発酵食堂カモシカ 代表 発酵食の魅力を世界に広めたい
京都嵐山で発酵食を提供するカフェ・レストラン「発酵食堂カモシカ」を立ち上げ、その代表を務める関恵さん。「日本は発酵の先進国。国内だけでなく海外にも発酵の魅力を発信していきたい」と語る。北大での学生生活や就職などのライフイベントを経て、どうしてその思いに至ったのか伺った。 ―京都ご出身ですね。どのような幼少期でしたか? 京都府北部の田舎で自然に囲まれて育ちました。少し上の兄の後について走り回って遊んでいましたね。実家は薬局を営んでいて、祖父はお寺の住職でした。そういった環境が、その後のヘルスケアや起業への興味、私の死生観、そして今の仕事にもつながっていると思います。
将来、ヘルスケアの分野で起業したいと思っていたので、経済学部を選びました。正直、大学生活は期待外れの部分もあり、モヤモヤした思いを抱えていましたが、米山喜久治先生の現代社会の授業を受けたことが大きな転機になりました。「偶然×偶然=縁」と黒板に何もいわずに書かれたのをみて、この方なら私の抱えている思いをわかってくれると思い、すぐに研究室を訪ねました。米山先生と話す中で、落胆していた気持ちが希望に変わりました。米山先生がいなければ今の私はいません。人生の師に出会えたことが、北大生活での最大の人生の実りでした。
米山先生の尽力でイェーテボリ大学と学生交流協定が結ばれ、その第一号として留学しました。日本人はほとんどいなくて言葉には苦労しましたが、とても楽しかったですね。福祉現場のフィールドワークを行いましたが、日本より圧倒的に進んでいてショックを受けました。帰国後、札幌の福祉現場も調査して比較し、卒論を書きました。
卒業後は東京の医療系コンサル会社などでしばらく経験を積みましたが、2011年の東日本大震災が次なる転機になりました。原発の状況を見て、もう今までの延長線上ではいけないんだと思いました。ゼロに立ち戻って本質的なことを仕事にしたいと思った時、私にとってそれは「発酵」でした。医療・ヘルスケアの「根底」は予防であり、予防の根底は「食」にあると思ったからです。そして和食の根底には発酵があります。趣味で味噌をつくった時、その奥深さに感動したことも一つのきっかけでした。
「命は命で元気になる。〜発酵食を台所に取り戻す♪〜」をコンセプトに、食堂の運営や発酵食品の製造開発・販売を主に行っています。発酵は微生物の働きです。自分自身も出産を通じて感じた命の力、可能性を、発酵食を通じて伝えたいと思っています。そのためにはまず美味しいと思ってもらう必要があり、発酵食堂はその入り口です。今後は発酵の価値を海外にも発信していきたいです。スウェーデンは福祉の先進国でしたが、発酵の分野では日本が先進国ですから。
若いことはそれ自体が素晴らしく、可能性に満ちていますので、困難があっても決して諦めないで欲しいです。今日の自分が未来の自分をつくると思って、自分に偽りなく過ごして欲しい。未来の自分に対して胸を張れるような学生生活を送ってください。
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