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教育学研究科国際シンポジウム
「The Future of Community Development Education(地域づくり教育の未来)」開催される

シンポジウム風景
シンポジウム風景
 3月30日,教育学研究科会議室において,国際シンポジウム「The Future of Community Development Education(地域づくり教育の未来)」が開催されました。
 本シンポジウムは,科学研究費基盤研究A「発達・学習支援ネットワークのデザインに関する総合的研究(代表:鈴木敏正)に基づき,北海道と英国北アイルランドでの協同研究をふまえて,特に社会的に排除された地域で実践されている「地域づくり教育 Community Development Education」の現段階的課題と将来方向について報告と討議を通して明らかにすることを課題としたものです。当日は,主催者からの趣旨・経過説明と解題,そして北アイルランドの状況についてのガイダンスののち,次のような3つのセッションとパネル・ディスカッションという構成で進行しました(参加者52名)。
 第1セッションの報告は,1)The Evolution of a Counter Hegemony: A Perspective on the Role of Community Development Education to the Northern Ireland Peace Process(報告者:Terry Robson英国アルスター大学正講師),及び 2)日本における地域づくり教育論の展開と課題(宮崎隆志北海道大学教育学研究科助教授)でした。1)は,セクト的対立を克服しながら進めるCommunity Development Educationにおいて,元政治囚が果たす革新的な役割を強調しました。2)は,北海道と北アイルランドの協同研究をふまえて,参画型社会に照応した地域づくり教育論の展開,現代における「政治学習と生産学習の統一」,そして地域教育主体形成を目指す固有の教育実践の課題を提起しました。
 第2セッションの報告は,3)From Community Development to the Social Economy: Implications for Social Economy(Pauline McClenaghan社会的経済機構ディレクター),4)北アイルランドにおける地域づくり協同実践から学ぶ:地域づくり協同・学習ネットワークに向けて(大高研道弘前学院大学助教授)でした。3)は,新たな動向として社会的経済を紹介し,そこにおける矛盾を克服するところにCommunity Development Educationの発展があることを強調しました。4)は,北アイルランドでの調査研究から,ゆるやかなネットワークを基盤に地域づくり協同実践を進め,それを調査・専門機関が援助することが重要だとして,日本の地域づくり教育へ適用する可能性を示唆しました。
 第3セッションの報告は,5)Sport and Community Relations in Northern Ireland: Assimilation or Diversity?(Alan Bairnerラフバラ大学教授),6)グローバリゼーションと北海道における地域スポーツ(大沼義彦北海道大学教育学研究科助教授)でした。5)は,北アイルランドにおけるサッカーの事例をとりあげながら,スポーツによるCommunity Relationsの活動の二面性を克服してはじめて,アイデンティティ形成を含めたCommunity Development Educationが可能であるとしました。6)は,常呂町のカーリングと札幌のスポーツ・イベントを事例として,地域住民の生活にねざした地域スポーツを発展させることの重要性を強調しました。

 以上をふまえたパネル・ディスカッションでは,関連分野の理論と実践の発展にとっての,こうした国際調査研究交流の意義が確認されるとともに,大学特にその地域成人教育訓練活動の果たす役割の重要性が指摘され,そのために必要な大学改革の課題が提起されました。

(教育学研究科・教育学部)


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