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総合博物館でパラタクソノミスト養成講座を開催

 

 総合博物館では,生物分野,地球科学分野,考古学分野の専門家をサポートする準分類学者(パラタクソノミスト)の養成を目的とした講座を一般市民向けに開催しております。昨年度の後半からは北海道教育GP「博物館を舞台とした体験型全人教育の推進」のもとで開催してきました。8月には下記の3講座を開催しました。

 

1.魚類パラタクソノミスト養成講座(初級)

 8月5日(水)と6日(木)の両日,当館の河合俊郎助教と大学院水産科学院の矢部衞教授,今村央准教授を講師に迎え,北大函館キャンパスにおいて開催されました。1日目の午前は,河合先生より,魚類とは何か,分類学の基礎知識,などの講義と,魚類標本の採集方法と,翌日の標本作成に向けての標本の作成方法についての講義を受けました。午後からは,参加者一人一人に生の魚が配られ,まず,検索表を用いての同定と,魚体の測定,各鱗の計測等を行い,その後,生物学的描写(スケッチ)に挑戦しました。
 2日目の午前は,矢部先生より,生物の名称や系統分類学,カジカについての講義を受け,続いて,今村先生より,日本の魚類学の発展の歴史についての講義を受けました。午後からは,各自,個体を選び,検索表を用いての種の同定,台帳記載,DNA用の肉片の採取,ヒレ立て,などの標本作成実習を行いました。

 
魚類パラタクソノミスト養成講座(初級)でカサゴ類の同定に取り組む受講生
魚類パラタクソノミスト養成講座(初級)で
カサゴ類の同定に取り組む受講生
 

2.昆虫パラタクソノミスト養成講座(Jr.・初級)

 8月6日(木)と7日(金)の両日,帯広百年記念館学芸員の伊藤彩子氏,当館の大原昌宏准教授,資料部研究員の舘卓司氏を講師に迎え,帯広百年記念館を主会場に開催されました。1日目の午前は,まず,野外へ採集に向かい,スウィーピング,ビーティングによる昆虫採集の方法と採集道具(ネット,吸虫管,毒ビン,三角紙)の使い方の説明の後,2班に分かれ,採集を行いました。また,前日にスタッフが仕掛けたマレーズトラップとイエローパントラップについての説明も受けました。午後は,午前中に採集した昆虫の標本作成を行いました。
 2日目は,ハエの標本作成の説明から始まり,次にトンボの標本作成に取りかかりました。その後,前日に各自が採集した昆虫の標本作成を引き続き行いました。午後からは,大原先生より検索表の使い方が説明され,残りの昆虫の標本を作成した後,目レベルまで同定する作業を行いました。

 
昆虫パラタクソノミスト養成講座(Jr.・初級)で解説する大原講師
昆虫パラタクソノミスト養成講座(Jr.・初級)
で解説する大原講師
 

3.植物パラタクソノミスト養成講座(中級:水草)

 8月22日(土)と23日(日)の両日,札幌市博物館活動センター学芸員の山崎真実氏を講師に迎え,北大総合博物館を主会場に開催されました。1日目の午前中は,モエレ沼に移動し,水草の生活型(抽水植物,浮葉植物,沈水植物,浮遊植物)の解説,水草採集の方法(道具・採り方),ポイント,留意点などの説明を受けた後,実際に水草を採集しました。午後からは,北大総合博物館に戻り,採集した水草を標本にする実習を行いました。ウキクサなどの小さい水草を,水を張ったバットに浮かべ,標本台紙の表面張力で吸い付ける方法,水に浮かべたヒルムシロなどの中型の水草を標本台紙ですくい上げる方法など,水草独自の標本作製法を実習で学びました。
 2日目は,まず,1日目に採集した標本を,図鑑の検索表を使って同定する実習を行いました。検索表で同定し,図鑑の記載内容と形態を確認後,標本庫に収蔵されている標本と比較して名前を決定するまでの一連の流れを学びました。その後,講師が用意した数種のヒルムシロ属標本を,検索表を使って,同定する実習を行い,コウキクサ(液浸標本)やオヒルムシロの花,果実(液浸標本)の観察,標本持ち帰り用の簡易野冊の作成も行いました。

 
植物パラタクソノミスト養成講座(中級:水草)で作業の指導をする山崎講師と受講者
植物パラタクソノミスト養成講座(中級:水草)
で作業の指導をする山崎講師と受講者
 
(総合博物館)

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