クリエイター 自分の道を歩み、動物と人生を描く
北大生命科学院での研究や海外経験を経て、現在はイラストレーター兼中小企業診断士として活躍している岩間翠さん。動物や絵をこよなく愛し、科学的視点と豊かな感性でその魅力を伝えてきた。北大創基150周年記念特別企画の小説『北極星をえがく』の表紙イラストも手掛ける岩間さんに、これまでの歩みと現在の活動について伺った。 ―どのような幼少期をお過ごしでしたか? 長野県で生まれました。昔から生き物が大好きで、インコや文鳥を飼ったり、近所の川でドジョウやザリガニを捕まえたりしていました。絵を描くのも好きで、授業中にこっそりノートの隅っこに文鳥などを描いていました。高校時代は「シートン動物記」や「ソロモンの指環」などを読んで動物行動学に興味を持ち、北海道大学の理学部に進学しました。
研究室では、文鳥の求愛ダンスに関する研究をしていました。文鳥の月齢や性別によって、ダンスがどう変わるのかなどを観察しましたが、前例の少ないテーマで試行錯誤の日々でした。サークルは「釣り愛好会」に所属し、北海道内各地を巡って釣りを楽しみつつ、魚をモチーフに絵を描いていました。また、趣味で豚足や手羽先を骨格標本にするのも好きでした。研究のため鳥のはく製作りもしていましたが、動物の骨格には生物の進化やその個体が生きた歴史が刻まれていて、そこに興味がありました。
修士課程を修了後、IT企業を経て広告代理店に入社し、Webデザインを担当しました。その間も趣味で絵を描き、アートイベントで自作のポストカードや手ぬぐいなどを販売していました。転機は20代後半で、フィジーへ語学留学し、現地のおおらかな生活や、些細なことにも幸せを見出す価値観に触れました。その後カナダにも渡り、様々なアルバイトをしながらフリーランスの仕事もこなしました。こうした経験を経て、独立を決めました。
旭川を拠点に、Webマーケティングやホームページ制作のほか、中小企業診断士として事業者の方への経営コンサルティングをしています。動物を中心にイラスト制作もしていて、これまでに野鳥の専門誌や生き物系の一般書の挿絵、論文用のイラストなどを手掛けました。親しみやすさだけでなく、生物学的に正確なイラストが描けるので、大学で生物を専門に学んだことが生きていると思います。
北大の研究室で学生時代にお世話になった先生を通じてお声かけいただきましたが、まさか自分が北大150周年記念企画の小説に携わることになるとは、びっくりしました。小説の表紙は初めての挑戦で、面白そう、ぜひやってみたいと思いました。一作目は登場人物が北大の1年生なので、教養棟(高等教育推進機構の通称)とその周辺の風景を描きました。雪解け期の汚れた雪や、自転車、サークルの立て看板、窓に映りこむメインストリートの木々など、卒業生なら絵を見て懐かしい気持ちになってくれると思います。水彩で描きましたが、水彩画の透明感が小説の雰囲気に合っていると思います。
高校や予備校ではある程度レールが敷かれていたけれど、大学に入ると、自分で決めることが求められます。誰かのせいにせず、自分で道を選んでほしいなと思います。流されるなら、どこの川で流されるかくらいは選んだ方がいいんじゃないかな。北海道は自由度が高く、都会より人の目が少し優しい場所です。自分らしい生き方を見つけていってください。
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