低温科学研究所では,2月2日(火)〜5日(金)の4日間,大雪山旭岳で「雪の生成過程の解明」を目的とした観察実験を実施しました。
世界で初めて人工雪を作成し,当研究所の設立に大きく貢献した中谷宇吉郎博士も,日本で最も綺麗な雪が降ると言われる大雪山系で雪の観察実験を行っています。中谷博士は人工雪の作成をとおして,雪の結晶の形は雪が作られる上空の湿度と温度によって左右されることを実証し,その関係を「雪は天から送られた手紙である」という有名な言葉で表しました。今回の実験は中谷博士の研究を始まりとし,当研究所で連綿と続けられている,氷の結晶成長メカニズム解明に関する研究の一端です。
今回,旭岳に観察実験用のかまくらを作成し,その中に普段実験室で用いている最新の分析機器(レーザー干渉計や偏光ハイスピードカメラ)を持ち込み,18年ぶりに本格的な雪の観察を実施しました。これまで雪の結晶の生成過程の観察は行っていましたが,今回初めて生成の逆過程である雪の結晶の蒸発の様子をリアルタイムで観察することで,より雪の生成過程の理解を深めることを目的として実施しました。
今回の実験によって,蒸発による氷結晶の樹枝が短くなる,結晶の厚みが減る過程や速度を初めて同時に測定することができました。さらなる結晶成長メカニズムの解明が期待されます。
今回の実験は各報道機関からの関心も高く,実験の様子や研究者インタビュー等が報道されました。