クスミエリカはフリーランスの写真家として、またウェブデザイナーとして、クライアントからの仕事をこなしながら、美術家としても写真のコラージュによるきわめてシャープな作品を精力的に制作している、今最も注目すべき作家の一人です。この「わが町」も札幌教育文化会館主催で2016-2017年実施された「子ども演劇ワークショップ」から依頼を受け制作したチラシの原画です。

（「わが町」　インクジェットプリント　2016）

「わが町」はアメリカの劇作家ソーントン・ワイルダーによる3幕物の戯曲で、ニューハンプシャー州のグローバーズ・コーナーズという架空の町での物語です。そこでは取り立てて劇的な出来事が起こるのでもなく、平凡な日常生活が－そこには主人公の結婚(第2幕)や死(第3幕)があるのですが－演じられます。これはどこにでも、また誰にでもありうる物語なので、さまざまな町を舞台として物語に翻案され上演される機会も多いです。札幌版では音楽劇としてリメイクされ、子どもたちが演じました。

クスミは舞台となった札幌の各所の写真を撮影し、それをコラージュして、誰もが見たことがあるはずの場所なのに、誰も見たことがないような不思議な世界を作り出しました。さりげなく結婚や死のモティーフがちりばめられているのも見て取ることができます。チラシはクスミの写真をもとに、門間友佑がデザインしたもので、「らてるね賞（北海道演劇宣伝美術賞）2017」の優秀賞を受賞しました。

（「わが町」のチラシ）