部局ニュース

国際会議 「中・東欧=日本21世紀フォーラム」 開催される


 9月3日から5日の3日間,スラブ研究センターを会場にして,国際会議「中・東欧=日本21世紀フォーラム−中・東欧の民主政と市場経済:新制度は定着するのか?」が開催されました。この会議は,主に国際交流基金の「日欧国際会議助成」プログラムからの助成によるものですが,おりしも当センターと文系4研究科の教官による21世紀COE研究教育拠点形成プロジェクト「スラブ・ユーラシア学の構築」が発足しましたので,併せて同プロジェクトの枠組みでの国際会議という位置づけも急遽与えられました。
 1996年から「中欧と日本の間の新対話」というタイトルで,5回にわたって国際会議が中欧諸国の古都を渡り歩く形で開催されました。この一連の会議の組織に当たったのは木村汎氏(当時日本国際文化研究センター教授,現拓殖大学教授)でした。この会議は中欧と日本の研究者や知識人の交流拡大で大いに貢献するものでした。しかし,とりあえずこのシリーズは昨年のザグレブ会議(クロアチア)で終了することになりました。それをうけて,地理的な範囲を「中欧」から「中・東欧」に拡大し,当該地域の研究者(西欧の研究者を含む)と日本人研究者が共通の論点で議論を交わす新たな場として「中・東欧=日本21世紀フォーラム」を立ち上げることになり,その第1回会議が当センターで開催されることになりました。
 今回の会議は,1989年以降の中・東欧地域での政治と経済の転換過程を,主に比較政治学と比較経済学という専門領域から再検討しようとするものでした。この地域の各国は一党支配体制から複数主義にたつ民主政へ,国家計画経済体制(旧ユーゴ地域についてはこの言葉は正確ではないが)から市場経済体制へという共通する転換過程を経験しました。そこには多くの共通する要素を見いだすことができますが,その過程や結果の差違もまた顕著といえます。それらの比較からえられる知見は,この地域全体に関する理解を深めるだけでなく,民主化や市場化をめぐる理論研究にも有益なものといえます。また,従来の研究では政治と経済が別個に扱われることが多く,その双方の関係がそれぞれの専門家によって論じられる場はあまりありませんでした。今回はそうした意味において政治学と経済学の対話の場ともなりました。
 今回の国際会議では報告者として外国人研究者が7人(ハンガリー人,チェコ人が各2名,スロヴァキア人,クロアチア人,イタリア人が各1名),日本人研究者が同じく7人参加し,さらに各部会の討論者として数人の研究者が別途招かれて討論に加わりました。会議はすべて英語で進められ,各部会では,事前に提出され,参加者に配布されていたペーパーに基づき2名の報告者が報告を行い,そのあと予定討論者2名の発言がつづき,さらにフロアーの参加者も討論に加わるという方法をとりましたが,常にフロアーからの積極的な発言があり,会議は熱気にあふれる討論の場となりました。また会議の冒頭で田中義具氏(元駐ハンガリー大使)による「一日本人外交官の見た中欧の転換」という講演もあり,外交実務の場での経験をお話しいただくことになりました。なお,会議に提出されたペーパーをもとに論文集が年度内にセンターから出版される予定です。

(スラブ研究センター)

報告会風景
報告会風景

前のページへ 目次へ 次のページへ