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スラブ研究センターで国際ワークショップ「地域大国ロシア:その国際的地位と2007−08年選挙サイクル」を開催

 2月22日(木)〜23日(金),スラブ研究センターにて,国際ワークショップ「地域大国ロシア:その国際的地位と2007−08年選挙サイクル」が開催されました。本センターは,平成19年度科学研究費補助金・特定領域研究に,「地域大国ロシア:旧帝国空間の再編」をテーマとして応募していますが,本ワークショップは,その準備企画として組織されたものです。この特定領域研究は,これまでセンターが世界的に主導してきたスラブ・ユーラシア研究の知的蓄積を活用して,再び世界政治の台風の目となりつつあるロシアを広い視野から再考察することを意図しております。北海道大学は,このイニシアチブを高く評価し,重点配分経費が支給されました。この予算を用いることによって,ロシア,アメリカ,イギリス,ドイツから新進気鋭の研究者を,本ワークショップに招へいすることができました。
 今回のワークショップは,日本人も外国人も主に30歳台半ばの若い研究者を報告者として行われました。第1セッションでは政党制,利益集団の政治が議論され,続いて第2セッションでは,ロシアの連邦制・地方政治が議論されました。第3セッションではロシア経済における資源部門の検討を通して,その重要性が明らかにされました。第4セッションでは日露関係を歴史的に展望し,第5セッションではロシア近隣諸国の政治に関して活発な議論が行われました。各セッションには独立したテーマがありましたが,他方で,それぞれは深く関連しており,参加者はセッションの枠を横断して大変活発な議論を行いました。例えば,第1・第2・第3セッションでは,ロシアのクライエンテリズム(恩顧主義)政治の特質が,政党制,利益集団(巨大企業)と政治の関係,地方政治を通して明らかにされました。
 総じて,報告と討論のレベルは非常に高く,ワークショップ後,海外からの参加者からは「素晴らしい!(excellent!)」「尋常でなく興味深いもの(extraordinary engaging)」「驚くほど勉強になる経験(tremendous learning experience)」といった声が電子メールで寄せられました。海外からも含め50名以上という参加者の数にも,関心の高さが表れています。
 日本側参加者も,若くして英語で報告し,討論する経験が得られたことは有益でした。これまで本センターは,国際研究集会の成果として,欧文で報告集を出してきましたが,今回のワークショップではあえてその方針をとらず,若手日本人研究者の海外の査読雑誌への投稿を促進する新方針がとられました。近年,論文集に発表された論文は,査読雑誌に発表された論文よりもかなり低く評価される傾向がありますから,この新方針はこうした状況に対応したものです。
 ワークショップの結果,「地域大国ロシア」の全体像を考察するための,素晴らしいスタートが切れたものと考えます。折しも,今年末から来年初頭にかけて,ロシアでは議会選挙,大統領選挙が行われる予定になっており,プーチン後のロシア政治・経済・国際関係を考察する上でも貴重な機会となりました
2月22日会場風景 2月23日会場風景,活発な議論が行われました
2月22日会場風景 2月23日会場風景,活発な議論が行われました
(文責:スラブ研究センター 大串敦研究員,松里公孝センター長)

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