来賓祝辞

学士学位記授与式

北海道大学校友会エルム会長 石山  喬

 ただ今ご紹介いただきました北海道大学校友会エルム会長の石山です。

 皆さんご卒業おめでとうございます。今年も男性の黒い服装の中に女性の色とりどりの綺麗な装いが,野山に桜が咲き誇っているような景色で,私も心が浮き立ち,皆さんと一緒に大きな声で「おめでとう」と叫びたくなります。
 今年は2,468名の同窓生を新しく迎えることができ大変嬉しく思いますし,また15名の新渡戸カレッジ修了者がでたことも嬉しく思います。本当によく頑張ってくれました。

 このところ世界の情勢は,イギリスのEU離脱,アメリカのトランプ大統領の就任等騒がしい状況が続いておりますが,日本は安倍政権が非常に安定した体制を保ち,社会が平静を保ち,景気も緩やかに上昇を続けているように思います。今年の企業研究会にも昨年を超すような企業の参加をいただいており,就職戦線は売り手市場が続いています。今年就職される方達はずいぶん楽に企業を選ぶことができたのではないかと思いますし,大学院に進まれる方達も大震災のようなことが起きない限り良い状況は続いていくと思います。

 私はちょうど50年前に卒業し,日本軽金属株式会社というアルミ関連企業に入社し,現在も働いています。その頃はアルミの需要が大変伸びていて,各企業とも工場増設の真最中でした。当社でも苫小牧工場の建設が始まり,寒さは大丈夫だろうということで,その建設工事に配属されました。アルミ製錬の工場建屋は500mもあるような大きな工場で,お昼の食堂に行くのも工学部からクラーク会館の食堂まで食べに行くような工場です。このような社運を賭けた工場も数年後に起きたオイルショックであっという間に赤字に転落し,アルミ製錬は成り立たなくなってしまいました。そして日本からは全てのアルミ製錬は姿を消していきました。その後当社は海外からアルミ素材を輸入し,その加工製品に大転換してきました。日本の新幹線ボディーは殆どがアルミでできていてその70%以上を当社が供給していますが,そのアルミ原料はドバイから輸入しています。そしてジャパンアズNO.1と言われたバブル景気で日本中が踊りまくった時代と,その後の長いデフレ時代が続き,そこから抜け出そうになってきた時にリーマンショックと大震災が発生し,また日本の経済は停滞してしまいました。このところ,第2次安倍政権のアベノミクスにより緩やかに良い状況へと上昇を続けています。このような経済環境の中で会社が潰れそうになった時代もありました。その都度,その時自分が率いているチームを何とか前向きな気持ちで引っ張っていこうと考えてやってきて,リーマンショックの時には会社全体が自分のチームになっていました。
 今考えますと,この苦しい時を乗り越えてきた自分の行動理念は北大の4つの建学の理念そのものでした。この4つの理念を私はどのように考えて行動してきたかを皆さんにお話ししようと思います。

フロンティア精神について
 現状を打破しようと考えたら,今まで経験のない世界,人のやったことのない世界へ挑戦する勇気が必要です。人の性格を見ていると,攻めタイプと守りタイプがあり,圧倒的に守りタイプの人が多いと思います。しかし新しい世界を切り開くのは,リスクを背負いながら攻めていく人でなければできません。
 また組織の中で今までと違うことを行おうとすると,抵抗勢力が沢山出てきます。これが守りタイプの人を多くする大きな原因ですが,これも乗り越え,勇気と情熱と執念を持って新しい世界へチャレンジするのがフロンティア精神だと思います。

国際性の涵養について
 短期留学の皆さんのレポートを読むと,最初はおっかなびっくりで入っていくが次第に慣れてくる様子がうかがえます。言語ができるに越したことはありませんが,何処に行ってもどんな色をしていても人間は人間だということにすぐ気づくと思います。そこにいる人や文化を大切にすることのできる人は必ず受け入れてもらえます。特に食べ物です。変な食べ物でも現地の人が好んで食べるものをおいしいと言って食べると,すぐに仲間に入れてくれます。胃袋の強さも強力な武器です。良い人間関係ができればいろいろなことがスムーズに進みます。この現地の人を大切にし,現地の文化を大切にする,を基本として,私の会社は中国,東南アジア,フランス,アメリカ,メキシコへと展開しています。

