文系部局

○社会の認識 子どものこころと身体と障害
 教育学研究院 附属子ども発達臨床研究センター教授  田中 康雄

1.授業の目的・内容

「発達障害」があるといわれる子どもたちを対象に「障害」と「障害をもって生きる」ということはいかなることかをまず考えてみる。すると当然のように延長線上にある自分自身も,どのように生きてきたのか,これからどう生きていこうとするのかについて考えることになる。

「発達障害の子どもたち」という児童精神科医の著した医学的観点から書かれた書籍を,自らに引き寄せて批判的に読むなかで,改めて「発達障害」という世界について,皆で議論し続けた。

従来「支援が必要な子どもたち」と称される「発達障害のある子どもたち」とは,決して一方的に支援をされる側に居るのではなく,時に支援される側に,時に支援する側にいる。その意味で私たちとの連続線上にかれらが,あるいはかれらの連続線上に私たちが存在している,ということに気付いてもらえればというのが,密かな狙いである。

2.授業実行上の工夫

一人ひとりの学生は,ひじょうに深い考察をしていながら,皆の前での発表については,決して積極的にはならない。かといって教員の説明教示を聞くという受身的な学習では,上記の目的に主体的に近づくこともむずかしい。

より自由度を高め,相互に意見を交換しあえるように,5名からなるグループを7つ作った。かつ数回おきにメンバーをシャッフルし,それぞれの出会いの場を豊かにすることを目指した。緊張をほぐす意味で、お菓子などを準備し,サロン的な雰囲気も時々意図的に作りながら,見ず知らずの各学部の学生間の間柄を,できるだけ親密にとりまとめた。

こうした工夫は,毎回収集する学生のアンケートを元に,参考になる意見は次回すぐに取り入れるなど,相互協力体制で授業を創り出していった。

3.その他

いただいた学生の評価は,やや過大評価すぎるように思われる。

上記のような形態のため,親密さや学生参加の促しに奏功したのはある意味当然の結果である。反省点は,自由記述にあるような「教員の意見を聞きたかった、思っていることをもっと聞きたかった」ということで,学生の主体的参加に配慮しすぎて,教員が後退しすぎてしまったことである。

またこの授業は,素直なまなざしで「発達障害」を考え学ぶ学生の意見や疑問を聞くことで,凝り固まった医師でもある教員の「(医学的)常識」を打ち壊してくれるものでもあった。その意味で,教員がもっとも新鮮に参加し,学ばせていただく授業でもあった。

参加していただいた学生には,改めて感謝したい。


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