4.理系部局

○一般教育演習  情報科学研究科・教授・三田村好矩

1. 授業の目的・内容

授業の内容・目標は次の通りである。臓器機能が重度に損なわれた場合の治療には,臓器置換や臓器機能補助が必要となる。このため,臓器移植や人工臓器植え込みが行われている。臓器移植は提供臓器の絶対的不足,人工臓器は不完全な機能などの問題がある。このため最近は,組織工学や再生医療,異種移植などの研究が行われている。一方,人工臓器もマイクロマシンを利用した新しい試みが始まっている。そこで本授業では臓器置換に対してどのようなアプローチが行われているかを,医学,生物学,工学および倫理などの広い視野から学ぶ。

この授業を受講すると,循環器系,代謝系,運動系の臓器を対象に,人工臓器工学,組織工学,再生医療から,臓器の機能置換を目標に,どのようなアプローチ法がとられているか,およびその課題が何かを理解できる。

2. 授業実施上の取組・工夫

動機付け:科学技術の現況をはじめに伝える

1年生を対象に1学期に講義している。新入生の勉学意欲は高く,また専門科目に対する興味も大きい。しかし,入学直後は専門科目の講義はきわめて少なく,これがせっかくの勉学意欲を削ぐ原因にもなっている。また,数学,物理などの自然科学や人文科学,語学などの講義が,後の専門科目とどう関係するかを理解していない学生が多い。本授業の内容は医学に関連しているが,その目標は医学的内容を習得するものではない。受講する学生は,文系,理系,医歯薬系と多岐にわたっており,これらの学生に臓器置換の最新の情報を提供し,その技術的,医学的,社会的問題がそれぞれの学生の専門分野にどのように関わるかを考えさせることを主眼とした。

授業内容を理解させるための工夫:現物に触れさせる,ビデオプログラムの活用

実際に臨床に使用されている人工臓器を学生に触れてもらい理解を促進した。また,移植,人工臓器,再生医療を一般向けに紹介するビデオプログラムを数多く(5回)授業に使用した。

学生の授業参加の促進:学生による発表会を行う(2回)

20名程度の学生を3つのグループに分け,各グループに大きなテーマ(臓器置換の方法,臓器別など)を与えた。各グループ内で学生同士でそのテーマに対するサブテーマを決め,2週間かけて調査し,その結果を全員発表した。これを授業の中間と最後の2回行った。最後には全員がコンピュータを用いた発表を行い,発表技術も向上した。

成績評価:多様な項目による評価

以下の項目に基づいて評価した。(1)授業の最後に提示したレポート課題に対するレポートの内容。(2)調査発表の内容と態度。(3)発表会での討論への取組。なお,2004年度の成績分布は,優:83%,良:17%であった。

3. アンケート結果に対する意見・今後の対応

学生の授業に対する意見の中に,「実際の人工臓器を手にすることができよくわかった」の意見が複数あった。実物に触れさせることが,予想以上に有効であることがわかった。また,別の意見として,「もう少しわかりやすく説明してほしかった」があった。専門的内容をわかりやすく説明することの難しさを痛感した。


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