○北海道大学大学文書館公文書室における特定歴史公文書等の利用請求に対する利用決定に係る審査基準

平成28年9月29日

大学文書館運営委員会決定

公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号。以下「法」という。)に基づく特定歴史公文書等の利用の請求に対する利用決定に係る審査に当たっては、この基準に基づき適正な運用を図るものとする。なお、個々の案件に係る具体的な判断は、個別の審査の結果に基づき行うものとする。本基準は、随時、適切な見直しを行っていくものとする。

1.審査の基本方針

法第16条に基づく利用の請求(以下「利用請求」という。)に係る特定歴史公文書等に記録されている情報が利用制限情報に該当するかどうかの判断は、利用決定等を行う時点における状況を勘案して行う。

個人、法人等の権利利益や公共の利益を保護する必要性は、時の経過やそれに伴う社会情勢の変化に伴い、失われることもあり得ることから、審査において「時の経過を考慮する」(法第16条第2項)に当たっては、利用制限は原則として作成又は取得されてから30年を超えないものとする考え方を踏まえるもの(北海道大学大学文書館公文書室利用等規程第11条第3項)とし、時の経過を考慮してもなお利用制限すべき情報がある場合に必要最小限の制限を行うこととする。

2.法第16条第1項第2号の利用制限情報該当性の判断基準

(1) 個人に関する情報についての判断基準(法第16条第1項第2号イ〔独立行政法人等情報公開法第5条第1号〕)

① 特定の個人を識別することができる情報等について(独立行政法人等情報公開法第5条第1号本文)

ア 「個人に関する情報」とは、個人(死亡した者を含む。)の内心、身体、身分、地位、経歴その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報を含むものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格及び私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。

イ 特定の個人を識別することができる情報は、通常、特定の個人を識別させる部分(例えば、個人の氏名)とその他の部分(例えば、当該個人の行動の記録)とから成り立っており、その全体が一つの利用制限情報を構成するものである。

ウ 「その他の記述等」には、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)等が含まれる。氏名以外の記述等単独では特定の個人を識別することができない場合であっても、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより特定の個人を識別することができる場合は「特定の個人を識別することができる」に該当する。

エ 当該情報単独では特定の個人を識別することができないものであっても、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる情報には、独立行政法人等情報公開法第5条第1号の規定が適用される。照合の対象となる「他の情報」としては、公知の情報、図書館等の公共施設で一般に入手可能な情報など一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、当該個人の近親者、地域住民等であれば保有しているか又は入手可能であると通常考えられる情報も含む。他方、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないと考えられる情報については、一般的には、「他の情報」に含まれない。照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人に関する情報の性質、内容等に応じ、個別に判断する。

オ 厳密には特定の個人を識別することができる情報でない場合であっても、特定の集団に属する者に関する情報を公開すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合には、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から、個人識別性を認めるべき場合があり得ることに留意する。

カ 「公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」には、匿名の作文、無記名の個人の著作物等、個人の人格と密接に関連するもの及び公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものが含まれる。

② 法令の規定により又は慣行として公にされている情報等について(独立行政法人等情報公開法第5条第1号ただし書イ)

ア 「法令の規定」とは、何人に対しても等しく当該情報を公開させることを定めている規定に限られる。したがって、公開を求める者又は公開を求める理由によって公開を拒否する場合が定められている規定は含まれない。

イ 「慣行として」とは、公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。なお、作成又は取得から30年を経過した歴史公文書等については、一定の期間経過後に、個人の権利利益を害するおそれがあるかについて検討を行い、個人の権利利益を害するおそれがあると認められなくなった時点においては利用に供するものとする。(「一定の期間」の目安については、別添参考資料「30年を経過した特定歴史公文書等に記録されている個人情報について」を参照。)また、利用制限事由の該当性の判断に当たっては、法第18条第1項に定める手続も活用するものとする。

ウ 「公にされ」とは、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り、現に周知の事実であるかどうかは問わない。ただし、過去に公にされた情報については、時の経過により、利用決定等の時点では「公にされ」に当たらない場合があることに留意する。

エ 「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものを含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合であって、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がない場合等、当該情報の性質上通例公にされるものも含まれる。

③ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(独立行政法人等情報公開法第5条第1号ただし書ロ)について

個人に関する情報を公にすることにより害されるおそれがある当該個人の権利利益よりも、当該情報を公にすることにより人の生命、健康、生活又は財産を保護する必要性が上回ると認められる場合には、当該情報は公開する。現実に、人の生命、健康、生活又は財産に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護についても、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討を行うものとする。

④ 公務員等に関する情報の取扱い(独立行政法人等情報公開法第5条第1号ただし書ハ)について

ア 公務員等に関する情報も個人に関する情報に含まれるが、このうち、公務員等の職務遂行に係る情報については、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分については、個人に関する情報としては利用制限情報に当たらない。

なお、公務員等の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方等公務員等以外の個人に関する情報でもある場合には、各個人ごとに利用制限情報該当性を判断する。すなわち、当該公務員等にとっての利用制限情報該当性と他の個人にとっての利用制限情報該当性とを別個に検討し、そのいずれかに該当すれば、当該部分は利用制限とする。

イ 「公務員等」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、退職した者であっても、公務員等であった当時の情報については、当該規定は適用される。さらに、独立行政法人等及び地方独立行政法人の役員及び職員を含む。

ウ 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が、国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に係る情報等がこれに含まれる。

ただし、独立行政法人等情報公開法第5条第1号ただし書ハの規定は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報を対象とするものであるので、公務員等に関する情報であっても、役員及び職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は、「職務の遂行に係る情報」には含まれない。

エ 公務員の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員の氏名については、「各行政機関における公務員の氏名の取扱いについて」(平成17年8月3日情報公開に関する連絡会議申合せ)により、特段の支障の生じるおそれがある場合(①氏名を公にすることにより、法第16条第1項及び第2項に掲げる利用制限情報を公にすることとなるような場合、②氏名を公にすることにより、個人の権利利益を害することとなるような場合)を除き、公にするものとされている。このため、行政機関が公にするものとした職務遂行に係る公務員の氏名については、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当することに留意する。

なお、人事異動の官報への掲載その他行政機関又は独立行政法人等により職名と氏名とを公表する慣行がある場合、行政機関又は独立行政法人等により作成され、又は、行政機関又は独立行政法人等が公にする意思をもって(又は公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名とが掲載されている場合にも「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当する。

(2) 法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報(法第16条第1項第2号ロ〔独立行政法人等情報公開法第5条第2号〕)についての判断基準

① 法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報(独立行政法人等情報公開法第5条第2号本文)について

ア 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下、「法人等」という。)には、株式会社等の商法(明治32年法律第48号)上の会社、一般社団・財団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人、権利能力なき社団等も含まれる。ただし、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人は、本号の対象から除かれており、その事務又は事業に係る情報は、独立行政法人等情報公開法第5条第4号イからハまで若しくはトの規定に基づき判断する。

イ 「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織及び事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等と何らかの関連性を有する情報を意味する。なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、独立行政法人等情報公開法第5条第1号の利用制限情報に当たるかどうかも検討する必要がある。

ウ 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について利用制限情報該当性を判断する。

② 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(独立行政法人等情報公開法5条第2号ただし書)について

法人又は事業を営む個人の当該事業に関する情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合は、当該情報は独立行政法人等情報公開法5条第2号の利用制限情報に該当しない。現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得ることに留意する。

③ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ(独立行政法人等情報公開法第5条第2号イ)について

ア 「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切を指し、「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位をいう。

また、「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位が広く含まれる。

イ 権利、競争上の地位その他正当な利益を「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格、権利利益の内容及び性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要があることに留意する。

なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

④ いわゆる任意提供情報(独立行政法人等情報公開法第5条第2号ロ)について

ア 法人等又は事業を営む個人から公にしないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、利用制限情報とすることにより、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護するものである。

なお、独立行政法人等の情報収集能力の保護は、独立行政法人等情報公開法第5条第4号ハ等の規定によって判断する。

イ 「独立行政法人等の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」には、独立行政法人等の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、独立行政法人等の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から情報の提供を申し出た場合であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人から非公開の条件が提示され、独立行政法人等が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合は含まれる。

