北海道大学総長 山口 佳三

年頭の挨拶

北海道大学総長 山口 佳三(やまぐち けいぞう)

 新年あけましておめでとうございます。
 平成27年の年頭にあたり,北海道大学の教職員,学生・大学院生の皆さんに,新年のご挨拶を申し上げます。

 私達は,現在,来年4月より始まる第3期中期目標・中期計画期間に向けて,その準備に注力しています。この1年間を振り返りますと,安倍政権の下,第3期に向けて,国立大学法人を巡る情勢は,「国立大学改革プラン」を踏まえ,大学ガバナンス,運営費交付金のあるべき姿等について活発な議論があり,それが現在もなお続いています。こうした中,この1年は,本学にとりましても,第3期に向けての体制固めの年でありました。
 実際,本学の昨年1年間を振り返りますと,3月には,私の総長就任1年を締めくくって,各部局からもご意見を頂いて,本学の中長期にわたる計画として,札幌農学校からの創基150周年となります2026年に向けた「北海道大学近未来戦略150」を策定しました。そうして,本学の4つの基本理念を踏まえ,「世界の課題解決に貢献する北海道大学へ」向けて,大学改革を大胆かつ着実に進める12年間の改革戦略を示しました。
 さらに,この戦略を後押しするものとして,昨年9月には,文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援(SGU)」事業トップ型13校の1校として,本学の「Hokkaidoユニバーサルキャンパス・イニシアチブ」構想が採択されました。このトップ型事業では,単なる大学の国際化に留まらず,大学力そのものの強化が求められています。また,10月には,文部科学省「大学の世界展開力強化事業」に,ロシアとの大学間交流形成を目指す,本学の「極東・北極圏の持続可能な環境・文化・開発を牽引する専門家育成プログラム」が採択されました。SGU事業と相まって,この展開力事業によって,本学の国際化の方向性と強みを築いていきたいと考えています。
 このSGU事業の期間は10年であり,立案申請の時から,「近未来戦略150」の具体的戦略と位置づけて構想してきました。この事業の骨格を成すのは,1-4-4改革プランと呼ばれる,全体を統括する1つのガバナンス改革プラン,基本となる4つの教育改革プラン,そしてそれに横串を刺す4つのシステム改革プランです。すでに,その内容については,ホームページ等を通じて,皆さんにも紹介済みですが,4つの教育改革プランとは,NITOBE教育システムによる先進的教育の実施,異分野連携による「国際大学院」群の新設,ラーニング・サテライトの機動的開設,サマー・インスティテュートの展開です。また,4つのシステム改革プランは,全学的な教学マネジメント体制の整備,人事制度の国際化,国際対応力の高度化と国際広報力の強化です。そして,ガバナンス強化プランとして,この事業を統括する「HUCI統括室」を,すでに研究大学強化促進事業のために昨年2月に設置済みの,総長直轄組織である「大学力強化推進本部」に置き,この推進本部を通じて,本学の研究及び国際化の推進を図る体制を構築しました。さらに,総長直下に「総合IR室」を設置し,学内の教育・研究をはじめ様々な情報収集・分析を行い,それを集約し活用する準備を始めています。この活動が,私の総長就任時に抱負として述べましたように,教員の研究時間の確保の一助となればと願っています。
 平成27年度には,これらの活動をより機動的に推進するために,既存の創成研究機構,高等教育推進機構に加えて,4月には産学連携地域協働機構を発足させ,年内には国際連携機構を創設して4機構体制を構築し,本学の研究,教育,社会貢献及び国際化の更なる飛躍を図りたいと考えています。
 研究推進の面では,3月末には,北キャンパスエリアに建設中でありました「フード&メディカルイノベーション国際拠点」が完成し,その中でセンター・オブ・イノベーション(COI)事業等を活用した「食と健康」に関する大型産学官協働研究開発が推進されます。これによって,産業創出を目標とする産学官協働が開始されます。また,これを機会に,産学連携地域協働機構を4月に立ち上げ,創成研究機構から分離し,前者においては産業創出産学共同研究を,後者においては先端融合研究の推進を図る体制を構築します。この新機構を地域との協働を進めるための拠点として,人文社会系を中心に道内のいろいろな地域において行われている社会貢献活動の情報等を集約して,より効果的な活動を推進し,同時に,北海道立総合研究機構(道総研)や北海道との間の人事交流を視野に入れた連携強化を図ります。
 また,新たな本学の強みを創出する観点から,4月には,創成研究機構内に「北極域研究センター」を設置し,国内外における北極域研究の推進拠点となることを目指します。同センターは,国立極地研究所と海洋研究開発機構(JAMSTEC)との協働体制を構築することとしています。
 ここで,昨年1年間を振り返って,改めて国立大学法人を取り巻く社会状況に目を転じますと,昨年当初に中央教育審議会において審議まとめの出された「大学のガバナンス改革の推進について」に基づいて,6月には学校教育法と国立大学法人法の改正がなされ,教授会の役割,経営協議会の構成,学長選考会議の役割等が見直されました。これについては,本年4月の施行に向けて,本学としても,学内規程の改定を行っているところです。また,第3期に向けた運営費交付金のあるべき姿については,現在,産業競争力会議の新陳代謝・イノベーションWGと文部科学省に設置された有識者会議で議論されており,本年6月にはその骨格が定まる予定です。その結論は,国立大学法人の第3期中期目標・中期計画期間の活動を規定するものとなるでしょう。
 さらに,中央教育審議会では,昨年12月に,教育再生実行会議の提言を踏まえた,大学入試改革の新たな方向性として,「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について」と題する答申を発出しています。極めて斬新な理想を掲げた答申となっていますが,これに対して,拙速な批判を繰り広げるのではなく,建設的で具体的な提案を示していく責務が国立大学側にあると感じています。これに対しては,皆さんの建設的な議論を頂戴したいと思います。
 来る4月からの,平成27年度は,第2期中期目標期間の認証評価を受ける年度であり,第3期の中期目標・中期計画を立案する年でもあります。私が述べました抱負に対しまして,皆さんの良き批判・良き知恵を頂いて,これに当たりたいと考えます。ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 最後になりましたが,平成27年が北海道大学の将来に向けての,さらなる踏み出しの年となることを祈念しますとともに,教職員ならびに学生・大学院生の皆さんにとって実り多い年であることを心より願い,新年の挨拶とさせていただきます。


新年交礼会の様子

 1月5日(月),山口総長の年頭の挨拶とともに,新年交礼会が始まりました。会場となった百年記念会館大会議室には,役員,部局長等が大勢集まりました。

乾杯の発声をする三上 隆理事・副学長

乾杯の発声をする三上 隆理事・副学長

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