北方生物圏フィールド科学センター臼尻水産実験所(函館市臼尻町)では,水産学部と共催で8月8日(土)〜9日(日)に標記のプログラムを開催しました。このプログラムは,臼尻水産実験所で例年実施している地域開放事業のシュノーケリング教室の本年度第1回目ですが,本教室には本学入学を目指す学生が参加するなど,オープンキャンパス的実習事業になっています。今回は,2日間の実習を通して,テーマである『北海道の魚たちの由来をたどる』のもととなった北太平洋での海外調査の様子とその成果に触れてもらうことをねらいとしました。そのため実施スタッフとして本学水産科学研究院魚類体系学講座と函館キャンパス事務部にも協力をお願いしました。
来春受験を控える札幌の高校3年生,さらに岐阜県や宮城県などから参加した多数の未来の北大生らは,最初に本学総合博物館分館水産科学館で「北海道の魚たち」と題した矢部衛教授のミニレクチャーと,本センター臼尻水産実験所へ移動して所長の宗原弘幸准教授から同実験所周辺の海の特徴と実習全体の説明を受けました。2つのレクチャーを通して,北海道の魚たちは,アラスカからつながる寒流系の魚類が主体で,それに黒潮から分岐した津軽暖流水に乗ってやってくる季節回遊性魚類が加わることを理解し,午後からの実習に取り組みました。 |
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大学院生からシュノーケルの
使い方を教わる
参加者たち |
手を握っててあげるから大丈夫だよ |
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最初の実習は,シュノーケリングで岩の間に生息する近縁の魚3種を釣り上げ,それを材料にDNA分析による種判別です。何よりもまず参加者は,ウエットスーツを着てシュノーケルを使いこなせるようにならないと魚釣りはできません。また仕掛けを岩の間に落とす前に別の魚に取られてしまってもミッション完了となりません。時間いっぱい真剣にシュノーケリングフィッシングに挑みましたが,目指す魚を全員が釣り上げることはできませんでした。それでも,魚が餌に食いつく瞬間を見ることができたなど,満足なようすでした。その後の遺伝子実験は,かなり高度な内容でしたが,日本学術振興会特別研究員の木村幹子博士が参加者と会話しながら平易に説明したことと初めてのピペット操作が面白かったのか,形態がよく似た3種を遺伝子の違いで識別する実験を全員がやり遂げました。 |
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ピペットの扱いも上手になってきたよ |
「魚が餌に食いついた!」 |
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夕食前には,今回の目玉イベントのひとつである,北海道にやってくる南方系魚類の代表格であるクロマグロの形態観察です。3日前に実験所前浜の定置網で揚がった約20sのクロマグロを材料に,いかに高速遊泳に適応した体であるかを鰭などの構造をまじまじと観察し学びました。その後は,言うまでもなく,旬のマグロ丼としてみんなでいただきました。 |
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クロマグロは泳ぐとき邪魔になる背鰭を
畳めるポケットがあるんだ |
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2日目は,砂地と藻場を地曳き網で曳き,それぞれの生息地に棲む魚類相を比較する実習です。シュノーケリングしながら網をセットして力を合わせて綱を引っ張ると海藻の屑とともにマツカワやカジカなどたくさんの種類の魚が捕れました。実験室に持ち帰り,本学環境科学院博士課程3年生の佐藤成祥君が講師として魚の査定や最後の実習である自由研究発表会までをリードし,無事実習を終了しました。 |
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シュノーケリング中に採集されためずらしい
アンコウ類の卵塊に関係者全員びっくり! |
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今年は2日間とも,海は穏やかでしたが,晴れることはなく,夏らしくありませんでした。しかし,テーマである北海道の魚たちの故郷であるアラスカ西海岸の夏を彷彿とさせる気候であり,テーマに沿ってよかったという実施者側からの前向きな感想も聞かれました。
毎度のことながら,野外で行うイベントを安全にやり遂げることは,労力もリスクも大きく大変な事業です。しかし,時間が過ぎるのを忘れて夢中になって楽しんでいる笑顔や真剣な眼差しで標本を調べる参加者の表情を見ていると,準備に奔走した実施者側も充実感で一杯になりました。最後になりましたが,ご協力下さった水産科学研究院および函館キャンパス事務のみなさん,どうもありがとうございました。 |
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ウエットスーツで記念撮影 |
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(北方生物圏フィールド科学センター) |