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「フィールド研究」の楽しさを満喫!北方生物圏フィールド科学センターで「野外シンポジウム2009」を開催

 北方生物圏フィールド科学センターでは,8月17日(月)から21日(金)までの4泊5日の日程で「野外シンポジウム2009〜森をしらべる〜」を開催しました。野外シンポジウムは,センターが所有する広大な森林や渓流を巡りながら,研究者たちによる野外研究の成果を聞き,その地で実際に行われている調査研究の一端を体験しながら,森の中で何がどこまで解明されたのか,そしてこれから何を明らかにする必要があるかについて考える場です。
 12回目となる今年の野外シンポジウムは苫小牧研究林の森を舞台に開催しました。シンポジウムにはモンゴルからの留学生を含む全国各地の国公私立大学から森林研究に興味を持つ学部学生26名が集まり,連日の雨天にもかかわらず早朝から夜遅くまで野外に出て,センターの教員や研究員,大学院生たちから森林研究の最新の成果や研究の進め方について真剣に学びました。プログラムの構成は,日中に実際の研究現場で行うフィールド調査体験と,夕食後の研究内容の詳しい解説や質疑応答を中心とした室内セッションの二本立てになっています。テーマ別に用意された14のセッションの他,早朝の森林散策など盛りだくさんの内容で,参加者は目を輝かせながら一生懸命に取り組みました。
 野外でのセッションでは,地上30mのクレーンに乗って空中から森林を観察したり,先がまったく見通せないササの海を泳ぐように分け入ったり,シカの全身骨格の組み立てや電気ショッカーを使った渓流魚の捕獲体験などめったに経験できないダイナミックな野外での調査活動を存分に楽しみました。夕食後のポスターセッションでは,時間を惜しむように活発な質疑応答が繰り広げられ,研究の楽しさや難しさのほか,研究者たちの経験に基づいた苦労話や試行錯誤の裏話などを聞く良い機会となり,毎日夜遅くまで楽しい交流の時間が続きました。
 全てのセッション終了後に行われた参加学生による模擬セッションでは,研究者になったつもりで研究テーマを考え,実験結果までを予想して発表しました。参加学生の中でふくらんだ「森林研究」への思いが伝わるユニークで楽しい発表会となりました。最終日の朝は「未来の地球へ」と題し,森林から切り出したいろんな樹木の輪切りを使って炭素換算量を印字した「環境通貨」を作り,地球環境の保全と森林の関わりについて考える記念として持ち帰りました。
 参加した学生たちは「寝る時間も惜しいほど楽しく過ごせた」,「研究者たちの熱意を感じて,とても刺激を受けた」,「どんな質問にも丁寧に答えてもらえて満足」,「北大の院生になってここで研究したい」など,様々な思いを抱いて今年の野外シンポジウムを終えました。
 本事業は(社)国土緑化推進機構「緑と水の森林基金」の助成を受けて実施しました。

 
シカのホネはいったい何を語っているのだろうか… 1本1本の木の情報から百年後の森の姿を予測する
シカのホネはいったい何を語っているのだろうか… 1本1本の木の情報から百年後の
森の姿を予測する
 

セッションのテーマとタイトル

1. ようこそ闇夜の森へ
*カメラはとらえた!! 夜の森の主役たち
2. 葉っぱが語る緑の森 *虫はどこの葉がお好き?
*葉っぱ元気か,しょげてるか?
3. 移りゆく森と植物
*足元の植物を見ると森の歴史がわかる
*森の将来って予測できるの?
4. 北の森に生きる
*♪人生いろいろ,男もいろいろ 〜サクラマス♂のふたつの生き方〜
*シジュウカラの婚活事情
5. 森のなぞをひもとく
*枝のない木は成長が速い? 〜樹木の形とその機能〜
*これは滅多に見られないかも 〜ササの開花と更新〜
6. 森林研究のフロンティア
*テラ・インコグニタ *骨は語る 〜ニホンジカの環境と地理変異〜
*食うために,食われぬために 〜エゾサンショウウオとエゾアカガエルの変身術〜
7. 北の森の語り部
*光で森を診る
*かちかち山の今むかし
 
雨の森での調査も貴重な体験でした 森の中の巨大なジャングルジムに登って樹冠の葉を真近に観察
雨の森での調査も貴重な体験でした 森の中の巨大なジャングルジムに登って
樹冠の葉を真近に観察
研究者になりきってポスター発表に挑戦人に伝えることの楽しさと難しさを実感 丸太を切って環境通貨作り これ1本の炭素量はいくらかな?
研究者になりきってポスター発表に挑戦
人に伝えることの楽しさと難しさを実感
丸太を切って環境通貨作り
これ1本の炭素量はいくらかな?
 
(北方生物圏フィールド科学センター)

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