![]() 【第3回】 厚岸臨海実験所
施設の設計は、初代所長となる小熊捍と営繕課長萩原惇正の協議で進められた。「イタリア貴族の別荘を真似た」という逸話があるように、当初はルネサンス式のものが計画された。様式建築を得意とした萩原の提案か、あるいは渡欧から帰朝まもない小熊の嗜好か。ところが小熊はある日、雑誌でオランダのモダンな海浜建築を目にする。萩原と相談の上そのデザインが採用された。こうして「機能主義を表徴せる超近世式」の外観と、アールデコの内部意匠を持つ、この実験所が完成した。 平面はピストルのような形をしているが、決して奇を衒ったわけではなく、一般公開を目的とした展示室およびアクアリューム(水槽室)の機能的な動線処理の結果である。加えて水槽室の採光と照明にも工夫が凝らされる。高窓からの光線を壁に反射して水槽の真上から光線を当て、かつ内部の人工照明は水槽のガラス面に直接当たらない。見学者は明るい水槽の中をガラス面の反射を気にすることなく楽しめる。 一般公開は一九九六年八月に停止したが、大学院生の研究施設としてはもとより、理学部生物学科の臨海実習や、全国の大学および研究機関の研修施設として利用されている。 (北大工学研究科 池上重康)
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