全人教育について
 国際性にも通じると思いますが,人を大切にできる心を養うことだと思います。すべての物事は一人ででき上がるものはありません。全てチームででき上がっています。今までチームスポーツやサークル活動を行ってきた人はよくわかると思うのですが,どのチームにもエースやビースやシースがいます。しかしエースだけではゲームになりません。各自の持ち場もちばで,それぞれの機能を発揮していただき,チームとしてのパフォーマンスを最高のものにしていくことのできるリーダー,あるいは自分の立場を理解し,チームの要として行動できる人作りが目的だと思います。

実学の重視について
 私達の製造業では商品設計や製造設備の設計では学問として学んだことが沢山使えますが,実際に物を作っていく場合には,原材料の安定性や人の関与などが加わってきます。またロボットを使う場合でも環境条件の変化や劣化により精度がずれてくることがあります。高価な分析機器やセンサーを使ったり,ビデオカメラで撮影したりしても発見できない不具合もあり,設備の前に1週間くらい座り込んで五感を働かせて変化を感じ取ることもあります。このような場合には,豊富な現場経験から来る気づきが大切です。実際,新しい理論もミスをした実験や現場における不思議な現象から発展することがよくあると言われています。観察力とその分析力のある人は製造現場の先生です。

 これらの考え方が私の事業経営において大きな指針となっておりました。

 あと一つこれから社会に出る皆さんへ心に止めておいていただきたいことがあります。
 それはコンプライアンスと言われるものです。企業の社会的責任と訳せば良いと思います。最近色々な大企業の重大なコンプライアンス違反が報告されています。これらは殆どが性能とか業績を水増ししたことによって発生した不祥事です。そして組織を守るために行ったような言い訳が出てきますが,本当は自分の地位や体面を守りたいがためと思われます。
 この不祥事にトップの指示が絡んでいると大変な状況になります。トップの指示に,社内でこれはおかしいという声を上げるのは大変勇気が必要な上,声を上げてもつぶされてしまうことが往々にあるからです。現在ほとんどの企業でホットラインと称して外部の弁護士に直接セクハラ,パワハラ,コンプライアンス違反等を訴えられる制度を設けていますが,上層部が絡んだコンプライアンス違反は表に出てくるまでに時間がかかってしまいます。しかし早く正さないと企業は存続の危機に陥ってしまいます。皆さんも社会に出られたら偉そうに権威を振りかざす上司がいるかどうかよく観察してください。下っ端の管理職であればそれほど問題はありませんが,このような人が上の方にいますと危ないです。
 この中には将来社長になる人もたくさんいると思いますが,トランプさんそれは間違いですよと誰でも何時でも言える組織を作ることが大切です。そして不祥事への対応として,社長であれば私は知らなかったと言ってはいけないのです。トップはその組織の歴史を背負うものです。たとえ自分が知らなくても現在のトップがその責任を負わなければ,組織として責任を負う人はいなくなってしまいます。またトップは人に仕事を任せた時は「この人が最適だと考えてこの仕事を任せた,その結果間違いが起こってもそれは全て自分の責任です」と答えるような覚悟を持っている上司に必ず人は着いてきます。

 皆さんご存じのように,昨年6月に連合同窓会は校友会組織に改組し,現役学生,大学職員,父母を含む北大関係者全てが加入できるものとなりました。また,校友会メンバーは学部や地域同窓会に登録することにより,全国及び海外にある同窓会に参加していただけます。校友会では学生の就職支援及び先輩からのアドバイス,就職後の転職支援,寄附金集め,インターンシップ,海外インターンシップ,新渡戸カレッジフェローの推薦,ホームカミングデーへの協賛等多くの活動を行っていきます。地域同窓会では各種イベントが行われますが,若い人達に幹事を務めていただくようにしています。私達年寄りはその人たちの指示によって人集めや寄附金を出す役割です。校友会の活動は全てボランティア活動ですので,全ての活動が参加する皆さんの自由意思です。この人達を組織し活動を進めるのは幹事にとって大変な努力が必要です。これに比べれば会社の組織を動かすのは全く簡単なものです。社会のリーダーになる大変良い経験ができると思い,このような仕組みで活動をしていただいています。皆さんもぜひ校友会に参加して,色々な世界で活躍されている先輩達と交流を深めてください。会社の中では簡単に話ができないようなトップの方達ともここで会い,都ぞ弥生を一緒に歌えば,近所のおじさんのような付き合いができること請け合いです。

 皆さんが大きな夢を抱き,日本,世界のために活躍していただくことを祈念して,私の挨拶を終わらせていただきます。

前のページへ 目次へ 次のページへ