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平成21年度国際大学交流セミナー「どうする,アジアの交通事故」 学生提案コンペ−日本の交通安全政策の経験とアジアの交通事故の 実態を学ぶ−開催

 工学研究科では,中辻隆教授が中心となり,8月1日(土)〜10月16日(金)まで平成21年度国際大学交流セミナーを開催しました。
  本交流セミナーは,独立行政法人日本学生支援機構の支援の下,道内の3大学(北海道大学,室蘭工業大学,北見工業大学)とタイ国の3大学(チュラロンコン大学,アジア工科大学,キンモンコン工科大学)の協力によって,急増するアジアの交通事故に対して,交通事故による死者数をピーク時の3分の1以下へと減少させた我が国の事例を参考に,タイ国内の交通安全対策をタイの学生が日本人学生と一緒に考えて政策提言をしてもらおうと企画されました。主に,1)事前講義とタイ学生による提言コンペプログラム(8月),2)日本人学生派遣プログラム(9月),3)タイ学生招請プログラム(10月),4)最終提案シンポジウム(10月)の4つの事業から構成されています。
  中国では過去10年で全国に3万数千kmの高速道路網を整備しました。また,タイでも全国何処へでも100km/hで行ける道路網をあっという間に整備しました。このようにアジアの国々ではハードウェアを整備する速度に対して安全教育などのソフトウェアの整備が追いつかず,またアジア独特の交通特性や交通マナーの問題もあって,交通事故による人的損害が深刻になっています。タイにおいてもわが国に比べ人口が半分,自動車台数が3分の1という状況にもかかわらず,年間の交通死者数は我が国の死者数がピークであった昭和40年代に匹敵する1万数千人が交通事故の犠牲になっています。

 
遅れる交通安全教育(ベトナム,タイ・ソンクラ大学Prof. Pichai 提供)
遅れる交通安全教育
(ベトナム,タイ・ソンクラ大学Prof. Pichai 提供)
 
 8月1日(土)の事前講義に続いて,8月29日(土)には,タイの3大学から全部で10チーム(20名)が提案コンペに参加し,各チーム20分〜30分を持ち時間としてタイ国における交通事故を減少させるための方策提言を行いました。コンペはインターネットで道内3大学とタイの大学を結び実施されました。厳正な審査の結果,6チーム12名が10月に日本に招請されることになりました。
 
インターネットを利用した提言コンペと質疑応答
インターネットを利用した提言コンペと
質疑応答
 
 9月にはタイ学生の招請に先立って,タイ学生の日本での研修をより効率的にするため,道内3大学から学生5名を派遣し,日本の交通安全対策を説明するとともに,タイの交通状況について学びました。派遣学生はバンコクに数日間滞在し,コンペで選抜された各チームとデータ収集や解析の協働作業を行いました。
  コンペで選抜された3大学・6チーム12名のタイ学生は,10月5日(月)〜16日(金)の日程で来日し,道内の交通安全に関わる北海道警察本部札幌運転免許試験場,民間自動車学校,寒地土木研究所などの機関や室蘭工業大学や北見工業大学を訪問し,我が国の交通安全政策の実態を学ぶとともに,道内3大学の学生との討議,あるいはドライビングシミュレータを用いた模擬体験を通して,肌で直接交通安全に関わるソフトウェア対策を実感する機会を持ちました。10月14日(水)には,北海道土木技術会との共催で交通安全に関わっている実務者を招いて,最終シンポジウムで発表を行いました。シンポジウムには100名近い参加者があり,またその様子はインターネットを介して道内やタイの大学にも中継され活発な質疑が行われました。
  最後に,事後のアンケート調査では,参加者(タイ学生,タイ教員,派遣日本学生)の95%が本セミナーに対して「大変満足した」と答えており成功裏に終了することができたと総括しております。協力戴いた関係者に感謝いたします。
 
国際シンポジウム「どうするタイの交通安全対策」
国際シンポジウム
「どうするタイの交通安全対策」
 
(工学研究科・工学部)

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