ウ 「独立行政法人等の要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、独立行政法人等の長が報告徴収権限を有する場合であっても、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。

エ 「公にしないとの条件」とは、情報の提供を受けた独立行政法人等が第三者に対して当該情報を提供しないとの条件を意味する。また、特定の業務上の目的以外の目的には使用しないとの条件も含まれる。

オ 「条件」については、独立行政法人等の側から公にしないとの条件で情報の提供を申し入れた場合も、法人等又は事業を営む個人の側から公にしないとの条件を付すことを申し出た場合も含まれるが、いずれの場合も双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法としては、黙示的なものも含まれる。

カ 「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているもの」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公にしていないことだけでは足りない。

キ 公にしないとの条件を付することの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の事情の変化も考慮する。公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公にされている場合には、本号には該当しない。

(3) 国の安全等に関する情報(法第16条第1項第2号ロ〔独立行政法人等情報公開法第5条第4号イ〕)についての判断基準

① 「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれていること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれていることなどが考えられる。

「国の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段の有効性を阻害され、国の安全が害されるおそれがあると考えられる場合を含む。)をいう。

② 「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」とは、「他国若しくは国際機関」(我が国が承認していない地域、政府機関その他これに準ずるもの(各国の中央銀行等)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織等(アジア太平洋経済協力会議、国際刑事警察機構等)の事務局等を含む。以下「他国等」という。)との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすおそれをいう。例えば、公にすることにより、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなるもの、他国等の意思に一方的に反することとなるもの、他国等に不当に不利益を与えることとなるもの等、我が国との関係に悪影響を及ぼすおそれがある情報が該当する。

③ 「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」とは、他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉において、我が国が望む交渉成果が得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下する等のおそれをいう。例えば、国際会議における対処方針等交渉(過去のものを含む。)に関する情報であって、公にすることにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関して我が国が採ろうとしている立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、交渉上の不利益を被るおそれがある情報が該当する。

(4) 公共の安全等に関する情報(法第16条第1項第2号ロ〔独立行政法人等情報公開法第5条第4号ロ〕)についての判断基準

① 「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。したがって、国民の防犯意識の啓発、防犯資機材の普及等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報は、含まれない。

犯罪の「鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止し、又は犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。

犯罪の「捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。

② 「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、本号に含まれる。

また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムへの不法な侵入又は破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報及び被疑者又は被告人の留置又は勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も、本号に含まれる。

一方、風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報については、独立行政法人等情報公開法第5条第4号ハの規定により判断する。

(5) 国の機関、独立行政法人等が行う事務又は事業に関する情報(法第16条第1項第2号ロ〔独立行政法人等情報公開法第5条第4号ハ又はト〕)についての判断基準

国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業は、公共の利益のために行われるものであり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報は、不開示情報に該当する。

① 「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(独立行政法人等情報公開法第5条第4号ハ)

ア 「監査」(主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べること。)、「検査」(法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べること。)、「取締り」(行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態を確保すること。)、「試験」(人の知識、能力等又は物の性能等を試すこと。)及び「租税の賦課若しくは徴収」(国又は地方公共団体が、公租公課を特定の人に割り当てて負担させること又は租税その他の収入を取ること)に係る事務は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがあるものである。

イ これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報、試験問題等のように、事前に公にすると、適正かつ公正な評価又は判断の前提となる事実の把握が困難となるもの、法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長し、又はこれらの行為を巧妙に行うことにより隠蔽をすることを容易にするおそれがあるものがあり、このような情報は、利用制限する。また、監査等の終了後であっても、例えば、違反事例等の詳細を公にすることにより、他に法規制を免れる方法を示唆することになるものは、本号に該当する。

② 「独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(独立行政法人等情報公開法第5条第4号ト)

独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第2条の適用を受ける企業をいう。)又は地方独立行政法人に係る事業については、企業経営という事業の性質上、その正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものは利用制限する。ただし、「企業経営上の正当な利益」の内容については、経営主体、事業の性格及び内容等に応じて判断する必要があり、その範囲は、独立行政法人等情報公開法第5条第2号の法人等に関する情報と比べて、より狭いものとなる場合があり得る。

