部局ニュース

GCOE国際サマースクール2009
「北方林における生態系生態学の最前線」

 環境科学院では,6月14日(日)から20日(土)に,グローバルCOEプログラム「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」(環境科学院・農学院環境資源学専攻)主催の国際サマースクール2009「北方林における生態系生態学の最前線」を北方生物圏フィールド科学センター雨龍・中川・天塩研究林および札幌キャンパスにて開催し,北海道大学および海外から博士課程の大学院生19名が参加しました。(うち海外からは国際公募により,中国,インド,バングラディシュ,マレーシア,フィリピン,オーストラリア,英国から12名が参加)
 本サマースクールの目的は,生態系生態学に関するフィールドでの観測手法を習得するとともに,様々な国から集まった参加者が協同で研究計画を立案したり,既往研究をレビューしたりすることにより,統合フィールド環境科学に関する国際的視野を持つ研究者を育成することにあります。
 初日には,ガイダンスとポスターセッション,そして米国より招聘したMyron Mitchell教授(ニューヨーク州立大学環境科学森林学部,SUNY-ESF)による講義「温帯林集水域:大気汚染と気候変動に対する応答」が学術交流会館において行われました。翌日からは道北の研究林に場所を移し,「北方林における群集構造と機能」,「土壌プロセスと生物地球化学」,「ランドスケープにおける生態系機能と構造の空間変化」,「森林集水域における炭素循環と森林施業」というトピックについてフィールドセッションやグループ討論を実施しました。そして,各調査地の概要や研究器具の説明後,参加者は蚊やブヨと格闘しながら森林をじっくりと観察し,北の森林でどのような研究が実施可能なのかを考えました。各自の調査地の植生とは大きく異なるためか,多くの参加者はこの地域の森林に密生するササに興味を示していました。
 また,設定された大きなテーマに基づいて,各参加者が森林の中で自由に研究課題を提案し,グループごとにそれらの課題に対する作業仮説を立て,それを検証するためのアプローチを考えるという,共同研究のプロポーザル作成のトレーニングが行われました。そこでは,3〜4名のグループに分かれ,各トピックに関する研究計画を立案し,グループ発表を行いました。参加者は非常に積極的で,活発なグループ討論,白熱した質疑応答が展開されました。課題や仮説の妥当性・新規性や,検証するための研究手法については検討が必要な部分が残されたものの,多くの参加者は母国語ではない英会話や専門性の違い,時間の制約に苦労しつつも,研究計画立案の基本についてそれぞれに学んでいました。
 最終日は遠友学舎にて,各研究テーマについて既往研究を事前にレビューし,それをグループごとに統合して発表しました。
 参加者は,本サマースクールを通し,英語でのグループ討論,発表・議論に慣れ,自身のスキルアップにつながったとともに研究者間の信頼関係が構築できました。本サマースクール終了後,参加者からは「この模擬体験が自分の研究の役に立った」,「参加してよかった」との声が多数寄せられました。この交流が今後も続き,将来のフィールド環境科学における国際的連携や共同研究の発展につながることが期待されます。
林内を観察しながらディスカッションする参加者 集合写真
林内を観察しながらディスカッションする参加者
集合写真
(環境科学院・地球環境科学研究院)

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