業のかしこい暮らし方」「FabLabつくばの歩み」に関する,刺激的で有意義な内容でした。
シンポジウムの後半では,経済学研究科の平本健太教授をコーディネーターとするパネルディスカッションが行われました。パネルセッションでは,フロアのオーディエンスから提出された多くの質問に基づいて,講師の先生方とのディスカッションを行い,問題点や解決策を探りました。メイカームーブメントやファブ社会において,われわれの価値観がどのように変わっていくのか,ファブ社会が到来しつつある現状において,北海道はいかなるポジションでものづくりに関わっていけるのか,ITとのコラボレーションによる北海道農業や酪農業についての可能性はいかなるものかなど,新しい時代のものづくりを巡り,熱心で濃密な議論が展開されました。
 会場の様子 |
 パネルディスカッションの様子 |
11月8日(土) 会場:フロンティア応用科学研究棟(インターネット配信)
GiFT2014 -Global Issues Forum for Tomorrow- 実施報告
主催:北海道大学/実施責任者:国際本部長 上田一郎
サステナビリティ・ウィークの主要行事として毎年開催しているインターネット・フォーラム「GiFT」は今年で4回目を迎えました。今年は「教育」をテーマに5人の本学教職員がプレゼンターとして参加し,これからの教育の在り方,研究の在り方,大学の在り方などについて最新の研究成果と共に課題解決の展望を各自12分間,英語で講演しました。山口佳三総長によるプレゼンテーションでは,スペシャル対談として鈴木 章名誉教授にも登壇いただきました。
インターネットを駆使した海外広報を進化させようと毎年新たなチャレンジを重ねているGiFTは今年,世界各地に住む大学生,高校生,高校教師とインターネットでつながり,本学のプレゼンテーションをパブリック・ビューイング(同時視聴)し,感想をFacebookでやり取りする双方向フォーラムを実現させました。2時間のGiFT番組への参加者は253人で,インドネシア,マレーシア,英国,スウェーデン,カナダ,アメリカ,ナイジェリアなど世界各国から大学生・高校生問わず参加があり,交わされたメッセージは約200件に及びました。今年は新たなマーケティング戦術として,GiFT番組視聴者の中から3名を本学に招く「北大体験ツアー2015」応募キャンペーンを展開し,世界中の学生の興味を集めることができました。
配信以降,YouTube及びUstreamで閲覧可能となったアーカイブ動画は,公開から1か月間弱で日本はもちろんのこと世界各地から1800回以上(昨年のおよそ2倍)視聴され,その数は毎日増えています。
来年度もサステナビリティ・ウィークの主要行事として開催する予定です。
◆ GiFT ウェブサイト
http://sustain.oia.hokudai.ac.jp/gift/
講演者と講演タイトル(意訳)
北海道大学 総長 山口佳三
“Towards the Resolution of Global Issues”(世界の課題解決に向けて)
理学研究院 教授 高橋幸弘
“Micro-satellite Provides Solutions on Earth”(マイクロ人工衛星が地球を救う)
高等教育推進機構 特任准教授 大津珠子
“Science Visionaries Change Our Future”(科学技術コミュニケーションが未来を変える)
工学研究院 准教授 渡邊直子
“Learning in the Field: Environmental Radiation in Fukushima”
(福島環境放射能の現場での学び)
サステイナブルキャンパス推進本部 コーディネーター 池上真紀
“Sustainable Campus as a Research Field”
(研究分野としてのサステイナブル・キャンパス)
司会:留学生センター 特任准教授 Emma Cook
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 山口総長(右)と鈴木名誉教授の対談の様子 |
GiFTとは,Global Issues Forum for Tomorrowの頭文字を取ったものです。これは,世界規模の課題を解決し持続可能な社会を実現しようと励む人々が集う機会を,インターネッ ト上に提供するイベントです。同時に,これから専門分野を決めて本格的に研究を開始しようとする高校生や学士課程の学生に対し,最新の研究成果を紹介し,世界の課題の解決のために研究を共にしようと呼びかける機会でもあります。 |
11月8日(土) 会場:学術交流会館
安全でサステナブルな社会の土台をつくるには?―社会基盤学からの多様な視点―
主催:工学部/実施責任者:工学研究院 助教 Michael HENRY
本シンポジウムは,自然環境の変化がもたらす影響を予測すると共に,安全,安心,健康に人々が暮らせる社会の基盤を構築するための学問である社会基盤学が,持続可能な社会の構築にどのように貢献しているかを紹介するイベントとして開催したものです。社会の持続可能な発展について長く研究している堺 孝司教授による基調講演後,工学部社会基盤学コース,国土政策学コースにおいてコンクリート工学,地盤工学,海岸工学,水文学,交通計画学を専門として研究を行う若手教員7名が10分間ずつ各専門分野と社会の持続可能性との関わりについて講演を行いました。参加者の6割は大学生や大学院生であり,メモを取りながら熱心に話を聞いていました。
