小島 颯太 北海道に新しい樽産業を創り出す
森林循環と経済性が両立する林業。農学部3年の小島颯太さんは、樽づくりを通してそんな理想の林業を実現したいという。洋酒樽の製造や販売・メンテナンスを行うミチタル株式会社を設立し、ビジョンを共有する仲間とともに目指す未来へまい進する小島さんに、活動への思いやこれからの目標を伺った。 ―小島さんは京都ご出身と伺いました。 はい、僕は生まれも育ちも京都です。わりと都会で育ちましたが、高校生のときにコロナ禍で思うように外出できなくなり、外の空気に触れたくて山岳部で登山を始めました。すっかり山にはまり、北大で森林研究会に入ったところ、今度は林業に魅了されました。
特に製材作業が好きです。丸太から板を切り出すときに毎回違う木目が現れたり、一度切られた木が木材として息を吹き返す瞬間が面白いです。一方で、そうした魅力にあふれ、素晴らしい価値を生み出している林業が経済的に評価されていない事を知り、悔しさも覚えました。
林業が持つジレンマを感じていた1年生の夏、樽づくりの相方である ところが、構想はできたものの、なかなか次の段階へ進めない状況が続きました。そんな中で応募した北大テックガレージで、「樽をつくる『機械』をつくるのはどうか」とアドバイスをいただきました。それだ!と思い、技術に強い同級生に声をかけたところ、そこから輪が広がって人が集まり、技術開発で樽づくりをする方向へ一気に進み出しました。
着目したのは「焼く工程」です。木材は焼き加減で香りが変わり、それがお酒の風味に影響します。人の手でつくるとまちまちになりがちなこの加減を機械で制御し、均一の製品をつくる技術を目指しました。何度も試作を重ね、2024年12月には試作樽を使ってウイスキーの樽詰めを行うことができました。
相方の水嶼は言語化が非常に上手で、彼が思い描く林業の姿を的確に言葉で表現してくれます。ただ、少し抽象度が高いので、僕がよりわかりやすく具体化して仲間に伝えています。「神は細部に宿る」と言いますが、チーム全員が共通のビジョンを持つことが大切だと思っています。
木材に高い付加価値をつけて、経済性との両立が難しい今の林業に風穴を開けたいです。上手くいっている事例をまずは一つ実現し、そこから変えていきたい。北海道は、出る杭が打たれにくい環境だと感じています。周りの人を大切に、謙虚な姿勢を忘れず、出る杭をどんどん伸ばしていきたいですね。そのときに大切なのは、学生だけで閉じこもらず、大人と積極的に関わる事です。研究でも課外活動でも、ぜひ広い世界の大人と出会いに行ってみてください。
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