1.授業の目的・内容
「経営管理T」は,経営管理における基礎的な考え方を習得することを目的としている。具体的には,リーダーシップ,モチベーション等の「組織のマネジメント」に関連する概念について学ぶことになる。
2.授業実施上の取組・工夫
授業は板書形式で行う。講義の冒頭では,各回で取り上げる概念に関連する仮想事例を資料として配付している。そこでは企業ではなく,部活動・アルバイトといった学生にとって身近な事例を用いるように心がけている。そして,その事例を基にした「問い」を提示し,その問いについて学生に意見を求める。おおよそ30分程度問題について議論を行った後,概念の詳細な説明,学問的な背景・意義についての講義を行う。最後に講義のポイントについて整理し,各回講義の総括とする。
また,ある回の講義では,大量生産時代の代表的映画である「モダンタイムス」を鑑賞し,当時の時代背景や,テーラー主義の問題点等について,レポートを学生に提出してもらっている。このときは講義室を暗くして,映画館の雰囲気を味わってもらう。この試みをはじめたころは,暗くしてしまうと寝てしまう学生がいるかもしれないと心配していたが,全くの杞憂であった。学生はいつもの講義よりも生き生きとした目で,映画を食い入るように見つめている。終盤のシーンでは大爆笑すら起こる。チャップリンの偉大さを思い知ると同時に,軽い嫉妬のような感覚も味わうことになる。
3.今後の課題
板書形式で行うためか,私の日本語能力の問題か,授業評価アンケートの自由回答欄には,誤字・脱字に関する指摘が非常に多い。ただ,「字が小さく見にくかった」という意見がないことは救いである。また,企業の事例ではなく,大学生にとって身近な仮想事例を用いることに関しても賛否両論である。理解をしやすくするために,部活動・アルバイト等の事例を用いているが,企業の事例を用いて,わかりやすく教えることも必要であろう。また,「先生がなれなれしい」という指摘もよく受ける。私としては,学生にとって親しみやすい先生を目指しているのだが,「先生のざっくばらんさが負担に感じる」,「言葉遣いが良くない」等の指摘を受けている。
蛇足かもしれないが,毎年講義アンケートを見る度に,「成績評価が「優」であった学生は,私の講義にどのような評価を下したのか」を想像してしまう。もちろんデータを取ることが難しいことは承知しているが,「教員の成績評価」と「学生の授業評価」の相関分析は,授業改善の貴重なデータになると考えている。
4.むすびにかえて
昨年,大講義室で学生と一緒に4年生の卒論報告を聞く機会があった。60分間,固定された椅子に座ってプレゼンテーションをただひたすら聞く苦痛は想像を超えるものであった。そもそも黙って話を聞いていることが苦手な私であるが,それを割り引いても,90分間,堅い椅子に座って教員の講義を聞く忍耐力は教える側の想像以上であろうと感じた。周りの学生は60分間おとなしく聞いていたので,「よくじっとして聞いていられるね」と私が尋ねたら,「先生,私たちは毎日この教室でずっと座っているのですよ,60分ぐらいたいしたことないですよ」と学生に返された。
良い思い出しか残っていない学生時代の講義であるが,一度,朝から晩まで大講義室に座ってみる必要があるのかもしれない。