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「森林研究」を現場で実感!北方生物圏フィールド科学センターで「野外シンポジウム2006」を開催

 北方生物圏フィールド科学センターでは,苫小牧研究林(苫小牧市字高丘)において8月21日(月)から25日(金)までの4泊5日の日程で,「野外シンポジウム2006〜森をしらべる〜」を開催しました。野外シンポジウムは,北海道の広大な森林や河川,湿原や草原を巡りながら,若い研究者たちによる研究の成果を聞き,その地で実際に行われている調査研究の一端を体験しながら,森の中で今何がどこまで解明されたのか,そしてこれから何を明らかにする必要があるかについて考える場です。9回目となる今回は,全国各地から森林研究に興味を持つ大学生24名が集まり,教員や大学院生などから森林研究の最新の成果や研究の進め方について説明を受けました。
 1日のプログラムは,日中に実際の研究現場で行うフィールド調査体験と,夕食後に屋内で行う研究内容の詳しい解説や質疑応答を中心としたポスターセッションの2本立てになっています。今回は,5つのテーマに分かれた11のセッションのほか,早朝と夕方にも自由参加のプログラムなど盛りだくさんの内容で,参加者は連日の雨にもめげず,初めての作業に目を輝かせながら真剣に取り組みました。中でも,林冠クレーンから森林を見下ろした時の感動や,電気ショッカーで魚が浮かび上がってきた瞬間などが強く印象に残ったようです。
 夜のポスターセッションでは,時間を惜しむように活発な質疑応答が繰り返され,研究の楽しさだけでなく難しさ,普段はめったに聞くことのできない苦労話などを聞く良い機会となりました。中には,進路や恋愛の悩みまで相談する姿も見られ,毎日夜遅くまで話し声が続きました。
 研究者のセッション終了後に行われた参加学生による模擬セッションでは,研究者になったつもりで研究テーマを考え,実験結果までを予想して発表しました。参加学生の中でふくらんだ「森林研究」への思いが伝わってくるすばらしい発表となりました。
 最終日には「未来の地球へ」と題して,風倒木を利用して炭素換算量を印字した木の輪切り「環境通貨」を作り,地球環境と森林生態系の関係を考える記念として持ち帰りました。
 「色々な発見があり,多くの面で自分が成長できた」「人や生き物との出会いが宝だと感じた」「研究者の熱い思いを感じた」「あまり年の離れていない大学院生の知識の多さに驚いた」「今度は教える側に立ちたい」など,様々な思いを抱いて野外シンポジウム2006が終了しました。

セッションテーマ一覧
1.森林と地球環境−生態系のつながり−
 *樹木はどれだけ二酸化炭素を吸収するか
 *土壌は地球温暖化を救うのか?
2.生きるのは楽じゃないね
 *もうかりまっか?−光合成の経済学−
 *樹木の高さは何で決まる?
  
高くなって得すること,苦労すること
3.葉っぱとムシの深〜い関係
 *葉っぱの味は生える場所で違う
 *落葉が土になる−土に棲む生き物の働き−
4.渓流に生きる
 *外来種は,いい奴?悪い奴?
 *渓流で暮らす多様な生き物
   −底生動物の大きな役割−
5.攪乱の生態系
 *シカ調査の色々:捜す,数える,食べる?
 *オスとメスは一緒にいない!?
   −シカ分布の謎−
 *草は森の台風を憶えている

林冠観測用クレーンで真上から森を見る 電気ショッカーを使った魚の調査体験
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ラジオテレメトリーを使ったエゾジカ調査を体験 「模擬セッション」研究者になったつもり!
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「環境通貨」を作る!これだけ切ったら何カーボン??
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(北方生物圏フィールド科学センター)

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