イベント終了後に実施したアンケートでは「色々な分野からの視点がわかりやすく解説されており面白かった」,「社会基盤学を学ぶ上で環境,経済,社会との関わりを考える重要性がわかった」等の意見が多く見られ,参加者は概ね満足していたようです。一方「もっと大々的に告知を行った方がいい」との意見も多く寄せられ,来年のイベント時にはPR方法を工夫するべきとの課題も明らかになりました。
我々を取り巻く様々な自然現象のメカニズムを解明し,持続可能な社会の構築に貢献する社会基盤学の取り組みを,広く一般に知ってもらうために,来年以降も本イベントを継続していきたいと思います。
 講演の様子 |
 講演者の集合写真 |
11月8日(土) 会場:北海道立道民活動センター(かでる2・7)
北大×JICA連携企画 国際協力人材セミナー in 北海道
主催:JICA 国際協力人材部 PARTNER事務局/共催:国際本部/実施責任者:国際本部国際連携課 国際協力マネージャー 榎本 宏
11月8日(土),国際協力の現場で活躍を目指す人材に対する関連情報の提供と国際協力活動への参加促進を目的とした「国際協力人材セミナー in 北海道」を実施しました。137名の参加があり,うち約65名が学生でした。
参加者全員に対して実施したアンケートは115名から回収し,112名より「非常に満足」または「満足」の回答を得るなど,非常に満足度の高いセミナーを提供することができたと考えています。
参加者からは,「国際協力に関する様々な立場の方からお話を伺うことができ,多角的に具体的に自身のキャリアプランを考える良い情報をたくさんいただけました」「普段関わることがない方たちの話を聴くことができて貴重な時間を過ごすことができました。今後も定期的に実施していただきたいです」「国際協力人材セミナーは将来国際機関で働きたいと思っている私にとってすごく良い機会となりました。ただ,このようなセミナーが東京に集中し,札幌で聞く機会が少ないのは残念です。今後,数を増やすことはできないのでしょうか」などのコメントが寄せられました。
当日は,開場と同時に多数の人が詰めかけ,またセミナー終了後も講師の方に熱心に質問する参加者が多数見受けられるなど,参加者の熱意に触れることができました。
プログラム及び各セッションの概要
(1) 「国際協力のキャリアを目指す方へ」と題した国際協力業界の動向説明及び国際協力の仕事全般の解説
(2) JICA人材の紹介(公募案件)及び北海道在住の公募型企画調査員の体験談
(3) 「ODAを活用した中小企業海外展開支援事業」についての解説と事例紹介及び日東建設株式会社から
ナイジェリアにおける取り組み事業紹介
(4) 「NGOで働くということ」をテーマに,一般財団法人北海道国際交流センター所属のNGO相談員の講演
(5) 「開発コンサルタント業界の概要」,「開発コンサルタントに求められる人材像」をテーマに,それぞれ一般社
団法人海外コンサルティング企業協会(ECFA)及び同協会の会員企業であるアイ・シーネット株式会社の講
演
(6) 外務省国際機関人事センターより「国際公務員になるために」,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)より
「国際機関の仕事について」の講演
 講演の様子 |
11月9日(日) 会場:学術交流会館
第5回学生企画 サステナブル・キャンパス・コンテスト−サステナブルな明日への架け橋−
主催:SCSD(The Student Council for Sustainable Development in Hokkaido University)/
共催:サステイナブルキャンパス推進本部/実施責任者:理学部2年 小山田伸明
本コンテストは今年度で5回目となり,本学で活動するあるぼら,北大畑くらぶ,雑紙削減プロジェクトの3組の学生が大学をサステナブルにするプロジェクトを提案しました。今年度初の取り組みとして,本イベントの1か月ほど前に中間報告会を実施し,SCSDや教職員,提案者と共に議論し,案のブラッシュアップを行いました。そのため,本イベントでは非常に質の高い提案がなされました。
今回は接戦の末,畑くらぶが最優秀賞を受賞し,内容は全学の学生が任意で使えるような農場を作ろうというものでした。全学農場を通して学生が体験によって,普段おろそかにしがちな“食”について真剣に考える機会を作ることができるというメリットに加え,その際のアシストや情報発信の方法までをカバーして考えられていたことが評価されました。このプロジェクトはSCSDと共に畑くらぶが実行して行く予定で,状況経過はFacebookなどで発信していきます。
今後もサステナブル・キャンパス・コンテストを学生の意見を大学へ届ける窓口としての機能を充実させていくために,今後も知名度の向上や応募しやすい環境整備などを進めていきます。
 北大畑くらぶ(最優秀賞)の発表 |
 授賞時風景 |
11月17日(月) 会場:学術交流会館
国際シンポジウム 環境と健康と科学コミュニケーション
主催:環境健康科学研究教育センター/共催:保健科学研究院,医学研究科,地球環境科学研究院/
実施責任者:環境健康科学研究教育センター 特任教授 岸 玲子
