4.理系部局

○蔬菜園芸学  農学研究科・教授・大澤 勝次

1. 授業の目的・内容

本講義は農学部の3年次前期に開講している。2年次後期に園芸学概論を受講した学生を中心に,各論として蔬菜(野菜)園芸学を伝えるためである。野菜たちは日々の食卓を彩り,私達の暮らしに欠かせない存在であるが,身近すぎて顧みられることがほとんどない。しかし,今の野菜が利用されるまでには,その起源と来歴の奥深いストーリーがあり,先人の努力の結果として今があることを伝えるのが目的である。

授業の内容は,(1)本講義を受講する以上,野菜の名前と顔(姿形のイメージ)が一致できるようにする,(2)受講生の出身地の郷土野菜について関心が高まるようにする,(3)私のライフワークである野菜の品種改良やバイオテクノロジーへの正しい判断力がつくようにする,などである。本講義を受講した学生は,野菜の分類や生殖生理に基づいた野菜学に精通し,健康的に暮らすことに関心が深まるよう心がけた。

2. 授業実施上の取組み・工夫等

農林水産省での33年間の試験場生活を経て,2000年4月に母校の教壇に立つことになったので,大学の授業については手探り状態だった。あるのは私自身の学生時代の,何人かの先生に感じたワクワクする授業の思い出だけだった。自分にそのような力があるとは思えなかったが,長年,農水省の試験場で品種改良の技術開発に携わり,沢山の経験や失敗を重ねてきたので,それを伝えることなら出来ると考えた。そして,(1)「自分の見てきたこと、体験してきたこと」を柱に蔬菜園芸学を展開する。そのため,(2)多種多様な野菜を可能な限り実物を示すか,カラー写真で示す。講義の前日には野菜売り場で教材の郷土野菜を探したこともある。また,(3)毎回,白紙(Q&A紙)を使って質問への回答を書かせるとともに,学生からの疑問や質問も受け付け,次回の講義時に必ず解答した。これを「キャッチボール授業」と名づけ,この5年間一貫して実践してきた。

今回,学生の授業アンケートで高い評価を受けたことを素直に喜びたいと思う。北大農学部の学生達は学ぶ意欲に溢れている。きっかけさえつかめれば,彼らは自らどんどん学び,成長する。しかし,一方的で,咀嚼できないような内容や分量であると,彼らの意欲はショートしてしまう。学問の奥の深さは,難しい世界をわからせる面とともに,やさしいと思っていた世界が,実に奥深いものであったと気付かせる面も重要と考える。本講義は,主として後者の面を担うものと認識して授業を展開した。

講義を始めると一週間があっという間に過ぎていく。今日(2005年7月28日)も本年最後の蔬菜園芸学の授業(7月29日;15回目)の準備をしている。前回実施した期末テストの採点と解答を文書にして渡し授業を進めるつもりである。この解答を一緒に読むことで,彼らは,自分の解答の間違いや不足部分を知るとともに,正解と思っていた問題についても,自分の理解が表面的だった部分を自覚する。そのようにして,学ぶことの奥深さに気付いた彼らは,自力でスパイラルな階段を上りはじめるのだと思う。


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