こども本の森 札幌・北大
ー北大の森に生まれる、新しい“知の入口”
2026年夏、北海道大学の緑豊かなキャンパスに、小中学生向けの図書館「こども本の森
札幌・北大」が誕生した。 安藤氏が北大の森に託した夢
「北海道大学の中に、こどもたちのための図書館を作ったらどうですか」。 2022年、寳金清博総長が安藤氏の研究所を訪れた際、安藤氏から受けたこの提案がプロジェクトの出発点となった。 安藤氏は当時、全国3か所に「こども本の森」を寄贈していたが、北海道内はまだなく、「広大な自然とともに生きる土地にこそ、こどもが本と出会う場所が必要だ」と感じていたという。また、クラーク博士の「Boys, be ambitious.(青年よ、大志を抱け)」に象徴される、北大の挑戦を尊ぶ気風にも強く共感していた。 一方、寄贈を受けるにあたり、運営体制の整備と財源の確保が大きな課題となっていた。そうした中、札幌市が安藤氏の理念や「こども本の森」のコンセプトに強く共感し、運営への協力を決めた。これにより、大学・自治体・建築家が連携する、全国でも例のない取り組みが動き出した。 2023年夏、安藤氏は候補地選びのため札幌キャンパスを訪れ、南門近くの中央ローンに面した木立の一角を即決した。「自然と共に生きる図書館」を目指し、木々を極力残した曲線的なデザインが採用された。 森の中で「知」と出会う場所
「こども本の森 札幌・北大」は、「こどもに知をひらく」をコンセプトに、3つの方針を掲げる。
1つ目は、「本との出会いから、世界への好奇心と想像力・創造力を育む」。天井まで届く本棚には、「北海道で生きる」「自然とひと」など14テーマに沿って1万5000冊が並ぶ。あいうえお順ではなくテーマ別に絵本や解説書などが混在し、思いがけない本との出会いを促す工夫が随所に施されている。 2つ目は、「多種多様な知や人とつながり、学びを深める」。大学構内の立地を生かし、研究者や学生が自らの研究テーマを紹介する「学びのプログラム」を展開。今年度は、建設場所で発掘された土器から北大エリアの歴史を探る企画や、雪をテーマにした体験型プログラムなど、北大の「知」に触れる機会を設ける。 3つ目は、「魅力ある空間や豊かな自然の中で、読書に没入する」。図書の貸し出しは行わないが、本はキャンパス内への持ち出しが自由。木陰で読書したり、植物や虫の観察をしたりと、「自然」と読書がつながる体験ができる。また館内は、曲線を描く本棚の並びをたどると、本の森に迷い込んだような感覚になる。丸く囲われた読書スペースに入ると、木の洞(うろ)にそっと隠れたような安心感の中で本と向き合える。 館長の紺野宏子氏は「総合博物館まで本を持って行き、恐竜の骨格や標本と見比べるのもOK。”本の森”で遊ぶ気持ちで来館してほしいです」と語る。
自然と本が育てる、北海道の未来
名誉館長には漫画家・文筆家・画家のヤマザキマリ氏が就任した。幼少期を北海道で過ごし、北大でイタリア語の講師を務めた経験もあるヤマザキ氏は、就任の挨拶で「私のこども時代を支えてくれたのは、大自然と図書館でした。図書館はこどもの心に栄養を与え、想像力を育てる場所です」と語り、こどもたちに本の魅力を伝えていく決意を示した。 企画段階から携わった北大の長谷川康弘副学長は、「いつか『こども本の森がきっかけで北大を目指しました』という子が現れたらうれしいです」と期待を寄せる。 北大150周年の節目に誕生した“知の森”は、大学と地域をつなぎながら、次の世代の知を育てていく。
こども本の森 札幌・北大
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