11月24日(金)午後1時30分より農学研究院の大講堂において,『共生社会へ,新しいライフスタイルを求めて』をメインテーマとした市民公開・農学特別講演会が,農学研究院・農学院,農学部,札幌農林学会および札幌農学振興会主催,北方生物圏フィールド科学センター共催で開催されました。この講演会は1898(明治31)年に発足した「札幌農林学会」が毎年開催してきた特別講演会を継承,発展させた,100年以上の歴史を持つ学術講演会です。平成9年からは「市民公開・農学特別講演会」と名称を変えて,大学の研究者だけでなく広く市民に公開されるようになりました。本年度は市民公開になってから10回目の開催となります。
講演では,まず本研究院の田原哲士教授が「生態化学からみた農業」と題し,生態系がなぜ安定した形で維持されているかについて,今までの生態化学による知見や研究室での研究成果を紹介しながら平易に説明され,循環型社会,循環型農業の重要性を強調されました。また,自然生態系と農業生態系の違いについても触れ,農業生態系は人間活動を生態系に組み込む作業であること,農業の目的を達成するためには自然生態系の原理を生かしつつ作物を人為的に保護する必要があること,つまり生態学的原理を応用した技術の利用と意識革命が重要であること,などを述べられました。つづいて味の素株式会社の飯谷欣三常任顧問が「ゼロエミッションへの食品企業としての取り組み」と題し,味の素株式会社が取り組んでいる「環境ビジョン・ゼロエミッション」について,企業のポリシーとバイオサイクルの考え方,アミノ酸生産の副産物を液体肥料にして農地へ還元する具体的な方法とその効果,などを図と数字を使ってわかりやすく説明され,資源循環型生産の実現が重要であることを強調されました。
共生社会へ向けて,生態学原理の応用と物質循環の保全が重要であることを,あらためて認識させられたお二人の講演でした。講演後の質疑応答では,学生から出された「株主対応」に関する質問に,飯谷講師が「企業は生産過程で現れる環境問題とその対策をすべて公表し,株主と社会の理解を得ることが必要だ」と答えられたのが印象的でした。 |
 |
 |
講演を行う農学研究院 田原教授 |
講演を行う味の素株式会社 常任顧問 飯谷欣三氏 |
|
(農学院・農学研究院・農学部) |
|