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農学研究院で市民公開・農学特別講演会『酪農・乳製品をとりまく世界の諸事情』を開催

 11月28日(金)午後1時30分より農学研究院大講堂において『酪農・乳製品をとりまく世界の諸事情』を共通テーマに,市民公開・農学特別講演会が開催されました。
 この講演会は,1898(明治31)年に発足した「札幌農林学会」が毎年開催してきた特別講演会を継承,発展させた100年以上の歴史を持つ講演会です。平成9年からは「市民公開・農学特別講演会」と名称を変えて,大学の研究者だけでなく広く市民に公開されるようになりました。本年度は市民公開になってから11回目の開催となります。今年は,昨今各地で問題となっている,「食の安全と安定的供給」を切り口に,なかでも酪農と乳製品をとりまく情勢について,3人の講師の先生にご講演頂きました。およそ200人の参加者があり,大講堂では立ち見もあるほどの盛況でした。
 本研究院の島ア敬一教授からは「牛乳・乳製品の利用と問題点」と題し,最初に牛乳のタンパク質含量,脂肪含量とともに,牛乳はなぜ白いのか,牛乳はなぜ固まるのかなど,牛乳の成分,性質などの基本的な情報と,我々の日常食品の中にいかに乳製品が利用されているのかをお話頂きました。また,中国の乳児向けの粉ミルクに化学物質のメラミンが混入され,多数の乳幼児に腎不全が発生した問題についても触れられ,メラミンは粉ミルク中のタンパク含有量の分析過程において,タンパク質含量の指標とされている窒素含有量を多く見せかけるために混入されたことを解説して頂きました。近年牛乳の消費量が減少しているため,日本の酪農を支えるためには,日本国内での牛乳の消費を高めることが重要であると指摘されました。
 同じく,本研究院の出村克彦教授には「北海道の酪農発展とバングラデシュの酪農」という演題で,北海道酪農の政策の変遷とともに,酪農家の状況についてご講演頂きました。1965年以降酪農家の戸数は減少し続けているが,逆に1戸当たりの飼養頭数は増加していることを示し,公共投資や私的投資をして規模拡大をした酪農家のうち一部の酪農家は成功してさらなる発展に向かっているが,残りの酪農家は負債を返還しきれずに離農していくという状況と,現在は多様な経営体と支援組織が形成されている現状をご紹介頂きました。また,バングラデシュでの酪農家育成への政策についてもご解説頂きました。
 農畜産業振興機構の長谷川敦先生には,「世界の酪農と牛乳・乳製品事情〜鍵を握る国々〜」と題して,世界の食糧需給・生産動向について,原油価格,バイオ燃料,オーストラリアの干ばつ,温暖化・気候変動などの面から全般的に解説頂き,なかでも乳製品の国際相場高騰の背景,要因を中心にお話し頂きました。乳製品の輸出可能国が少ないこと,中国,ロシア,産油国等を中心とする新興国・途上国の需要増,オーストラリアの干ばつによる生産減,供給国が自国内での牛乳・乳製品の供給確保のために輸出を規制したことなど,多くの要因が重なり合って,空前の乳製品国際相場高騰となったことなど興味深いものでした。
 講演後は,会場の一般市民から,「道東の新酪農村建設事業において,あまり意味のないスチールサイロの導入で入植者が借金を抱え込まされ,離農を促進させた責任の所在を追及する声」「酪農の労働条件の厳しさと大学の農学部で学んだ者が就農しないことの問題指摘」「北海道酪農をすべて放牧にできないのかと」などの意見があり活発な議論となりました。この講演によって,日本を含めた世界それぞれの国において,食料の安定供給と安全性を維持することの重要性への認識が一層高められたものと思われます。
出村克彦先生のご講演出村克彦先生のご講演
出村克彦先生のご講演
長谷川敦先生のご講演 島ア敬一先生のご講演
長谷川敦先生のご講演 島ア敬一先生のご講演
(農学院・農学研究院・農学部)

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