総合博物館がヨーロッパの2博物館と学術交流協定を締結
−ゼンケンベルグ自然史博物館,ストラスブール動物学博物館
総合博物館はこの度,ヨーロッパの2つの博物館と学術交流協定を結びました。提携先は,ドイツのフランクフルトにあるゼンケンベルグ自然史博物館,及びフランスのストラスブールにあるストラスブール動物学博物館です。
ゼンケンベルグ自然史博物館は,数カ所の支所と300人以上の研究員を擁し,ベルリン大学付属フンボルト自然史博物館に勝るとも劣らない,ドイツの誇る大型自然史博物館の1つです。教員総勢9名の当館とは2桁も違う規模にもかかわらず,学術交流協定が締結できたのは,過去15年以上にわたる北海道大学との研究協力の賜です。このことは,研究員わずか2名で主に市民向けの教育に特化しているストラスブール動物学博物館との関係にも,以下に記すように反映されています。
東京大学のお雇い外国人教師として明治12年 (1879)に来日したルートウィヒ・デーデルラインは,日本滞在中にナチュラリストとしての本領を発揮し,相模湾をはじめとして日本各地で動物標本の収集に明け暮れました。2年後に離日したデーデルラインはストラスブール(当時はドイツ領)の動物学博物館の館長に就任し,日本から持ち帰った動物標本をそこに納めました。このデーデルラインコレクションは,環境破壊が今ほどひどくない130年前の日本の自然をそっくり抜き取ったような貴重な研究材料です。それが第2次大戦の戦禍を免れて同博物館に大切に所蔵されていることをハンブルグ大学の友人から教えられた理学研究科教授馬渡駿介(現総合博物館長)は,1993年以来科研費等の外部資金を獲得して日本の動物分類学者10数名と共にこのコレクションを研究してきました。その折の研究協力者がゼンケンベルグ自然史博物館の研究者であり,研究場所はもちろんストラスブール動物学博物館だったわけです。
以上のような経緯の元,今回,馬渡館長はドイツとフランスへ出張し,11月18日(水)にゼンケンベルグ自然史博物館,11月20日(金)にはストラスブール動物学博物館で,それぞれ学術交流協定書にサインしてきました。片や研究,片や市民教育を指向する全くタイプの異なるヨーロッパの大小2つの博物館と研究交流協定を締結できたことは,総合博物館の今後に大きなプラスになると思います。総合博物館はこれから,デーデルラインコレクションの共同研究をはじめとして,様々な分野の研究者・学生の交流,あるいは貴重な標本の交換等々,2館との間で実質的な交流を深め,グローバルな視野に立った大学博物館として発展を図りたいと考えています。このことは北海道大学の発展に大きく寄与するに違いありません。
ゼンケンベルグ自然史博物館応接室で学術交流協定を取り交わす馬渡館長(右),ゼンケンベルグ自然史博物館館長Dr. Volker Mosbrugger(中),
同副館長Dr. Michael Tuerkay
ちなみにDr. Michael Tuerkayは鶴飼美蛙(ツルカイ ミカエル)と名刺に書くほどの日本通である。
ストラスブール動物学博物館館長室で
学術交流協定を取り交わす馬渡館長(右)と
ストラスブール動物学博物館館長
Mme.Marie−Dominique Wandhammer(左)
ゼンケンベルグ自然史博物館外観
ゼンケンベルグ自然史博物館内部の
恐竜展示室
ストラスブール動物学博物館外観
ストラスブール動物学博物館内部の
海産無脊椎動物展示室
(総合博物館)