3.法第16条第1項第4号の特定歴史公文書等の利用制限に関する判断基準

大学文書館公文書室が法人や個人から寄贈又は寄託を受ける場合には、寄贈者・寄託者の意向を最大限に尊重することとし、利用の制限についても特段の配慮を行うこととするが、本項に規定する「一定の期間」は、公にすると何らかの支障を生ずるおそれがある有期の期間をいい、公にしないことを無期限に約束するものではない。

4.法第16条第1項第5号の特定歴史公文書等の原本の利用制限に関する判断基準

「特定歴史公文書等の原本」とは受入れから、保存に必要な措置、目録の作成及び排架を経て、当該特定歴史公文書等を一般の利用に供することを開始した段階において記録されていた情報、材質、形態により原秩序を構成するものをいう。

利用請求に係る特定歴史公文書等について、法第16条第1項第5号に基づき原本の利用を制限する場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

(1) 「原本の破損若しくはその汚損を生ずるおそれがある場合」

水濡れ等による固着、虫損、酸性劣化、変色、退色その他の要因により、通常の利用に供した場合、当該特定歴史公文書等に記録されていた情報、材質、形態についてその原秩序の維持に支障が生じる可能性があるときは、原本の利用を制限することができる。

なお、合理的な費用及び時間で原本の修復を行うことが可能である場合は、利用の制限を行なわず、適切な期間をおいて利用を実施するものとする。

ただし、原本を通常の利用に供することにより、法令の規定による管理責務を遂行することに困難を生じる蓋然性が高いもの、例えば国の重要文化財に指定されているもの及びそれに準じるものについては、その原本の利用を制限するものとする。

(2) 「原本が現に使用されている場合」

利用請求に係る当該特定歴史公文書等の原本が、劣化防止など保存のための措置、代替物の作成、展示(他機関への貸出しを含む。)、他の利用請求者による利用等の合理的な理由により使用されている期間など、直ちに当該利用請求に応じることができない期間は、原本の利用を制限することができる。

5.部分公開に関する判断基準

利用請求に係る特定歴史公文書等について、法第16条第3項に基づき部分公開をすべき場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

(1) 「容易に区分して除くことができるとき」

① 当該特定歴史公文書等のどの部分に利用制限に係る情報が記載されているかという記載部分の区分けが困難な場合だけではなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も、部分公開を行わないことができる。

「区分」とは、利用制限に係る情報が記録されている部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、利用制限に係る情報が記録されている部分を、その内容が分からないように被覆、複写物の墨塗り等を行い、当該内容がわからないようにすることを意味する。

例えば、文章として記録されている内容そのものには利用制限に係る情報は含まれないが、特徴のある筆跡により特定の個人を識別することができる場合には、識別性のある部分を区分して除くことは困難である。また、録音されている発言内容自体には利用制限に係る情報が含まれていないとしても声により特定の個人を識別できる場合も同様である。

② 利用制限に係る情報が記録されている部分を除くことは、複写機で作成したその複写物に墨を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。しかし、特定歴史公文書等については、法第15条において、永久に保存することが求められており、その利用についても、当該文書の永久保存を確保する範囲内にとどまると考えられる。

このため、利用制限に係る部分を黒塗りするために原本を複写することを原則とすれば、特定歴史公文書等が重要文化財に当たる場合や劣化が進んでいる場合は、当該文書を破損させる危険性を防ぐため、本項の「容易」の判断に当たっては、個々の事案ごとに慎重に検討する必要がある。

また、録音、録画、磁気ディスクに記録されたデータベース等の電磁的記録について、利用制限に係る部分とそれ以外の部分の分離が既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができない場合」に該当する。

(2) 「当該部分を除いた部分を利用させなければならない。」

部分的に公開するに当たり、利用制限に係る部分を具体的にどのように除くかについては、大学文書館公文書室長が法の目的に沿って判断することとなる。すなわち、複写物を作成して利用制限に係る部分を黒く塗るか、ページ全体を被覆するかの方法の選択は、利用制限に係る情報を公開する結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。

