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工学系教育研究センターで「創造的人材育成特別講義」を実施

 工学系教育研究センター(CEED)では,工学研究科及び情報科学研究科の大学院生を対象とした工学研究科共通科目「創造的人材育成特別講義」を4月13日(金)から7月27日(金)までの毎週金曜日に行いました。
 21世紀のグローバル社会では,専門知識を創造的且つ実践的に活かせる能力と,それを実社会へ活用するマネージメント能力を併せ持った人材の育成が要請されます。それに応えるために,在学中に習得した基礎学問・専門知識が実産業社会でどのように役立ち活用されるかを早い時期に自覚認識させる教育プログラムとして開発したものが本講義です。講義内容は,現役の企業実務者に現場の体験を話してもらい,産業社会側が学生に求める資質や企業における技術開発の進め方などを理解させ,学生の勉学意識の高揚を図り,キャリアデザイン等の重要性を認識させようとするもので,その基本的な考え方を図1に示します。

図1 工学系教育研究センターの理念の模式図
(注記:従来の大学教育は横軸だけ。工学系教育研究センターでは縦軸の能力向上を目指す。)

 平成19年度は,「環境とエネルギー」を共通テーマとして表1のとおり実施しました。本講義では,各企業の最新の取組みを講義してもらうとともに,各講義の最後に質疑応答の時間を設け,学生参加型授業としました。
 受講生には,講義ごとに「分かったこと/分からなかったこと/その他自由記載」をレポートとして提出させ,理解度の評価を行いました。
 また,本講義を学生が自ら考え・主張する場ともなるように,講義の中間時点と最終時に,[1]「化石燃料枯渇への対処法」[2]「我国のエネルギー政策」[3]「エネルギー問題に対して,今私達がやるべきこと」[4]「技術者としての私のキャリアデザイン」の4つのテーマから一つを選択させ,「●●●に関する私の意見」というレポートを提出させました。その中から優秀レポート8件を選出し,最終回に総括討論会として発表させました。また,受講生には最低1回の質問,コメント,反論等を義務付けました。そして,これらの司会は博士後期課程の学生に担当させました。
 受講生は69名で,その内訳は,博士後期課程7名,修士課程62名(留学生2名含む)でした。その他,学部学生2名が聴講しました。平均出席率は92%で,本講義が学生に大変好評だったと言えます。
 各講義における質疑・応答や提出レポートから,「自分に何が足りないかを実感できた」「大学での授業が産業社会でいかに役立つかを実感した」「学生が自らライフデザインを考えてみることが重要」「自己主張することが重要」「環境とエネルギー問題が身近な問題であり,自ら活動を起こすことが重要であることの実感を得ることができた」などの内容が発言・記入されており,本講義が学生の素養育成の成果に結び付いたことが分かります。
 工学系教育研究センターでは,今後も企画力・洞察力・問題発見解決能力等を備えた創造的・実践的な人材能力の向上を図ることを目指した講義内容を企画・提供していく予定です。

表1 平成19年度創造的人材育成特別講義の構成
No. 講師 タイトル 講義内容の概要
[1] CEED ガイダンス 産業社会が求める学生像と本講義の主旨・内容を説明。
[2]
[3]
三菱重工業(株)
・古屋講師
・大木講師
21世紀のエネルギー技術論(上・下) 表裏一体であるエネルギーと環境の関係を理解し、社会経済の持続性とのバランスを保ちつつ、理工学・人文社会科学等の総合科学技術を駆使して、技術と社会のイノベーションを進める必要性に対して、その全体像を概説し,創造的人材として学生の問題意識を喚起する。
[4] 神戸製鋼(株)
・重久講師
UBC技術開発の紹介 〜インキュベーションから大型実証まで〜 悪戦苦闘して石炭の高品位化を達成した現役実務者による、企業における技術開発活動の紹介と学生への要望・提言
[5] 東京ガス(株)
・奥井講師
天然ガスを手に入れろ! 研究開発を発端に、様々なタイプの天然ガスエネルギーの開発にチャレンジする現役実務者による、現場や業界の現況に関する情報提供及び学生への期待。
[6] CEED 中間討論
「エネルギー問題に関する私の理解、私の意見」
中間点において、今までの講義内容に関する聴講内容をベースに、21世紀を担う学生諸君が備えておくべき資質や社会とのかかわり方などについて討議を行う。
[7] 北海道ワイン(株)
・本間講師
北の大地にワイン産業を根づかせた悪戦苦闘の物語 「知っておきたいワインの話」をメインに獣医からワインへの転進、アメリカでの肉体労働、ドイツでのワイン学校での体験等を交えて、大学での専攻と実社会で成果との間にいかに多くの試練があり、またそれをいかにして打破してきたかを生の声で知る。
[8]
[9]
[10]
(株)日立製作所
・林 講師
三菱重工業(株)
・金氏講師
(株)東芝
・益田講師
21世紀最大の総合ハイテク産業
「原子力開発の歴史と展望」
開発の歴史、必要性、国内外の現状、基礎学問・技術開発の歴史と今後の展望について、経験談も含めて技術の真髄を語る。最終講義では、講師三人と「将来性のある原子力分野について学生に対する期待、また学生諸君は何を期待するか、そのために学生時代に何をすべきか」等について自由討論を行う。
[11] トヨタ自動車(株)
・渡邉講師
持続可能なモビリティ社会の実現に向けて〜持続可能なモビリティ社会の評価指標の提案〜 先人のパイオニア的活動の根源が何であるかを述べ、環境とエネルギーを視野においた先駆的車である「プリウス」の開発経緯を紹介するとともに、開発に着手した21世紀の交通システムの概要を紹介。なお、本講義では実物のプリウスを持ち込んでの説明も行われる。
[12] キヤノン(株)
・坪山講師
研究開発技術者のサバイバル
〜研究開発の現場から〜
研究開発の現場の実態、技術者の苦悩と喜びを紹介しながら、技術者として独り立ちするためのヒントを提供する。
[13] CEED 総括討論
講義で得た知識・社会要請から、今後の社会とのかかわり方について自分の意見をレポート提出。優秀作品の発表とそれに対する質疑応答を行う。
[レポート課題] 
[1]「化石燃料枯渇への対処法」
[2]「我が国のエネルギー政策」
[3]「エネルギー問題に対して、今私達がやるべきこと」
[4]「技術者としてのキャリアデザイン」
熱血講師と熱心に聴き入る受講生 熱血講師と熱心に聴き入る受講生
熱血講師と熱心に聴き入る受講生
学生司会者による全員参加の総括討論の様子 学生司会者による全員参加の総括討論の様子
学生司会者による全員参加の総括討論の様子
(工学研究科・情報科学研究科・工学部)

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