北海道大学総合博物館は第11回企画展示「新着コレクション展」を5月18日から6月20日まで3階展示室で開催しました。
今回展示した化石・鉱物標本は,名古屋市在住の歯科医である塚本勝彦氏(64)が本学総合博物館に寄贈した3,000点の標本の中から,整理・データベース入力が完了した250点を公開したものです。塚本氏は民間の研究者でもあり,高校時代から化石や鉱物の採集を続け,貴重な標本を数多く収集してきました。今回の寄贈は,塚本氏が本学総合博物館の箕浦名知男助教授と同じ高校の同窓生だった縁によるもので,塚本氏が高校時代に在籍した地学部からは箕浦助教授をはじめ,古生物・鉱物分野の研究者が輩出しています。
塚本氏のコレクションは,昭和30年代から50年代にかけて中部地方を中心に全国で採集されたものですが,鉱石・鉱物を採集した鉱山のほとんどが現在閉山しており,また,化石の採集地の多くも宅地開発・都市化などによって採集できない状況になっていることから,コレクションの価値は大変高いものといえます。
展示した標本の中で特に珍しいのが,岐阜県で見つかったビカリヤ(巻き貝)の化石です。この巻き貝は貝の殻が溶け,貝の中身が珪酸(ケイサン)に変わったもので,江戸時代には月に住むウサギの糞が空を舞い降りながら石になったものと考えられ,「月のお下がり」として珍重されました。また,同じく岐阜県から見つかったハスの葉化石は新生代新第三紀中新世の平牧層からの産出であり,ハスの葉化石の多くが中生代白亜紀以降に産出している中で,非常に珍しい標本といえます。
塚本氏から寄贈されたコレクションの中には,今回展示したもの以外にも公開に適した標本が多数あり,その学術的な価値は教育・研究に十分に活用できるものです。全標本の整理が完了した時点で,改めて企画展示を行う予定です。
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ビカリヤ(巻き貝)の化石 |
ハスの葉化石 |
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(総合博物館) |
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