1. 授業の目的・内容
この授業は工学部土木工学科二年生を対象とした必修科目であり,工学部の他の学科にも共通する工学的基礎科目と位置づけられます。このため,学生には卒業までに確かな基礎力を培ってもらいたいと考えて授業に臨んでいます。取り扱う内容は,「構造物にはどのような力が作用するのか」「また,それをどのように評価するのか」を考えるための「基礎的知識の習得と理解」が中心になっています。
2. 授業実施上の取組・工夫
授業のおおまかな進め方は,パワーポイントで作成した授業用教材にしたがって講義するとともに,式の展開や応用問題の紹介時には,板書を併用するように進めています。また,毎回の講義終了時には15分程度のクイズを出題し,学生の出席状況の把握と理解度の確認をするようにしています。同様の工夫をされている先生方も多いものと思いますが,私が感じている利点は次のようなものです。
パワーポイントによるプレゼンテーションと板書の効用
最近では,かなり多くの先生方がパワーポイントによるプレゼンテーションを行っておられることと思います。私の場合も特別なことはしていませんが,全15回分の講義内容をパワーポイント化し,毎年少しづつ改善するようにしています。その最大の利点は,一度作ってしまえばその後改良することはきわめて容易なことで,学生の理解度が増すような視覚的表現(たとえばアニメーションなど)が増えてきています。また,講義で取り上げるべきトピックやその展開などが毎回漏れなく盛り込まれることで,講義自体の質の向上にもつながっていると感じます。私の場合は目安として90分授業で約25-30枚程度のスライドを使いますが,学生からの質問への対応や付加的な説明を行うことで予定通り消化できなかった場合でも,次回の講義への連続性も確保できるなどの利点が挙げられます。
一方,パワーポイントだけによる講義は単調になりやすいようで,板書もやはり必要だと感じることも多くあります。このため,式の展開や応用問題を解く場合などはむしろ板書を心がけ,学生の思考手順に従った「考え方」を説明するようにしています。
講義終了時のクイズの実施
毎回の講義で用意するのは,A4サイズ1枚の簡単なクイズです。これは当研究室の三上教授が実践されていたのを真似たもので,私が米国の大学院の学生だった時も同様のクイズが毎回出されていたのを思い出して始めた次第です。クイズ自体は,講義終了後の15分程度で全員が解けるような簡単なもので,学生の出席状況の把握と授業の理解度を確認するために使っています。成績とは関係のないものですが,理解度が低いと思われるような場合は次回の講義時に補足説明を行ったり,解き方の解説を実施する,などの判断材料に使っています。これは学生との相互コミュニケーションのきっかけになる上,学生の理解度が高いと実感できたときは,講義を担当する者にとっても大いに励みとなります。
3. アンケート結果に対する意見・今後の対応
冒頭にも記したように,この科目は基礎科目のひとつであることから,十分な理解ができなければ当該専門領域のみならず,工学全般にわたる興味を失うことにさえなる,と考えています。今回のアンケートでは比較的高い評価となりましたが,その中でも「情熱が伝わる」という部分の評価が高かったことは,このような姿勢で臨んだ結果ではないかと嬉しく思っております。もちろん,学生の評価と本当の意味での講義の質が一致しているわけではなく,今後も試行錯誤を繰り返しながら「質」の向上に努めていきたいと考えています。