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総合博物館企画展示「ライマンと北海道の地質 
−北からの日本地質学の夜明け」

会場の様子
会場の様子

 総合博物館企画展示「ライマンと北海道の地質−北からの日本地質学の夜明け」を4月29日(火)から6月1日(日)までの約1ヶ月間,総合博物館3階展示室で開催しました。これは今年から始まった5月10日の「地質の日」を記念しての開催であり,北海道開拓使お雇い外国人技師ライマンの活躍や功績および現在の地質学と社会との関わりの紹介を通じて,「地質の日」を広く市民の皆さんに知っていただくことを目的としたものです。幸い土・日曜日を中心に多くに皆さんにご来場いただき,好評でした。
 「5月10日」は北大とも深い関係があります。我が国最初の本格的な広域地質図である「日本蝦夷地質要略之図」(縮尺200万分の1)が開拓使御雇い技師の米人地質鉱山技師ベンジャミン S. ライマンとH.S. マンローおよび開拓使仮学校生徒でもあったライマンの13名の日本人弟子たちにより出版されたのが1876(明治9)年5月10日でした。また,国土の地質と地下資源の基礎調査を担う組織として内務省地理局に地質課(後の通産省地質調査所,現在の独立行政法人産業技術総合研究所地質情報総合センター)が設置されたのは1878年5月10日でした。地質課の初代課長は開拓使仮学校初代校長であった荒井郁之助です。地質調査所が策定した全国20万分の1地質図幅作成事業による第1号「伊豆」図幅はライマンの弟子のひとりによります。このように,我が国への地質学の導入は幕末から明治初期において幕府や開拓使に招聘された外国人技師により北海道から始まったと言っても過言ではありません。
 本展示では,4つのサブテーマ(ライマンと弟子たちの交流・彼らによる石狩炭田の開発・北海道と札幌周辺の地質とその生い立ち・今日の火山や地震などの自然災害および鉱物資源や石炭・石油のエネルギー資源の開発と現状およびそれらと地質学との関わり)をポスターや実物および北大附属図書館などに所蔵されている資料などにより展示・解説しました。
 開催にあたっては,小樽市総合博物館・遠軽町・釧路コールマイン(株)・札幌市博物館活動センター・様似町・独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター・壮瞥町・函館市中央図書館・北海道開拓記念館・北海道大学大学文書館・北海道大学附属図書館・北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園・(社)北海道地質調査業協会・北海道立地質研究所のほか,多くの個人の方々にご協力をいただきました。
 期間中には,関連した土曜市民セミナーを2回(5月17日,「北からの日本地質学の夜明け−ライマンの北海道地質調査とその前後−」松田義章氏 〈札幌稲北高校〉/5月24日,「北海道の地質に関する記念物−みんなで決めよう地質百選」中川 充氏 〈(独)産業技術総合研究所北海道産学官連携センター〉)開催しました。また,市民が地学をどのように感じているか,どのように学んだかについてのアンケート調査を実施しました。この結果については秋に行われる日本地質学会学術大会の地学教育セッションで発表する予定です。また,5月8日,15日の朝日新聞朝刊「北の文化」に本展示の主要テーマであるライマンと弟子たちの交流と活躍を紹介する記事が掲載されました。

(総合博物館)

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