(3) 「有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。」

① 「有意の情報が記録されていないと認められるとき」とは、説明責務が全うされるようにするとの観点から、利用制限に係る情報が記録されている部分を除いた残りの部分に記載されている情報の内容が、無意味な文字、数字等の羅列となる場合等公開しても意味がないと認められる場合を意味する。この「有意」性の判断に当たっては、同時に公開される他の情報があれば、これも併せて判断する。

② 「有意」性の判断は、利用請求者が知りたいと考える事柄との関連によって判断すべきものではなく、個々の請求者の意図によらず、客観的に決めるべきものである。

6.本人情報の取扱いについて

個人識別情報は利用制限情報に該当する(法第16条第1項第2号イ)が、当該情報の本人が利用請求をした場合については、その例外として、法第17条の規定に基づき取り扱うことになる。なお、仮に当該情報が「本人に係る個人識別情報」であることに加え、「本人以外の個人(第三者)に係る個人識別情報」でもある場合を含め、法第16条第1項各号に掲げられた場合にも該当する場合には、法第16条の規定により判断することとなる。

7.権利濫用に当たるか否かの判断基準

権利濫用に当たるか否かの判断は、利用請求の態様、利用請求に応じた場合の大学文書館公文書室の業務への支障及び国民一般の被る不利益等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断する。大学文書館公文書室の事務を混乱又は停滞させることを目的とする等利用請求権の本来の目的を著しく逸脱する利用請求は、権利の濫用に当たる。

(別添参考資料)

30年を経過した特定歴史公文書等に記録されている個人情報について

特定歴史公文書等に記録されている情報

一定の期間(目安)

該当する可能性のある情報の類型の例(参考)

個人情報であって、一定の期間は、当該情報を公にすることにより、当該個人の権利利益を害するおそれがあると認められるもの

50年

イ 学歴又は職歴

ロ 財産又は所得

ハ 採用、選考又は任免

ニ 勤務評定又は服務

ホ 学業成績又は処分

へ 人事記録

重要な個人情報であって、一定の期間は、当該情報を公にすることにより、当該個人の権利利益を害するおそれがあると認められるもの

80年

イ 国籍、人種又は民族

ロ 家族、親族又は婚姻

ハ 信仰

ニ 思想

ホ 伝染性の疾病、身体の障害その他の健康状態

へ 刑法等の犯罪歴(罰金以下の刑)

重要な個人情報であって、一定の期間は、当該情報を公にすることにより、当該個人又はその遺族の権利利益を害するおそれがあると認められるもの

110年を超える適切な年

イ 刑法等の犯罪歴(禁錮以上の刑)

ロ 重篤な遺伝性の疾病、精神の障害その他の健康状態

(備考)

1 「一定の期間」とは、個人の権利利益を害するおそれがあるかについて検討を行う期間の目安を参考として示したものである。本期間の起算日は、当該情報が記録されている歴史公文書等の作成又は取得の日に属する年度の翌年度の4月1日とする。

2 「該当する可能性のある情報の類型の例」とは、この表の左欄にいう「個人情報」又は「重要な個人情報」にそれぞれ該当する可能性のある一般的な情報の類型を例示したものであって、特定歴史公文書等に記録されている情報がこの表のいずれに該当するかについては、当該情報の具体的性質、当該情報が記録された当時の状況等を総合的に勘案して個別に判断するものとする。

3 「所得」には、個人の級号に関する情報を含む。

4 「処分」には、学生の除籍、休学、退学及び再入学等の情報を含む。

5 「刑法等の犯罪歴」には、犯罪の被害者の情報を含む。

6 「刑法等の犯罪歴(禁錮以上の刑)」の「一定の期間」は110年を目途とする。

7 「重篤な遺伝性の疾病、精神の障害その他の健康状態」についての判断に当たっては、疾病の程度、医療の状況及び疾病に対する社会の受け止め方等を考慮し、「一定の期間」は140年を目途とする。

北海道大学大学文書館公文書室における特定歴史公文書等の利用請求に対する利用決定に係る審査…

平成28年9月29日 大学文書館運営委員会決定

(平成28年9月29日施行)

体系情報
第15編 学内共同施設/第16章 大学文書館
沿革情報
平成28年9月29日 大学文書館運営委員会決定