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シリーズ「子どもの生きづらさを考える」第2回講演会を開催

 教育学研究院附属子ども発達臨床研究センターでは2月22日(日)に,シリーズ「子どもの生きづらさを考える」,今年度第2回の講演会『自閉っ子の困らな感とがっかり感〜講演と対談 まるまる一日ニキリンコ〜』を本学学術交流会館講堂において,開催しました。児童福祉,精神保健,教育,医療などの関係機関職員や学生,発達障害のある当事者・ご家族など,様々な職種,立場の方にご参集いただき,約270名の参加がありました。
 講師のニキリンコさんは翻訳・執筆・講演などの活動を通して,自閉症スペクトラムに関する理解を広める活動をされていらっしゃいます。自閉症当事者の立場から積極的に発言されている方で,当事者以外には理解されづらい特性を,的確かつユーモアにあふれた比喩で表現されてきました。
 今までの講演や著書の中では,自閉症者の独自の体験世界を紹介することが多く,当日もユーモアいっぱいに具体的なエピソードを話され,会場に笑いが起こることもたびたびでした。今回の講演ではさらに,発達障害に由来することだけが当事者の個性的な感じ方や行動・表現につながるのではなく,性格や個性の範囲に入ることや家庭環境,教育,職種,配偶者など,様々なことが組み合わされて,その人らしさが出来ることを強調されていました。また,こういった種々の要因が関係することにより,もともとの障害以上に特徴が強調されたり,周囲の状況にまぎれて目立たなくなることがあること。それにより,さらに困難を抱えることも,あるいは,気づかれずに問題が先送りになってしまうこともあるとお話されていました。加えて,複数の障害が重なることもあるので,単純に診断名を根拠にして個人への対応を決定しない方がよいということをアピールされていました。
 ニキさんはこれまでも,援助者側の思い込みを打ち砕く,当事者としての勇気ある発言をしてきた方ですが,今回の講演の内容はさらに踏み込んだものになっていたと思います。4時間を越える講演会は講師も参加者もお疲れになったでしょうが,大きな学びのある一日でした。
(教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター)

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