「環境と健康と科学コミュニケーション」のテーマのもと,近年の環境変化が人々,特に子どもの健康に与える影響を題材とした講演を行い,持続可能な社会に向けた,教育や科学コミュニケーションにおける課題について,諸外国の事例を交えて参加者の知識を深め,ディスカッションを実施する機会としました。
最初に三上直之准教授(高等教育推進機構)が,「科学コミュニケーションの話を始める前に〜これだけは押さえておきたい三つの視座〜」と題して,リスク社会に生きる我々に今なぜコミュニケーションが必要か,コミュニケーションの目的の多様性,またコミュニケーションへのステークホルダーの参加が欠かせない点に関して講演しました。次いで韓国仁荷大学校のJonghan Leem教授が,「子ども・社会がより健康になるための,韓国におけるリスクコミュニケーション戦略」と題して,韓国における子どもの健康に関する問題とリスクコミュニケーションについて講演しました。同じく子どもの研究に関して,伊藤佐知子特任助教(環境健康科学研究教育センター)が,「北海道に住む人々のよりよい生活環境を目指して〜北海道スタディの成果から〜」と題して,環境化学物質曝露による影響に関する「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ」の紹介と,研究結果に関する地域社会とのコミュニケーションのあり方について講演しました。Sharon J. B. Hanley特任助教(医学研究科)は,「科学コミュニケーションの技術:子宮頸癌ワクチンの受容が,英国・豪州・日本で異なるのは何故か」と題して,子宮頸癌ワクチン接種導入に当たり,イギリス政府が行った啓発・教育・リスクコミュニケーションの事例を紹介しました。最後に大島寿美子教授(北星学園大学)より,「受け手からみた健康研究と成果発信〜市民やジャーナリズムの視点から」と題して,科学研究者による情報発信を受け手である市民やメディアが理解を共有する重要性や手法について講演がありました。
続くパネルディスカッションでは,参加者からの質問や意見を交え,司会の山内太郎教授(保健科学研究院),田中俊逸教授(地球環境科学研究院)及び講演者による討論を行いました。研究成果発信においては,Leem教授による発表にみられた@科学的証拠(エビデンス)の確立,A正直・率直な情報の開示,B政策決定の協力者としての国民参加の必要,C国民の不安の共有,といった4つの科学コミュニケーション戦略に見習う点が多くありました。最後に,北海道スタディ研究の代表者でもある岸 玲子副センター長から,これまでも参加者とのコミュニケーションを継続的に行ってきたこと,今後,北海道の地域のデータで世界に貢献していくことの重要性に関する発言があり閉会となりました。
参加者のアンケートからは,「新たな視点を得た」「海外の事情を知ることができて有意義だった」「研究者が市民とのコミュニケーションに取り組んでいることを知ることができた」といったコメントが得られ,今後も引き続き科学コミュニケーションに関する討論の場を提供する意義を再認識するシンポジウムとなりました。
 三上准教授による講演 |
 パネルディスカッションの様子 |
11月18日(火) 会場:工学部 A101会議室
北大アフリカ研究会シンポ アフリカで活躍する北大の研究者たちU
〜アフリカに展開する北大研究ネットワーク〜
主催:北海道大学アフリカ研究会/共催:日本アフリカ学会北海道支部/実施責任者:工学研究院 特任助教 牛島 健
目覚ましい発展を遂げようとしているアフリカ。しかし,ひとたび現地に入れば,貧困,政治,環境をはじめ様々な問題が山積し,しかもそれらは複雑に絡まりあっていることがわかります。アフリカのサステイナビリティを議論するには,分野横断的な学際的アプローチが求められます。本学では平成24年4月,アフリカ研究に関わっている研究者が集まり,北大アフリカ研究会(HURNAC)を立ち上げました。様々な専門をもつ研究者がネットワークを作り,一筋縄ではいかないアフリカの課題に取り組もうとしています。本年度からは,日本アフリカ学会北海道支部との連携が実現し,本行事も共催となっています。
昨年に引き続き,第2回となる本イベントでは,観光学高等研究センター,経済学研究科,保健科学研究院,獣医学研究科に属するメンバーが,アフリカでの取り組みをそれぞれの視点から紹介しました。専門的な話題・内容でしたが,どの講演者もわかりやすい言葉で伝える努力をしていたので,参加者には十分に理解していただけたようです。参加者は合計25名で,そのうち学生7名を含む15名が学内関係者で,他は市民の方(7名)や行政関係者(1名)でした。こじんまりとした雰囲気の中,通常のHURNAC会合時のように突っ込んだ議論が一般参加者と展開できたことは,価値があると感じました。
アンケート(有効回答21件)では,「あなたの今後の活動に有益となりそうですか?」の問いに対し,10名が「大変そう思う」,11名が「そう思う」と回答していて,参加者の満足度は高かったものと思われます。また,昨年度のアンケートで「アフリカ出身者(留学生など)による発表も聞くことができるとよい」という趣旨の意見を複数いただいていましたが,今回,経済学研究科に所属するコンゴ人学生の発表が実現したことも大きな成果でした。
今後とも,こうしたイベントを通じてHURNACの取り組みを大学内外にアピールできるよう努めていきます。
 西山徳明教授(観光学高等研究センター) による発表の様子 |