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8月26日(日)、北海道大学学芸員リカレント教育プログラム 特論2 装飾するギャラリートークと舞台芸術「アートが紡ぐ古代の物語」が、今年開館30周年を迎える、札幌市こどもの劇場やまびこ座で開催されました。本学の学芸員リカレント教育プログラム、通称「學藝リカプロ」は、文化庁から助成を受けている事業で、3年間で企画展制作のスキルを学ぶ、ミュージアム学芸員のためのリカレント教育プログラムです。講義・特論・実習・実践を通して、最終的に、実際の展示制作・運営、および受講生が勤務するミュージアムで実現できる展示企画案の作成をプログラムの成果とします。今回の講義は公開イベントとして実施し、學藝リカプロの受講生だけでなく、本学の教員や職員、その関係者も参加しました。
(開館30周年を迎えた、札幌市こどもの劇場やまびこ座)
(30周年をお祝いする大きなパネルは、折り紙で作られています)
関靖直 理事・事務局長の挨拶の後、「OKHOTSK-終わりの楽園-」の上演がはじまりました。5世紀頃、サハリン(樺太)から北海道、オホーツク海沿岸に渡ってきて独自の文化を発展させたオホーツク文化人。「OKHOTSK-終わりの楽園-」は、その遺跡をモチーフとして、プラハ在住の人形劇師 沢則行さんが創作した物語です。『フィギュアアートシアター』と呼ばれる、「人形浄瑠璃三人遣い」、「砂絵」、「バロック音楽生演奏」、「演劇」などが融合された新しい総合芸術の世界に、114名の観客が引き込まれました。
(劇中で人形を操る沢則行さん。写真は、2017年9月に行われた、第15回創成シンポジウムの際の一部上映のもの )
上演後は、沢さん、アイヌ・先住民研究センター 教授 加藤博文さん、そして進行役の創成研究機構 特任助教 岡田真弓さんの3名がステージに上がり、沢さんの創作活動に加藤さんがどのように関わったのか、二人のコラボレーションによって生み出されたことなどについて語り合いました。
(アイヌ・先住民研究センター 教授 加藤博文さん)
(創成研究機構 特任助教 岡田真弓さん)
劇中には、加藤さんの学術的な話をもとに沢さんがイメージを膨らませて創作した、回転式離頭銛やオホーツク文化期の土器といった小道具が登場します。一般に展示や書籍など「静的」に表現されることの多い考古学の研究成果が、アーティストの手によってフィギュアアートシアターという「動的」な総合芸術で表現されることにより、時に考古学者の思考を上回る新たな発見があると加藤さんは話します。劇中ではヒロインである女性リーダーが戦いに出るシーンがあり、創作当初は沢さんに対して一部の研究者から、女性が統率者として武器を扱うなど学術的におかしいのではという批判もあったそうです。しかし驚くことに、昨年、加藤さんが発掘調査を進めている遺跡から、槍などの狩猟具と共に埋葬されたオホーツク文化期の成人女性の墓が発掘されました。このことから、古代の世界に女性リーダーや、狩を行う女性が存在したことを考える必要性も出てきており、偶然とはいえ、アーティストの創造に考古学的発見が後追いする形となりました。
(沢さんが手にしているのは、劇中に登場するオホーツク文化期の土器です)
(ヒロインの戦闘シーン 。写真は、2017年9月に行われた、第15回創成シンポジウムの際の一部上映のもの)
アフタートークでは、加藤さんの礼文島での国際フィールドスクールで、沢さんが昨年から行っているワークショップの様子*も紹介されました。考古学を志す学生に想像力を養ってほしいと考えている加藤さんは、単に考古学を教えるだけでなく、アーティストである沢さんにクリエイティビティを鍛える授業を依頼しました。「考古学者の知識や経験のみで、語らない出土物から歴史を読み取るには限界があります。だからこそ、いかに与えられた情報から発想を膨らませ、古代の人々の生活を想像するかが大切です。自らのイマジネーションで仮説を立てられなければ、目の前にある面白い発見も取りこぼしてしまうかもしれない」と加藤さん。沢さんもまた、想像力がなければ、その学問は緩やかに死んでいってしまうのではと話します。
これは考古学だけでなく、ミュージアムという静的なものを展示する場にも共通するのではないでしょうか。動かない展示物を、どのように想像して動かすか。そういった表現の仕方も学芸員にとって必要なのではないかという加藤さんの言葉で、アフタートークは幕を閉じました。
後編では、アフタートークの後に、學藝リカプロの受講生限定で行われたプログラムについてご紹介します。
(文:総務企画部広報課 研究広報担当 菊池優 写真:文学研究院 研究推進室 森岡和子、菊池優)
*…詳細は、「夏の礼文島で、考古学者と人形劇師がコラボ授業」をご覧ください。
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