本科目は、医学部保健学科の看護学専攻、理学療法学専攻、作業療法学専攻の3年生を対象として「医療・保健領域で行われる地域調査の方法論を修得し、地域社会・住民の生活環境とライフスタイルと健康についてより深く理解する力を身につける」ことを目的としたものである。講義は参与観察フィールドワークの方法論の解説、講師が実際に取り組んできたフィールド調査の紹介、関連する映像教材の視聴、グループディスカッションとミニフィールドワーク実習を含む、バラエティに富んだものであった。
金曜日の5講目の選択授業という「三重苦」の中で、いかに受講生にとっておもしろく、ためになる講義、出席してよかったと思える講義を提供できるかが課題であった。
ただ座って一方的に話を聞く時間を減らし(30分)、講義内容を踏まえてグループ討論・発表。発表に対して他グループ、講師がコメントする時間(30分)、その回の講義で学んだこと、大切だとおもったことをグループで話し合って用紙に記入する時間(15分)といった参加型のメニューを組みんだ。さらにフィールド調査研究に関連する映像教材の視聴(15分、シリーズ化)を毎回盛り込み、受講生をあきさせない工夫をした。
専用ホームページ(パスワードで外部非公開)を作成し、講義を終えて講師の気づいた点、補足事項、受講生の質問への回答など講義時間内にはカバーできない事柄について、フォローした。ホームページでは講義資料のダウンロードを可能とし、欠席者が随時資料を入手できるようにした。
「教員の教えたいこと≠学生の知りたいこと」と認識し、受講生のニーズを探り、柔軟に対応することを心掛けた。1つのテキストに縛られずに複数のテキストを素材として利用し、オリジナルプリント教材を作成した。本科目は選択科目であり自由度が高く、教員と受講生双方が満足できる授業を構築し易かったといえる。
・旧来の教授法(プリント+板書)の併用
PC(「パワーポイント」)によるプレゼンテーション型講義が全盛である。その利点は多いものの、欠点も多い(例:進行ペースが速く自分の頭で考える時間が少ない、ビジュアルに頼って分かった気になるが記憶に残らない、目が疲れる、眠くなる…)。本科目では、冒頭に行う、前回の復習にのみパワーポイントを使い、メインの講義はプリントと板書を織り交ぜて行った。
・映像教材の活用
講義内容に関連する映像教材を毎回授業の後半で視聴した。講義に関連し、かつ興味深い映像教材を探すのに苦心した。また十分な時間が取れないため、毎回途中で終了した(15〜20分)。幸い毎回続きを楽しみにしていたという者が多く、映像教材の視聴は受講生に好評だった。
・グループディスカッション、発表、フィードバック
講義内容を踏まえてグループ内で自由に討論する時間を設け、その日の代表者(持ち回り)に発表してもらった。グループ討論中は教室内を巡回し、議論の輪にさりげなく入り、議論に入っていない学生に発言を促したり、雑談になりそうになったら話題を戻したりするなど、フレキシブルに介入した。少人数の選択授業のため可能であり、受講者数が多かったら難しかったかもしれない。
・ミニフィールドワーク実習
調査計画書の作成から調査の実施、プレゼンテーションまで4回分の時間を割いてミニ実習を行った。座学で学び、お互いに議論して深めた方法論を実際に自分たちの興味があるテーマで実行することで、無理なくスムーズに講義の総括ができた。
以上まとめると、本科目は少人数の選択科目であったため、目配りの利いた柔軟な対応を取ることができ、受講生のニーズをある程度満たす授業ができたと思われる。映像教材の活用、専用ホームページの作成などの工夫は手探りの試みであったが、幸い受講生に好評で、授業内容理解にも効果的であった。今後は、教育内容の自由度が少ない、専門必修科目においても魅力的な講義を目指して努力したい。